思いがけない出会い
ヴァリュームの町に戻った俺は、ポットと出会った妖竜宿の前あたりまで戻ったが、ポットの姿は見えなかった。
冒険者ギルドに言って聞けば分かるか。
冒険者ギルドに入り、受け付けに行きポットの依頼について尋ねると、つい先ほどキャンセルされたそうだ。
ポットの家を教えてもらい向かうことにした。
「ここがポットの家か」
ドアを叩いて待つ。少ししてドアが開くと先ほどのポットの娘が顔を出した。
「あ、先ほどはどうもありがとうございました。今日はどういったご用件でしょうか?」
う……一体なんなんだ、この調子が狂う反応をする子は……
「えっと、注文ではないんだけど、ポットさんに会いたいんだけど」
「今仕事で忙しいので、私が伺いますよ」
話にならない。娘さんも無事だったのは確認できたし帰ろうとした時にポットが顔を出し、大慌てで俺を家に招き入れた。
フェンリルも中に入ってきたが、特に何も言われなかったのでそのまま入れさせる。
「お父さん注文間に合わなくなるよ?」
「こちらの方はお前を助けに行ってくれた大切な方だ。お礼をしないといけないからお前はポーションを作っていてくれないか?」
「はーい」
娘さんがいなくなりどこか一安心している自分がいた。
ポットがまずお礼を言い、報酬の話になるのだがポットの家は貧乏な為悩んでいたようだった。
「別に対したことはしていないので気持ちだけで十分です」
「そんなわけにはいきません! 是非何か……」
そうは言われても何を貰えば……とそこで気がついたことがあり聞いてみることにした。
「ではお伺いしたいのですが……」
俺はポットに薬草からポーションを作る技術があるのならと、ある葉のことを尋ねてみた。
「それは毒草ですな。ですが、極少量だけ粉末にして皮膚に塗ることで痛みを和らげる効果があるのですが、今は使われていない古い時代のものですな」
俺はフェンリルと顔を見合わせて頷きあう。
「これを見て欲しい」
そう言って麻薬を取り出して渡した。ポットは黒い塊を手袋をはめて受け取ると匂いを嗅ぎ、千切り、潰してみたりした後口にしようとする。
「ポットさん!」
「大丈夫です。私達はこういうものに慣れております」
そう言って口に含んだ。
ベッと吐き捨て、花瓶にあった水を口に含みすすいで吐き出す。そして小瓶を取り出して飲み干すとホォとポットは一息ついた。
「何かわかりましたか?」
「いえ、さっぱり。ですが、とんでもない毒素ですな」
そう言って俺には意味不明な説明を延々としはじめ、頭が痛くなってくるのを我慢しながら聞き、話をやめさせる為に口を挟んだ。
「つまり、調べていけば何かわかると?」
「一応、私も薬師の端くれですからな。必ず分かるはずです」
あれだけ調べてもわからなかったというのに、この男は自信満々に言い切ったため、俺がウィザードに頼んでみた事を話してみると予想外の答えが返ってきた。
「薬師は魔法とは違いますからな。今は魔法があるので、神官がいないパーティや一人で冒険でもしない限りポーションを必要としてくれる人はほとんどいませんからなぁ」
また長々と話をし始めた。だが今回は俺でもわかる内容で、魔法を使って作っていないポーションは薬師しか解り得ないものなのらしい。
そして驚いた事にその昔、神に喧嘩を売った男がいたと話し出す。神に喧嘩を売った事で国には神官はいなくなり、その時召集されたのが普段ほとんど日の目を浴びない薬師達だった。
重宝される事になった薬師達はその男の為に全力で尽くしたらしい。
その話を聞きレフィクルだと言うのはすぐに分かった。薬師であるポットの話を聞く限り、薬師達からは救世主のような存在であったようだ。だがーー
「しかしその男は……」
「はい、今は悪魔王と呼ばれています。ですが……知っていましたか? なぜ神に戦いなんかを挑んだか」
こんな所でまさかとんでもない話を聞く事になるとは俺の想像だにしなかった。あのレフィクルが神に喧嘩を売った理由が、愛する妻を神が殺したからだというのだ。
「神が、レフィクルの妻を殺し、た?」
「はい、詳しくはわかりませんが世間で言われているような狂王ではなかったようですよ」
どういう事だ……その時あの戦いの時を思い出した。レフィクルについていたあの虫人族の男、確かルベズリーブと言ったか? あの時最後に自爆した時の言葉……
『この世で唯1人、忌み嫌わず接してくれたレフィクル様を!』
そうだ、あの時俺達は勝利したにもかかわらずどこか物悲しさを覚えた。
「そんなわけで私達薬師は崇拝などはしませんが、悪く言うものもおりません。
さてそれはそうと、これをもし作れというのでしたら、申し訳ありませんがお断りさせてもらいますよ」
「いや違います。それの解析と解毒が作れないかと思ったんです」
「そうですか、それならと言いたいところですが、うちは見ての通り貧乏ですから研究するだけの余裕がないのですよ」
ドチャ……と音がする程のお金を出す。
「これで足りますか?」
ポットが中を覗くと驚きの声を上げる。
「足りなければまだ出しますよ」
「いえ十分です。十分過ぎるぐらいですが貴方は一体……」
ここで俺は亡くなった妻、アリエルの事を話、次に犠牲者が現れた時の為に解毒方法を見つけ出して貰いたいと言った。
「俺は……」
“言うのかサハラ”
「ヒィ! 狼が、狼が喋った!」
「すいません、コイツはフェンリルと言って氷の精霊です。そして俺はサハラ……ドルイドです」
代行者を隠したわけじゃない。アリエルの事とポットの話を聞いて、少し神に対して違和感を感じはじめたから言わなかっただけだ。
するとポットがシィと口に指を当ててくる。
「今の話、聞かなかった事にいたしましょう。
……自然均衡の神の代行者サハラ様」
「なっ!」
「貴方はこの町で名前を言わないほうがいいですよ。有名な方ですから」
ポットに笑顔でそう言われた。




