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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 アロンミット武闘大会
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ヴォーグの依頼

 会場から人が去っていき、敗れたウラノスも去り、パーラメントも俺達に一礼すると会場を後にした。

 俺とアラスカ、キース、シリウスだけになるとキースとシリウスが片膝をついて首を垂れてきた。


「やめてくれ、俺はそういうのは嫌いなんだ。それにシリウスは明日俺と試合だろう」

「それはそれ、これはこれです」

「マスター様にお会いできて光栄です」

「いや、本当にそういうのはやめてくれないか」


 この時ばかりはセッターを恨んだ。アラスカが間に入ってくれてなんとかその場をしのいだが、俺の存在は7つ星の騎士団においては絶大な存在のようだった。

 そしてこのシリウスという男もまた俺をマスターと呼ぶからには……



 俺も会場を後にするとアラスカも一緒についてきた。


「さっきは助かったよアラスカ」

「いえ、私はただ早く願いを聞いていただこうと思っただけです」

「願い? なんだそれ?」


 そういった瞬間アラスカがガックリと首を垂れてしまい、「私のしたい事に付き合うと言ったではないですか」といじけてしまった。

 そこでウラノスとシリウスのデュエルの時に言ったことをうっすらと思い出した。



「あ、ああ、思い出した、思い出した。言った、言ったよ。それでアラスカは何がしたいんだ?」


 今度はアラスカが顔を真っ赤にさせながら俯いて黙り込んでしまう。一体何を俺にさせる気なのかと不安がよぎる。


「そ、それでは……」


 ゴクリと唾を飲み込み覚悟を決めて聞く。


「私とーー」

「サハラ様!」

「サハラまだこんなとこにおったのか」

「……ヴォーグ様が……呼んでる」


 アルとボルゾイ、ベネトナシュがタイミング良いのか悪いのか姿を見せ近寄ってきた。

 アラスカはと言うと言おうとした言葉を飲み込み、いつものように振舞おうとしていたが、顔は残念そうにしている。


「アラスカ、後で必ず聞くよ」


 アル達が近くまでくる前にそっと言うとパァッと笑顔を見せた。



 公爵の館に戻り賓客用のヴォーグの部屋に入り要件を聞きに行く。


「おう、来たな」

「なんか用か?」

「武闘大会終わったら頼みたいことがある」

「それは国王直々に俺ら冒険者にという事か?」


 ヴォーグは俺の他にボルゾイ、アラスカ、アル、ベネトナシュの4人がいる前で言ってきた事から、俺個人的にではないだろうと思いそう聞いてみた。


「俺なりに考えたんだが、サハラの言った薬師を何が何でも王宮に迅速に連れてきてもらいたい」



 つまりヴォーグはこの先に起こることの対応策に麻薬の治療こそが、アルの言っていた分岐にも繋がるのではないかと考えたようで、仮に違ったとしても治療方法は必要だと思ったんだそうだ。


「意外にマトモなんだな?」

「一応国王だからな民の心配はしなくてはいけないだろ?」


 元よりいつか存在を嗅ぎつけられて、悪魔に狙われるんじゃないかと気になっていた事だった事もあり、俺は快く引き受けることにした。


「陛下、よろしいでしょうか」


 ヴォーグが頷くとボルゾイがいくつか尋ねる。

 仮に薬師に断られた場合はどうするとか、了承した場合の移動手段、特に荷物なんかを気にしているようだ。


「そこはサハラに任せるつもりだが?」

「はぁ!? 丸投げかよ!」

「仮に了承したとして、王国には転移(テレポート)は使える者がいても、魔導門(ゲート)が使える者がいないからな。

兵なんか送り込んで、重要人物だと知れないほうが良いと考えると……

冒険者の判断に任せるのが一番だろうと考えた」


 俺達を指差しながらそう言った。

 ボルゾイが少し考えてから頷き、分かり申したと返事をした。


「いいのかボルゾイ」

「陛下の考え方は納得できるし正しいと儂は思うぞ」


 平和になったとはいえヴァリュームから王都に行くまでの道のりが不安だったが、そこさえクリアすればポットの安全面が保証されるのは助かる。

 そして何より歴史が変わる可能性を失うわけにはいかない。




 ヴォーグの依頼を引き受けた俺達は侍女長用の部屋に行くと早速相談に入った。


 出てきたアイデアはアラスカの言う、騎士団が利用している移動手段なのだが、それはそれで使用許可を得る為、7つ星の騎士団領まで一度足を運ぶ必要があり、アラスカと俺以外のアルとボルゾイとベネトナシュは許可が出ていないから使えない。かと言って別行動はエラウェラリエルの時を思い出され出来ればしたくなかった。



 もう一つはアルの使う時空魔法でワームホールを開く事だが、こちらも出来ればあまり多くの人に知られないほうがよさそうに思う。それに直線に繋ぐだけのため、結局かなり歩く事に変わりはなかった。こちらは皆んなには口に出さず、一つの手段として考えておく事にしておいた。



「何にせよ、このアロンミット武闘大会が終わってからじゃな」

「……サハラさん」


 フェンリルと戯れていたベネトナシュがその手を止めて俺に声をかけてきた。


「うん? フェンリルが何か悪さでもしたのか?」

“おい、それはどういう意味だ”

「フェンリル……サハラさんと遊ぶの……後でいい?」

“遊んでるんじゃなーーい!”

「それでどうしたんだ?」

“無視するなー!”

「……学長なら魔導門……使える」


 スッカリ忘れていた。そうだ、キャスなら信用できるし問題無さそうだ。


「そうか、キャスがいたか」

「……キャス?」

「ああ、ごめん。今キャビン魔道学院の学長をやっているの、キャスなんだよ」


 ベネトナシュが声をあげて驚く。ボルゾイもレジスタンス時に会っているためか、オオオオと声をあげた。


 キャビン魔道学院までならここからそう遠くは無いし、アラスカに頼んで連れてこさせる事も可能だ。


「何にせよ、この武闘大会が終わってから決めよう」


 全員が頷いた。



「それとアラスカ、ちょっとついてきてくれるか?」

「はい?」



 俺はアラスカを連れて公爵の館を出ていった。




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