アラスカとピアス
アラスカを連れてとりあえず町まで向かおうとしたが、その前にアラスカが立ち止まって聞いてきた。
「マスター私に何か用ですか?」
「お前があるんじゃないのか?」
アッと思い出したように口を手で塞いで照れ出す。
やはりあんな事やこんな事をして欲しいとか言い出してくるのだろうか? もちろんそうであれば断るしかない。
「そ、そそ、それでは……
わ、私と手を繋いで町を一緒に歩いてください!」
もっとすごい事を要求されるんじゃないかと思っていた俺は安心から大きくため息をついたのだが、アラスカにはそれが呆れかえられたとかいった風に取ったようだ。
「そ、そうですよね。いえ、今のは忘れてくだ……え? わぁ!!」
手を強引に繋いで引っ張るようにして歩き出した。
「ほらアラスカ、早くしないと時間がなくなっちゃうぞ?」
「え、あ……はい!」
嬉しそうに手を繋いで歩くアラスカを見て、違和感を感じた俺は手を離させ腕を組まさせると、アラスカがえ? ちょっと……と慌てている。
「手を繋いでいる方が良かったか?」
「い、いい、いえ! ですがこれではまるで……恋人のようで……その……」
「嫌なら別に手でいいが……いい歳して手を繋いで歩くってのもな?」
そう言うとアラスカが無言で無い胸を押し付けるようにしてきた為、チョットだけ役得な気分でデートを楽しむように、町をアラスカと普段しないような会話をしながらぶらつき、色々なお店を覗いてみたりして久しぶりに楽しんだ気がする。
ただそれと同時にふとアリエルを思い出してしまう事にもなる……
そう簡単に吹っ切れるもんじゃないよな。
「アラスカはこう言うのは付けないのか?」
アクセサリーを取り扱っている店を見つけ、中に入ってピアスを見ながら聞いてみると、どういうのが自分に似合うのかわからないそうだ。
アラスカはハーフとはいえエルフで肌が白く、また派手な物は嫌がるだろうとど定番だが、パールのピアスを1セット、プレゼントしようと購入する。
「マ、マスター! そ、それ金貨10枚(100万円)もしますよ!」
「ああいいよ、俺からのプレゼントだ」
「兄ちゃん気前いいねぇ。コイツは質、色、サイズどれを取っても一級品でな、仕入れ値も張ったんだ。これでも値引きしているんだが今まで全然売れなかったんだよ。
サービスでコイツもつけちゃるぜ!」
なんか知らんが、指輪が付いてきてピアスと一緒に包まれて手渡される。手渡す時俺の耳元で小さく呟く。
「コイツで一発がんばってくださいよ!」
何言ってんだコイツはと思いながら店を出たところで問題発生する。なんとアラスカがピアスの穴の開け方を知らないと言い出し、俺がつけているから、つけ方は知っているものだとばかり思っていたようだ。
「俺もつけてもらったから分からないぞ!」
「マスターがつけてもらった時と同じやり方で構わないのでお願いします!」
……あれを俺にやれと言うのか。
しかしせっかくプレゼントして付けてもらえないのも寂しいものがある。ちゃんと説明してここは一発一気に突き通して治療魔法をかければ何とかなるだろう。
「……分かった、とりあえずアラスカの寝泊まりしている宿に行こう」
「はい! よろしくお願い致します!」
これで本当に良かったのだろうか……
アラスカが寝泊まりしている宿屋に辿り着き部屋に入る。高級な宿屋では無い為部屋にあるものはベッドと簡易的な机と椅子程度しか無く狭かった。
俺に椅子を進めると、決めてあるらしい場所に剣を置くと俺に向き直って嬉しそうな顔を向けてくる。
「それではよろしくお願いしますマスター」
「ん、あぁ、それじゃあベッドに横になってもらえるか?」
「はい!」
ボフッとベッドに飛び込むように横になる。信用されているのは分かるがこうも素直に応じられると、これからやろうとしている事に罪の意識を感じてしまう。
「マスター! 覚悟は出来ています。さぁどうぞよろしくお願い致します!」
髪をかきあげて耳を露わにしてくる。人間より僅かに尖った耳の先端は見間違う事無くエルフのものだ。
「んー、じゃあ付けるけど、これは俺がヴァリュームの妖竜宿のシャリーさんに付けて貰ったやり方だと先に言っておくからな。それで、その付け方だが……」
何か恐ろしい事でも想像したのかゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえ、ピアスが包まれた布の紐を解きながら続きを話そうとすると、中にはピアスと指輪の他にとんでもないものが一緒に入っていて動きが止まってしまう。
こ、こいつは……
「どうかしましたかマスター?」
俺が話すのをやめ固まっていた為、アラスカが体を起こし覗き込んできて、包みの中にある瓶に目が止まる。
超強力精力剤『絶倫X』
以前一度だけアリエルと致す時にアリエルが面白半分で購入して試した為その効果は体験済みで、アリエルの意識がぶっ飛ぼうが治る事は無く、それしか考えられなくなり狂った様にまるで犯す様に、俺の意識がぶっ飛ぶまで猿の様に続けた記憶がある。
ちなみに修道士は毒などの類は無力化出来るが、受け入れれば無効化する事はない。
「マ、マスター……」
「ち、違う! 違うぞアラスカ! これはあの店の店主が勝手にだな……」
ちょっと待てー!!
アラスカは小瓶を見て俺を蔑むのでは無く、法悦の笑みを浮かべていた。
「マスター……」
「待て、待て待て待てー!!」
アラスカが俺にしなだれかかってきた。
試合後でもあってアラスカの体からは汗の匂いがするが、嫌な匂いではなくむしろ俺の自制心を奪い去ろうとしてくる。
ない胸を押し当ててきて、下から覗きあげる様に見てくる顔は異常なほど色っぽい。
……だけど、
「アラスカ……済まない、気持ちはすごく嬉しいがまだ吹っ切れていないんだ……」
そう言うとハッとなってアラスカが離れて謝ってくる。
「マスターの気持ちも考えずに済みませんでした!」
アラスカが自分の行いに恥じ入ったのか、スッカリ落ち込んだ様子を見せ、恥をかかせた俺は今のアラスカに対する気持ちだけは伝えることにした。
「アラスカ……本音で言えば俺のものにしたいと思うぐらい魅力的だよ。だけどそれよりも今の俺には復讐しかないんだ。だからゴメン」
シーンとなった部屋で重い空気が流れる。そんな空気を変える為にアラスカが気を利かせてくれたのだが……
「そ、そうでした! ピアス! ピアスをつけて頂く約束でした! 既に覚悟は出来ています!」
この空気でアレをやるのかよ……
「じゃ、じゃあやるぞ。まずはピアスする場所をふやかすところからだ」
「はい! ……え? ふやかすのですか? どの様にして……ひゃあぁ!!」
勢いに任せて俺はアラスカの耳たぶにむしゃぶりつく……じゃなくて口に咥えて舐めていく。
「あ、あぁぁぁ……マスター、な、何を……」
アラスカの口から次第に色っぽい声に変わっていく。
「ふっ、んんん……マ、マスター……ふぁっ! くぅぅ……」
このやり方は本当に正しいのか? シャリーがふざけてやっただけだったんじゃないだろうかなどと思うが今更後にも引けず、十分ふやけただろうと思うタイミングになって声をかける。
「そろそろ行くぞ」
「あ……は、はい……初めてなので、その、優しくしてください」
それ、なんか違う意味で取りそうだからやめてくれ。
位置を確認して俺自身の時の様に一気に突き刺した。
「あ、あああ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ピアスを貫通させると同時にアラスカの身体がピーンとなった後、全身の力が抜けた様にグッタリしている。
「大丈夫か? もう一つは別の日にでもーー」
「や、やめないで……続けてください、マスター……」
ううむ……とんでもなくエロいことしている気がするのだが……
仕方がなく反対もピアスをつけようと思うが、ベッドは壁にくっつけられている為、アラスカの向きを変えて貰うか、俺が一緒にベッドに横になって耳たぶをふやかすしか無さそうだった。
「アラスカ、向き変えられるか?」
「す……すいません、全身の力が……抜けちゃって……動けそうに……ないです」
どんな神イベントだと思いながらも、仕方がなくベッドに登りアラスカの反対側へ横になって耳たぶを先ほどの様に咥えて舐めた。
「ふぁっ! くぅぅ……マスター!」
そしてまたアラスカが悶え始め、俺はなんだか非常にモヤモヤ気分で続けたが、ふと感覚を鈍らせればいいのであれば、フェンリルに舐めさせれば冷たさで痛覚が鈍るのではないかと思い、口を一度離してアラスカに聞いてみた。
「……マスターにして貰いたいです……」
……さいですか。
再度アラスカの耳たぶを舐めて十分ふやかした後、ピアスを左右のバランスを見ながら一気に突き刺す。
「アラスカ終わったぞ」
ピアスを左右につけ終わったアラスカが俺をジッと見てくる。
「痛かったか?」
「……いえ、その、マスターのアレが私の身体に当たっていて……」
おおう! ナンテコッタ。 アラスカの色っぽい声でいつの間にか反応していて、しかも押し付けていた様だった。
「済まん! コイツは俺の意思と関係なくだな……」
「そ、そういうものなんですか……」
「いや、アラスカの声が色っぽくてだな……」
「私で感じていただけたのですか?」
「普通にアラスカは美人だよ。俺を慕ってくれてエルフで文句の付け所がないと思う」
「……マスター……マスターの復讐が済んだら……私にチャンスはありませんか?」
これは……告白という奴か?
アリエルを失ってから俺は、フェンリルと各地を飛び回って悪魔を倒している間に一つだけ、戒めとして決め事を作っていた。
ベッドから立ち上がり、ピアスを付けたアラスカを見つめる。ピアス1つ付けただけで前より一層綺麗に見えた。
「俺は、2度も恋人を失う目にあった。だからもう2度と恋人は作らないと決めたんだ。
だから、アラスカ……ゴメン」
そう言って俺は返事を待ったりせずにアラスカの前から立ち去った。




