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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 アロンミット武闘大会
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反則行為

 俺のデュエルの番が近づき控え室に入って待っていると、出番になってデュエル場に出た。

 対戦相手は既に来ていて待っていて、妙にニヤついている。そこでその男が登録をしに行った時に絡んできた相手だと気がついた。


「1回戦勝ち抜いたのは驚いたが、まぁ偶然だろ。楽勝な相手でよかったぜ!」


 審判が無駄な挑発はやめる様に言うと舌打ちをして俺と向かい合い、ニヤニヤとしている。


 開始の合図が出されーー


「ま、参った……」



 呆気なく勝敗は決した。

 決して弱かったわけではないが、剣の腕前的にはマスター級程度だったのだろう。

 立ち去ろうとした時、会場から声が上がり振り返ると男が俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。


「ドルイド風情がぁぁぁぁぁぁぁあ!」



 感知(センス)予測(プレディクション)を使ってなく、デュエルが終わって気を抜いていた俺は、その一撃をもろに受けてしまい倒れこんで一瞬意識がぶっ飛んだ。




 目が醒めると俺はベッドのような場所に横になっているようだ。そしてベネトナシュが心配そうに覗き込んでいる。


「……目……醒めた」

「おう、生きてたか」


 普段通り返事をしようとしたが、治療室には俺とヴォーグの関係を知らない者の姿も見えた為、「はい」と返事をしておく。

 

「お前の対戦相手の男は捕らえられた。後ほど死刑か、運が良くても奴隷落ちだな」

「一体何があったんですか?」

「俺は審査員として報告しに来ただけだ。後の事は仲間にでも聞くといいだろう」



 それだけを告げるとヴォーグは去っていった。そして改めて治療室を見回すとベネトナシュとアラスカ、アル、ボルゾイが心配そうに見つめていた。


「どうなったんだ?」

「お前さんの頭が割れたんじゃ」

「はぁ!?」

「……血がたくさん……吹き出してた」

「俺、よく生きてたな」


『感謝しなさい、ん?』


 脳裏にそんな言葉が聞こえてきた気がした。なるほど、レイチェルが助けてくれたのか。




 その日はもうデュエルも終わっていたため、公爵の屋敷へ戻り改めてボルゾイを皆んなに紹介する。

 マルスとセッターを知る人物という事で、ヴォーグとアラスカがボルゾイと早速親しげに話していた。俺の大怪我を目の当たりにしたアルは、怪我も治ったというのにしきりに世話をしたがってきた。


「アル本当にもう大丈夫、何ともないから」

「いいえ! サハラ様はわっちにとって、えらい大事な方でありんすぇ。是非看病させてくんなまし!」


 そんなやり取りを聞いたアラスカが、ボルゾイとの話をやめて俺の方に近寄り、無言のまま看病し始めた。


「アラスカお前まで急に何だよ」

「私のマスターなのですから、看病は当然だと思ったまでです」


 ボルゾイがそれを見て、お前さんは本当に昔からモテるのぉとか言い出し、ヴォーグと一緒になって豪快に笑う。

 そんな中ベネトナシュだけはフェンリルを馬鹿でかいぬいぐるみのように抱きしめてモフモフして楽しんでいる。



 俺はそうだと言わんばかりに改めてボルゾイにレグルスの事を話、大会が終わった後は時が来るまでの間ベネトナシュを連れて冒険者をやり、教えられそうならドルイドを教えたい事を話した。


「そうなると儂とサハラとベネトナシュ、アラスカとアルジャントリーも一緒かの?」

「私は騎士団の指示を仰がなければならないので無理かもしれません」


 そういって残念な顔を見せるが、それは嘘だろう。おそらく自分の憤怒(レイジ)で迷惑を掛けかねないとでも思っているんじゃないかと思う。


 時刻も遅くなり、その日は解散となる。

 ボルゾイとアラスカは宿屋を取ってある為出て行こうとする。


「アラスカ、ちょっといいか?」

「何でしょうマスター」

「いいからちょっとこれから付き合え」

「え! え? えぇぇぇ!?」

「勘違いすんな、そういうんじゃない」

「……はい」


 おい、そこで残念そうな顔をするなよ。


 アラスカが寝泊まりする宿屋まで向かいながら、本気で俺について来ないのかを聞いてみると、案の定憤怒(レイジ)の事を気にしていたようだ。


「だったら尚更俺達と一緒に来て、セッターを超えてみろ。騎士団に篭ったところで誤魔化しているだけで治りはしないぞ」

「怖いのです……仲間を、マスターを傷つけたりしないかと思うとーー痛いっ!」

「馬鹿か? お前が憤怒(レイジ)した所で、俺とアルとボルゾイ3人相手に、傷つけたりとかって頭お花畑にもほどがあるぞ?

本当は一緒に来たいんだろ?」

「……はい」

「なら気にしないで一緒に来い。迷惑かけれるならかけてみろ」


 そう言うと急にアラスカが立ち止まり俺を見つめてくる。


「マスターは優しすぎます……

その優しさが時に人を傷つける事があるという事も覚えておいて欲しいです」


 そう言うと頭を下げてアラスカは走り去って行ってしまった。




 公爵の屋敷へ戻り、アラスカに言われた事をベネトナシュとアルに尋ねてみる。


「……うん、サハラさん、優しいから……たまに勘違いしそうに……なる」

「サハラ様は優しいでありんすぇ。本日この時までどなたかを突き放したり見捨てたりした事がありんすかぇ?

無いでありんすぇ。わっちの時だってわっちのミスでありんしたのにサハラ様が庇って死んだのでありんすから」



 今の今まで元の世界ではごく普通で当たり前程度のことだと思っていた。だからと言って今更この性分は変われと言って変われるもんじゃ無い。


「そうなのか……」

“そうだぞ、このお人好しが”


 俺は今までを振り返っていただけだったが、落ち込んだと誤解されたのか逆に2人から優しい言葉をかけられた。


「サハラさんは……今のままで、今のままの方が……いい、よ?」

「わっちも今のサハラ様のまんまが好きです」


 ありがとう、と言って笑顔で返し、明日のデュエルに備えて寝ようとソファに横になった。



「あのサハラ様、一緒に寝てはダメでありんしょうかぇ?」

「明日も試合があるんだ。寝させろ」

「サハラ様が優しく無いでありんす……」


 こっちはソファで狭いんだ。大人しくベッドで寝てろ。



 そしてアルは今晩もまたベネトナシュの寝相にノックダウンさせられるのであった。




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