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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 アロンミット武闘大会
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準決勝 vsシリウス

 翌日の準決勝の日、昨日の事でアラスカの事が心配したが、ごく普通にいつも通りに姿を見せ、普段通りに話しかけてきたりしていた。


「……アラスカ先生、ピアス綺麗」


 目ざとくベネトナシュが気がついて、アルと一緒になって詮索してきたが、アラスカが答える事はなかった。


「む? その指輪はどうしたのじゃ? 結構な値打ちものと見たが……ピアスといい急にどうしたのじゃ?」


 見ると昨日のオマケで付けてくれた指輪をアラスカがはめていた。


「私だって少しぐらい色気づいても良いではないですか?」

「ほむ! 一理ある!」


 俺は心臓バクバクもんだよ。


 そして俺にもおはようございますと挨拶をしてきた。


「あ、ああ、おはよう」

「今日デュエルするシリウスですが、現7つ星の騎士団1の剣の使い手にして、武装解除(ディザーム)の達人です。気をつけてくださいマスター」

「そうか、ありがとう」


 たどたどしくなりながら答えて辺りを見回すと、アルが何か言いたげに俺を見ていた。




 会場へ向かい時間になるまで控え室でフェンリルと待っていると、【魔法の神】となったエラウェラリエルが姿を見せた。


「サハラさん……昨日の事は本気なんですか?」

「昨日の事?」

「もう私も恋人じゃなくなってしまうんですか?」


 どうやら昨日の事を聞かれていた様だった。ウェラは神で今は会うに会えなくなっているが、アリエルと違って俺が神になれば、また以前の様に接する事が出来るかまでは分からないが会える様にはなる。しかし、ウェラからしてみれば今も会えなくても恋人と思っていてくれている様だった。


「……悪い。これからデュエルを控えているんだ」


 ウェラがグッと涙目になりながら消えていった。

 悪いとは思っている。だが、それ以上に今の俺には復讐しか頭になくなっていた。




 呼び出しがありデュエル場に向かう。既にシリウスが俺を待っていた。


「お待ちしていました。是非お手合わせをお願いいたします」


 俺は無言でデュエル場に登っていきながら、頭の中では先ほどのウェラとの事を考えていた。


 開始の合図が出されたが、俺の耳には届いていなかった。

 ヒュンッと剣が目前を抜ける。


「マスター様、既に始まっています。何があったかは存じませんが、次は本気で行かせてもらいます」


 ……デュエルは始まっていたのか。



「済まない」


 杖を構えてシリウスに謝った。


「では、心置きなく行かせていただきます!」


 そう言った瞬間に一気に間合いを詰めて斬りかかってくる。杖で攻撃を捌きながら反撃しようとするが、想像以上の攻撃で防戦一方となってしまう。


 コイツただ強いんじゃない……



 速度は衰える事なく続き、次第に追いつめられていく。俺は確かめるべく覚悟を決め、競り合いに持ち込みギリギリと杖が悲鳴をあげる中シリウスに問いかける。



「お前……暗殺者(アサシン)か」

「さすがですね、ですがご安心ください。7つ星の騎士団の教義は守っており、暗殺者(アサシン)としては生きてはおりません」

「そうか、それを聞いて安心したよ」


 そうは言ったが、暗殺者(アサシン)になる条件は確か……


 一度距離を取り、仕切りなおそうとした瞬間にシリウスがユラッとぶれた様な動きを見せてくる。

 それは高速移動であり、僅かなクラスだけが習得する技術の様なものだ。


「これを避けますか! さすがはマスター様といったところですな! ですが……」


 シリウスが俺の武器、杖を狙って攻撃を仕掛け武装解除(ディザーム)を狙ってきた。



「その様な木の棒切れでは……そろそろ持ちますまい」


 その言葉通り俺が持つ杖が悲鳴をあげはじめ、捌ききれず攻撃を受けてしまった杖は遂には折れてしまった。


 ……ちくしょう、コイツは特注品なんだぞ!



「武器を失ってはもう戦えないでしょう。降参なさってくださいませ」

「っは! 笑わせるな」


 修道士(モンク)特有の呼吸法をして気を全身に送りこみ、高速移動でステップを踏み蹴りを繰り出すが、ギリギリのところで躱してきた。



「なっ! 武器も持たずに戦うというのですか!!」

「武器無し相手では戦えないか?」


 この世界では修道士(モンク)が存在しないのと同様に格闘術などというものがない。せいぜい牽制で蹴りを入れたり、鍔迫り合いで顔面を殴るといった程度なら行うし、バグナグやリストブレードのような武器無しに近いものはあるが、完全な武器無しはありえなかった。



 観客達からは俺とシリウスの動きはほぼ捉えられないだろう速度で攻防が行われる。

 さすがに剣では拳や蹴りの速度には追いつけず、今度は次第にシリウスが追い詰められていき、遂には俺の拳がシリウスの胸部を捉えた。もちろん殺すつもりでも昏倒させるつもりもないため掌底打ちだ。


 ぐはぁぁぁと血反吐を吐いてシリウスが武器を手放して胸を押さえながら膝をついた。



 何が起こったのか観客達が分かったのは、俺が掌底を突き出し立っていて、シリウスが地に膝をついている時だった。


「ま、まいり、ました……」

「しょ……勝負あり! 勝者サハラ!」


 少しの間静まり返っていたが、すぐに大歓声が上がる。




「大丈夫かシリウス」


 手を差し伸べて立たせ、ドルイドの治療魔法で治癒を施した。


「あ、ありがとうございます……マスター様」

「……お前、女だったんだな」


 胸部を掌底打ちした時に女性特有の柔らかい感触が手を伝ってきていた。



「……どうか、内密にしてくださいませ」


 そう言ってウインクをしてきた。

 まさか男装の麗人とは思わず、また知らなかったとはいえ胸部を強打してしまった事に謝罪をする。



「お優しいのですね、アラスカが惚れたのも頷ける」


 アラスカの場合違うとは思ったが、面倒なため笑って誤魔化しておいた。



「歩けるか?」

「無理と言ったらどうして頂けるのですか?」

「肩を貸してやる」

「……それでは、お言葉に甘えさせて貰います」



 肩を貸しながらデュエル場を降りると、会場から盛大な拍手が送られそのまま退場した。



 2人きりになったところでシリウスに1つ確認する。


暗殺者(アサシン)の技術を教えてもらう条件は親しいものの殺人と聞いたことがある、どうしたんだ?」

「……両親です」

「そうか……それは嫌な事を聞いたな」

「いえ……」


 おそらく成長した時に罪の意識に苛まれでもしたのだろう。7つ星の騎士団の教義を守っているという事はーー


「罪滅ぼしのつもりで7つ星の騎士団に入った、というところか?」

「はい……」


 そうかとだけ返事をしてそれ以上聞くのはやめておいた。



 控え室に戻るとアラスカが来て、俺とシリウスが一緒にいることに驚き、そしてシリウスに突っ掛かり出す。


「なぜシリウス卿がマスターとご一緒なのですか!」

「私がマスター様と一緒にいてはダメな理由でもあるのか?」


 グッと歯を食いしばりアラスカがいいえと答える。上下の身分もあるのかもしれないが、昨晩の事もあるのかもしれない。



「マスターは……シリウス卿のような方がお好みでしたか?」

「は?」

「私はわかっています。シリウス卿は女ではありませんか!」

「気づいていたのか?」

「直感で……」

「さすがエルフの血が流れているってところだな。だが、肩を貸していただけだぞ」


 直後シリウスが俺に口づけてきて、そしてゆっくりと口を離す。アラスカは驚いて目を見開いている。

 もちろん俺も驚いて何か言い返そうと思ったがそれよりも先に尋ねられた。


「私はマスター様のお好みではありませんか?

私はあなたのような方と出会うのをずっと探し求めてきました」


 そう言ってしなだれかかってくる。

 焦るのは俺だ。つい先ほどまで男だとばかり思っていた相手とデュエルをし、肩を貸したかと思えば今度は俺に口づけて好みじゃないかと言い寄られたのだから、正直好き嫌いの前に気持ちが悪い。

 ただ、シリウスが求めているのはおそらく俺ではなく、贖罪出来そうな事をしている相手なんだろうと思う。もしそう言った意味であれば、俺と一緒にいたいというのは間違いではなくなるだろう。



「マスター様とは既に恋仲でしたか?」

「マスターとはそういう関係じゃありません!」



 ホォ? と顔をさせるとシリウスが俺に向き直って「なら私が頂こう」と呟いた。


 俺は物か! じゃない。ハッキリここは言っておくべきだろう。


「俺はお前の恋人になるつもりはない」

「はい、それで構いません。私がマスター様を独占できるとは思っていませんし、むしろその方がこちらとしても都合がいいので」



 シリウスの言う都合がいいという意味はわからなかった。


 突き放すようにシリウスを退けて、呆気に取られたままのアラスカを呼びつけて、なんとかしておいてくれとだけ言って控え室を逃げるように出て行った。




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