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アロンミット武闘大会

 ヴォーグにキャビン魔道学院で起こった事を話すとヴォーグもすぐに察したようで、サーラという人物を今後侍女として在籍している事にすると約束してくれた。

 俺の思っていた以上にヴォーグは賢く気遣いもできる男のようで、アリエルの事には一切触れないようにレグルスと麻薬の話を聞いてきた。


「なるほどな、こいつがその麻薬って奴か」


 俺が現物である麻薬を見せると俺の手から奪うように取ると、匂いや潰してみたりをしていた。



「それでサハラはレグルスを追うのか?」

「いや、この1年探し続けてなんの痕跡すら見つからなかったからな。奴が15歳になる残り3年間は適当に過ごすつもりだ」


 フムとヴォーグが考え込み、ある提案をしてきた。

 その提案とは俺がここで侍女として働き、また現れるかもしれないのを待ってみること、それと今度開催されるアロンミット武闘大会に出てみないかと言われる。



「アロンミット武闘大会?」

「ああ、【勝利の神アロンミット】を模した武闘大会でな。【勝利の神アロンミット】の神威を高める為に行われるそうだ」

「なるほどね。だけど俺が出たら話にならないぞ?」

「これは大した自信だ。だが自己強化する魔法以外は禁止されているぞ」

「それはもう7つ星の騎士が圧倒的に有利なんじゃないか?」

「そうでも無い、と一応聞いた。自己強化の魔法は大半使えるかららしいが……甘いか?」

「甘すぎだ。試すか?」



 そう言って俺がまた杖を構える。ヴォーグもすぐに剣を構えてくる。


「最初は騎士魔法を使わないで打ち合う」

「よっしゃ!」


 ドルイド魔法の鉄木(アイアンウッド)を使い杖を金属のように硬くさせてから逆手で構えた。

 最近は杖術よりも棒術ばかり使っていたため久しぶりだが、賢人の腕輪で身につけた力は忘れることは無い。

 ヴォーグは俺の予想よりも早く鋭い攻撃で受け流すのも大変な程の腕前だった。



「グランドマスター級……それ以上か?」


 一度離れて聞くと、自信満々に頷いてきた。ならば次は騎士魔法を使うと宣言してから再度打ち合うと、今度は余力を残して渡り合えるようになる。


「騎士魔法はこの程度か?」

「済まん……かなり手加減している……」

「はぁぁぁぁぁ!?」


 ヴォーグが吠える。

 その証拠とでも言わんばかりに、次の打ち合いは一瞬にしてヴォーグが次に攻撃してくる剣筋が見えたところで受け流し、振りかぶる動作なく脳天めがけて振り下ろして寸止めした。


「分かっただろ?」



 俺がそう言うとこいつは確かにずりぃなぁと笑いながら武器を下ろした。

 7つ星の騎士の強さを改めて思い知ったヴォーグは、闘技大会でのルールを根底から変える必要があるなと口にする。

 このアロンミット大会はマルボロ王国とウィンストン公国、7つ星の騎士団自治国で決めたことだったそうだが、7つ星の騎士団自治国がルールを決めたことから、最初から仕組まれていたのだろう。



「こりゃ魔法はすべて禁止だーな」

「素直なんだな?」

「相手の強さを認められないようじゃ、剣士はできないだろ?」


 自らを剣士は国王らしからぬ発言だったが、俺の目にはマルスの姿が一瞬見えた気がした。



「それで? 己の戦闘技術のみとルールを変えたならば、参加してみる気にはならないか?」

「考えておくよ。しかしなんでそんなに俺に出て欲しがる?」



 俺の本気を見れるかもしれないからと言うだけのくっだらない理由に驚かされた。だが先程の騎士魔法無しの時点で、手加減されていることに気がついたと言うのだから伊達ではなさそうだ。



「俺は一応ドルイドだぞ?」

「違うだろ? あんたは自然均衡の神の代行者だ。この大会で勝って優勝し、レグルスの奴が誰に喧嘩を売ったのか知らしめてやれよ」



 どうやらラークの血もしっかり混ざっているようで知恵も回るようだ。




 そして暫くここで世話になることになり、俺がかつて使っていた侍女長の部屋に通される。


「今は侍女長が空席なんだよ。いる間あんたに任せるから、他の侍女達を育ててくれ」

「ちゃっかりしてるな」

「ギブアンドテイクっていうんだぜ?」


 片目を瞑る。

 準備が終わったら国王の部屋まで来るように言うとヴォーグは侍女長室を出て行った。



“変わった奴だな、全くもって王らしく無い”

「形式にとらわれないスタイル、あれでこそマルボロの王らしいんだよ」

“そういうもんか”



 そう言いながらドルイド魔法で女体化し、懐かしい侍女の服を着込む。何十年経とうがみっちり仕込まれ忘れることは無い。

 髪の毛も綺麗に編み込んで鬱陶しくならないようにし、準備が終わった足でヴォーグの待つ部屋まで行ってドアをノックした。



「おう、入れ入れ」


 中から声が聞こえ「失礼いたします」と中に入り込んだ。


「お前……サハラ……なのか?」

「今はサーラです。ヴォーグ様」


 へーほーとか言いながら俺の周りをぐるぐる見回る。一時期長いこと女やってたせいか、今ではその見ている視線がどこなのかがわかるようになっている。



「むっさいおっさん姿よりそのまんまの方が良いんじゃねーか?

そうしたら俺の妾にぃっ!ーー」


 ゾムッと内臓をえぐるようにボディブローを……


「フオォォォォォォォォォッ!」


 あ……チョット下過ぎた……


「俺の俺様がぁぁぁぁぁっ!」

「す、済まん……」

「みなぎってきたぁぁぁぁぁっ!」

「死ね、死んでしまえぇぇぇ!」


 ゾムッ!


「オフォォォォォォォォ! まだだ、まだ足りねぇぇぇぇぇぇ!」




 マルス、お前の孫な……ドMだったよ……




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