表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 アロンミット武闘大会
87/212

初の依頼と冒険者

 翌日、ベネトナシュを連れてトーナメントの張り出された場所へ見にいくが、対戦相手は番号で表示されている為どこのどいつかさっぱりわからない状態だった。


「対戦相手の情報が顔をあわせるまで分からないとなると不安になるもんだな」

「サハラさんでも不安になる……の?」

「そりゃあね、魔物と戦う時だってその魔物の情報の有る無しで戦況は大きく変わるもんだよ」

「……なるほど、勉強に……なる」



 俺は自分の順番を確認だけしてその場を離れた。



 今日はそれだけでやる事もなくなり、ベネトナシュを連れて街を彷徨いている。


「あの……」


 ベネトナシュが簡単なものでいいから、冒険者ギルドで仕事を請け負ってみたいと言い出した。

 今日1日で終われるようなものがあるかわからなかったが、冒険者登録をしてまだ一度も依頼を受けていないベネトナシュに、経験させておくのもいいだろうと、冒険者ギルドに向かう事にした。



「依頼はこの掲示板に張り出されているから、興味があるものを探してみるといいよ」

「……うん」



 ベネトナシュが掲示板とにらめっこをしている間に、俺も流すように依頼を見ていくと気になる依頼を1枚見つける。



[調査依頼]

 赤帝竜らしき姿を目撃したとの報告があった。真偽を確かめる為に調査を求む



 これがもし本当なら普通誰も引き受けないだろうな。だけどおそらくこれは嘘だ。と言うのももし本当であれば赤帝竜(ルースミア)は人目につくようなことはしないはずだからだ。


 そんな事を考えながら見ているとベネトナシュが俺のローブを引っ張ってきた。



「……これ」



[討伐依頼]

 臨時に設置された野営地を狙って現れるカラスの討伐



 依頼を見てベネトナシュにカラスがどんなものかわかっているか聞いてみると、黒い鳥とだけしか知らないという。

 カラスは人の顔を認識したり、道具を利用する程賢い。敵意というか害意のある者の顔を覚え、仲間と集団で襲う事もあると言われる。そして九官鳥のように人の言葉を話すようにもなるらしい。

 つまり何が言いたいのかというと、カラスを殺して顔を覚えられでもすると、集団で仕返しされるという事だ。その為カラス討伐は冒険者達からも敬遠される。


 そう説明するとベネトナシュが素直に諦めて他の依頼を探し始めようとした。


「少し待っててくれるか?」

「……うん」


 受付にカラスの討伐依頼票を持って行き、追い払えれば良いのかを尋ねる。何も殺さなくても良いのであれば、俺から見ればこの依頼はぼろ儲けとなる。

 受付の女性がギルドマスター辺りに聞きに行ったであろう後に、追い払うのでもかまわないという事だ。ただし条件として最低1日以上近寄ってこないのが確認されてからではないと報酬は出さないと条件が出された。


 ベネトナシュを呼びこの依頼を受ける事にし、あえてベネトナシュに依頼を受けさせることにする。



「……これ、受けます」

「それでは冒険者証の提示をお願いします」


 初めて受けるギルドの仕事に緊張しながらも説明を受け、引き受けてきたようだ。


「よっし、じゃあサックリ終わらせてくるか!」


 コクコク頷いてくる。



 ウィンストン公国首都を出ると大量のテントが野営地に建てられていて、沢山の宿屋が取れなかった人達で溢れかえっていた。

 そしてあちこちに残飯を狙ったりしているカラス達が数多くいる。



「こりゃまた凄いカラスの数だな」

「魔法の矢よ……んぐぅっ!」

「こらこらこらー! こんなに人がいる中で魔法をぶっ放す気か!」

“ウシャシャシャシャ”

「お前も笑ってる場合かっ!」



 一度ベネトナシュに落ち着いてもらった後、資料室で話した事を思い出させる。


「ベネトナシュはカラスの事を黒い鳥とだけしか知らない。いいな?」

「……うん」

「もしカラスが怒ると火を吐いたり、爆発でもしたらどうする?」

「あの鳥はそんなに……強いの?」

「違う違う、もしの話だ。いいか、これは絶対に覚えておくんだ。

敵を知り己を知る、そうすれば百戦百勝だ」

「……敵を知り己を知る……うん、覚えておく」

「じゃあ今の状況を考えてみろ」

「……カラスは、強いの?」

「わからないんだろ? じゃあベネトナシュはカラスを倒せるだけの術があるか?」

魔法矢(マジックアロー)2回分と……」

「言わんでいい。仲間とはいえ中には裏切る奴もいるかも知れない。だから手の内は絶対に言っちゃだめだ、それこそ敵に己の事を教えているようなものだからな」

「うん……」


 ベネトナシュは俺の訓告にしっかりと耳を傾けながら、うんうん頷いている。


「よし、それじゃあどうしたらいい?」

「ギルドに戻って……依頼のキャンセル……?」


 まぁ間違っちゃいないが、それじゃあずっと何も出来ない子になってしまう。そこで今は俺とフェンリルという仲間がいるのだから、カラスについて知らないか尋ねてみて、そこからどうしたらいいかを考えていく事を教える。


「サハラさんと……」

「固い固い、余裕がない事もあるから名前なんかいいから、そういう時はこう言うんだ。

何か作戦はないか?ってな」

「……うん。

……カラスを倒す方法知らない?」



 まだまだ固いが、初めてだし仕方がないだろう。

 今回のこの依頼は元々俺だからこそ楽勝なのだから引き受けてくるように言ったのだ。


「俺はドルイドだ。自然生物とは絆で結ばれているからこそ、この依頼を引き受けたんだ。俺に任せて見ていてくれ」



 そう言って1番近くにいた1羽のカラスに、今すぐに仲間達とこの場所をはなれ、他所に行くように命じる。

 するとカラスがカァと鳴いてから空へ舞い上がり、カァカァと鳴きながら飛び去っていった。そしてそれに習うように他のカラスたちも一斉に空へ舞い上がり飛び去っていった。



「任務完了だな。後は明日以降に報酬をもらいに行けばいい」


 驚きながら見つめてくるベネトナシュに、戻るぞと声をかけて歩き出し、ベネトナシュもフェンリルと後からついてくる。

 公爵の屋敷の方まで戻る頃には陽も落ちてきた為、適当な店に入って食事を済ますことにした。



「……サハラさん、私……やっぱりドルイドになりたい……」

「ベネトナシュは動物好きみたいだしな?」

「……うん」


 教えてあげたいがどうすればいいかわからない。スネイヴィルスに聞けば良いのだろうが、今は神と関わりを持ちたくなかった俺は申し訳ない気持ちになる。


「……でも今は、冒険者の事を……いろいろ教えて」


 俺の表情を見て気を利かせくれたのか、ベネトナシュがそう言って笑顔を見せてくる。思わず照れる顔を背けわかったと返事をした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ