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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
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アリエルの死

これでこの章は終わります。

 その日アリエルは朝から苦しそうに呼吸をしている。


「苦しいのか?」


 声をかけるが頷くだけで、腕でギュッと胸を押さえ痛みと戦っている様だ。


「他の子の時と反応が違うのはどういうことなんでしょう……」

「うん、皆んな痛みは感じている様子はなく、突然だったはず……」


 グランド女王とキャスが話し合っている。俺は見るに耐えられない状態だったが、最後のその瞬間まで手を離すつもりはなかった。



「なんだお前は」


 そこへそんな声が聞こえてくる。ゆっくり部屋の入り口の方に顔を向けるとそこにはなぜかシャリーさんの姿があった。

 近づき捕まえようとする魔導兵たちを、まるでハエでも追い払うように手を振る動作だけでよろめかせ転ばせていた。

 その姿を見たバルロッサや不死王も止めに入ろうとしたが、俺の名を呼んでいたため手を出すのをやめたようだ。



「サハラ王様ぁ! サハラ王様ぁ?」



 俺がアリエルの手を取ったままシャリーを見ていると、俺に気がついて側まで近づき唐突に口を開いた。


「急いで決断してくださいませんかぁ?」

「な、何を……?」

「このままアリエルさんをマナ結晶化させてしまうのか、それとも輪廻に返すかですわぁ」



 どうしてそんなことまで知っているのかと思ったが、初めて見るシャリーさんの焦る顔を見て、アリエルの手を握りながら考える。

 結晶化すれば輪廻に還らずアリエルは消えてしまうが、魂とでもいうべきマナ結晶が残る。

 だが輪廻に還ればアリエルは生まれ変わり、いつかこの世に記憶などは無くなるが生まれて来れる。



 部屋を見回し皆んなの顔を見ると困った顔を見せた。


『サハラさんが、決めて……』


 口を開くよりは楽なのか繋がって伝えてきてくれた。


「マナ結晶化して置いておきたいのは、俺のわがままだよな…

シャリーさん、アリエルを輪廻に還らせます」

「そう、ならあまり時間が無いから早く指環をはずすといいですわぁ」



 アリエルの指にはめた真円の指環を見て、そしてアリエルを見つめる。


『アリエル、輪廻に還ってくれ。そしていつかきっともう一度出逢おう。それまで俺はずっと待っているよ』

『あなたの事を……気がつかないかもしれない……よ?』

『俺が、きっと気づいてみせる!』

『……うん、うん……あたし……待ってる。待ってるよ』



 息を吸う……


 気分はまるでアリエルの生命維持装置でも切ろうとしている気分だ。いや、そうか。

 この指環を外せばアリエルは死ぬ。俺が殺したことになる……


 ……!

 不意にアリエルが俺の手を握ってきた。


「サ……サハラさん……」

「アリエル……」


 指環を握る俺の手を一緒に抜こうとしている様だった。


「済まない……アリエル……済まない……」



 アリエルを抱きしめる。アリエルが俺の耳元に口を寄せて呟いてきた。


「サハラさん、そんなに……思い詰めないで。あなたは……あなたには……世界が味方してくれている、あたしの……ワールドガーディアン。

大好き……愛してる……」



 アリエルが俺の手を引っ張り指環を外したーー


 直後、アリエルの力が抜け、全身がだらんとなった……




 他の皆んながいるのも憚らず俺は叫び、泣いた。

 フェンリルも窓に向かい遠吠えをする。いつまでもやめることはなかった。







 しばらくすると不死王が俺の方に手を乗せてきた。


「……必要な時はいつでも声をかけろ。

戻るぞリリス」

「はい、不死王様」


 そう言うと不死王とリリスは去っていった。



「サハラ、儂も戻る。力になれず済まなかった」


 そうバルロッサも申し訳なさそうに言うと魔法で帰った様だ。



「サハラ王様、私もお店があるから帰りますわぁ」


 シャリーがそう言って骸になったアリエルを抱きしめ続けている俺の側まで来て、耳元で囁く。


「今はゆっくりなさい。そして、いずれ立ち直る時にその人と一緒に私の所へ一緒にいらっしゃい」


 いいですわねぇと言いながらシャリーさんも部屋から出て行った。



 部屋に残るセーラムとオル、キャス、グランド女王、エアロ王女、アラスカ、そして未だ遠吠えを続けているフェンリルだけになる。



「今はそっとしておいてあげましょう」


 そう言ってグランド女王が5人を連れて部屋を出て行った。




 ひとしきり遠吠えをしたフェンリルが俺の元に来るなり唸る様に叫んだ。


“サハラ復讐だ! 俺は絶対にあのガキを殺す! 絶対だ!!”




「サハラさん……」

「サハラ……」

「サハラよ……」


 エラウェラリエル、レイチェル、スネイヴィルスが来た様だ。


「テメーら今頃揃いも揃って何の用だ!

人1人助けられない癖に神様ズラでもしに来たのかっ!」


 アリエルを抱きしめたまま首を向けて俺は吠えた。

 エラウェラリエルとレイチェルが誤ってくるが、誤ったところでアリエルは帰ってくるわけじゃない。


「少しは口を慎め、お主は儂の代行者じゃぞ!」

「ハッ! 人1人救えない神の代行者なんかいつでも辞めてやるよ!!」

「お主本気で言っているのか?」

「【自然均衡の神スネイヴィルス】様! サハラさんは今大切な人を失ったばかりで気が立っているだけです!」

「そうよ! 精神不安定な状態なんだから今はそっとしておくべきよ!」

「お主ら……

今の失言、2神に免じて今回は許そう」


 スネイヴィルスがぬけぬけとそう言い消えていった。


 俺の元にエラウェラリエルが近寄るが、俺の顔を見て怯えた様な顔を見せる。


「サハラさん……私……ごめんなさい……」


 それだけ言うとエラウェラリエルが逃げるように消えた。その代わりにレイチェルが側に来る。


「サハラ、私達もアリエルさんを救いたかった。本当に救いたかった。これだけは信じてね……」


 レイチェルもそれで神界にでも戻った様だった。



 後に残された俺とフェンリルはいつまでもアリエルのそばを離れなかった。




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