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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 アロンミット武闘大会
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ベネトナシュ

 ただ断るのも悪いと思い、俺はこの闘技大会に参加するからとベネトナシュに言ってやんわりと断ってみる。


「なら、……終わるまで待ってる」


 まぁ予想通りの返事が返ってきた。仕方がなく俺はこの大会が終わったらレグルスを探し出して復讐することを伝えた。大抵の人であれば復讐になんかつき合おうなどという物好きはそうそういないはずだ。

 だが俺の予想に反してベネトナシュはそれでも構わないと言ってくる。


「私達特Aクラスみんなに取っても、……彼は仇」



 嬉しいが相手が相手で、駆け出しの冒険者のベネトナシュにとっては危険極まりない。あと3年はのんびりと言っても、レグルスの背後には悪魔がいて、いつ牙を向けてくるかもしれない。

 すぐにいい答えが出そうになかったため、大会が終わるまで考えさせてもらいたいと伝え、立ち上がろうとしたがふと気になることがあって座り直す。



「そう言えば冒険者になりたてだって言ったよな。大会終わるまでの食費と宿代はあるのか?」

「……たぶん」



 たぶんってなんだーー!


 手持ちを聞くと、俺が普段使うような宿屋なら3日と持たない。それを言うとベネトナシュが宿は馬小屋を使わせてもらうとか言い出す。さすがに15歳の女の子に馬小屋は襲ってくださいと言っているようなものだ。

 かと言ってお金を俺が出しても、今コレだけ人が溢れている首都はシーフなどがスリをしまくっているだろうから、盗まれかねない。


「……あ」

「ん?」

「……お金、なくなってる……」


 はぁぁぁ……思った側からこれか。

 ドルイドの師とか以前にまず冒険者としての教養が必要そうだ。


「ベネトナシュ、師弟の話は抜きでまず冒険者として生きる為の術を教えるよ」


 そう言うとベネトナシュはコクコクと頷いてきた。


 となるとある程度俺のことも教えておかなきゃいけなくなってくるな……



「まずは宿屋を確保だ。コレだけ人が集まっているから、早めに決めておこう」



 と思ったが既に宿屋はどこも満室で馬小屋すら普通に寝泊まりさせるだけの余裕がなさそうだった。



「これは参ったぞ。野宿は流石に体が痛くなるから嫌だしなぁ」


 チラッとベネトナシュを見る。ベネトナシュはあまり感情は出さないが、外見は悪くない。クラスで言えばトップ争いにはギリギリ入れるか入れないかと言ったぐらいだろうか。そんな女の子を冒険者になりたてで野宿は可哀想だ。


 俺はフェンリルとベネトナシュを連れて公爵の住む屋敷へ向かい、入り口で番をしている兵士にヴォーグ王にサハラが大至急面会したいと伝え、しばらくすると公爵の屋敷に入れられ一室に連れて行かれて待っているとヴォーグが姿を見せた。



「よぉ、どうしたサハラ?」


 ヴォーグ王を目にして驚く顔を見せたベネトナシュを他所に、宿屋がどこもいっぱいだからなんとかならないか相談する。


「なら侍女長用に用意された部屋が空いてるからそこ使えよ。それよりその子はなんだ?」

「助かるよ。それとこの子はベネトナシュと言って、俺が魔道学院に通っていた時のクラスメイトだよ」

「ほぉお……」


 席を立って頭を下げながらベネトナシュが挨拶をする。


「は、初めまして……マ、マママルボロ王ヴォーグ様、べ、べ、ベネトナシュ……と申し訳ありません」


 申しますだろうそこは。ベネトナシュでも緊張ってするんだな。


 ベネトナシュの挨拶を聞いてヴォーグは腹を抱えて爆笑しだす。


「おいヴォーグ、いくらなんでも失礼だぞ」

「いやいや済まん。いや済まなかったベネトナシュ」

「い、いえ……」


 すっかり恐縮してしまっているベネトナシュを見てヴォーグはまた笑い出した。


「なかなか可愛いじゃないか?

しかしそうなると部屋が一つしかないがどうする?」

「まぁなんとかするよ」



 そうかと言ってヴォーグに案内され、侍女長用の部屋に入る。

 ここへの出入りは後で証書でも渡すと言ったが、ふと思い出した様にヴォーグが俺に自分で作れよと言って部屋を出て行った。



 侍女長用の部屋に俺とベネトナシュの2人きりになると、青ざめた顔をしながら俺を見つめてきた。


「サハラさんって……何者?」

「絶対に他言しないと約束してくれるか?」


 コクコクと力強く頷いてくる。


「俺は自然均衡の神の代行者だ」

「え? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 さすがのベネトナシュも驚きの表情を見せる。


「……じゃあドルイドは嘘……?」

「いや、ドルイドでもあるのは確かだよ、なぁフェンリル」

“俺はサハラと契約を結んだ氷の精霊だ”


 ベネトナシュが今度は驚いた表情が固まったままフェンリルを見つめる。


「フェ、フェ、フェンリル……喋れた……氷の精霊?」

“そうだ”

「フェンリルは氷の最上位精霊だ」


 ベネトナシュはさっきから驚いた顔で口をパクパクさせている。その様子が面白く、しばらくする落ち着くまで見守る。



「サハラさ……様、大変失礼なことを……」

「ベネトナシュやめてくれ、今まで通り接してもらえないなら、俺は君とは冒険出来ないよ」

“サハラはこういう男だ”

「はい……」

“その返事は失格だ”

「……うん」

“合格だ。な? サハラ”

「フェンリル、なんか楽しそうだな?」



 学院にいた時によく相手してくれていたからなのか、フェンリルがベネトナシュ相手に喋れるようになるとからかう様に楽しんでいる。


「それじゃあ……サハラさん、今後ともよろしく……」

「今後とも?」

「今さっき一緒に冒険と言った……」

「あ……」

“アホぅ”


 そう言ってウシャシャシャシャと笑うフェンリルにゲンコツを入れてやった。


“痛いぞサハラ!”

「サハラさん、フェンリル叩くの……ダメ」


 ベネトナシュがフェンリルを抱きしめながら言ってくる。


“そうだぞサハラ”



 みかたができたフェンリルが調子にのる様になり、ベネトナシュと冒険をすると言ってしまった俺は頭を抱えることになった。



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