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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
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蝕み行く身体

 その後もいろいろあったが、特に大きな問題ごとも起こらず、入学してから1年が経とうとしたある日の事だ。

 ついにアリエルが苦しみだすようになりはじめた。


「アリエル!」

「大丈夫……でも、もう長くはないみたい」


 この事はすぐにグランド女王に報告すると、すぐさまアリエルは運び出され王宮に連れて行かれた。もちろん俺も王宮について行く。


「サハラ様、残念ですがこの状態になると2〜3日程で結晶化します……」

「あなた、サハラさんゴメン。ゴメンね」

「……クソッ」



 今日まで俺も何もしなかったわけではなく、不死王に言われた通りキャビンに戻ってすぐ【魔法の神エラウェラリエル】の神殿に行って、アリエルの神格化の話を持ちかけた。

 だが、スネイヴィルスはいい返事はしなかった。


 まずアリエルの結晶化の進み具合が神の想像よりも早かった。そして俺の希望である神格化も、アリエルが自然均衡の神官であるために不可能なのだと言う。そして、何より今後同じような事があるたびに俺のわがままを聞くわけにはいかないという事だった。



 そんなこんなで結局救う方法は見つからず、ついにこの時が来てしまった。



「サハラ!」


 突然扉をノック無しに入ってきたのはセーラムとオルだった。ベッドに横たわるアリエルを見てエルフ特有の直感で危険な状態である事を悟ったようだ。


「サハラさんお久しぶりです……アリエルさんも」


 オルも力なく横たわるアリエルを見つめて黙り込む。



 少しすると王宮が騒がしくなり、魔導兵の報告でグランド女王が一度退室した。

 少しするとグランド女王は戻ってきたが、信じられない珍客を一緒に連れてきた。


「なぜこんな大事な時に私を呼ばないのですか? 私怒りますわよ!」

「ありがとう……リリスさん」

「友の妻が危篤と聞き余も参上させてもらった」

「サハラさん、その人は?」

「ああ、アリエルを神格化させるという方法を教えてくれた……不死王だよ」



 この場にいたアリエルはもちろんの事、セーラム、オル、グランド女王、エアロ王女、キャス、アラスカが驚きの声を上げる。フェンリルは知っていた為、気にすることなくアリエルを見つめ続けていた。


「友の妻よ、確認させてもらう。我が眷属となって友の為に生きてやる気は無いのだな?」


 アリエルは静かに頷いて答えると不死王はそうかと身を引いた。

 


 そこへ王宮のこの部屋の窓から……ローブを着た骸骨姿のバルロッサ王までが姿を見せた。


「バルロッサ王!? 何でここに」

「この馬鹿もんがぁぁぁぁぁぁ!」


 入ってくるなり思い切り俺をぶっ飛ばしてきて、広いこの部屋のはじまで吹き飛んだ。

 不死王以外の全員が今の光景に呆気にとられ、突然現れたリッチに驚きを隠せなかった。



「何故こうなる前に儂の元に来なかった! 儂であれば何か手立てが見つかったかもしれぬものを!」

「すいませんでした。ですが、バルロッサ王には門の守護が……」

「今は【死の神ルクリム】が今変わってくれておるが、毎日暇しているわ!

話をさっさと聞かせろ。もしかしたらまだ間に合うかもしれんぞ!」

「久しい再会だが、それならば挨拶などしている暇は無いようだな友よ」

「おお! 不死王か、ちょうど良い。貴様も手を貸せい!」

「変わらぬなお前も、分かったどうする?」

「おおよそは神から聞いた。麻薬という奴はここにあるのか?」


 恐ろしい速度でバルロッサが魔法を使ってアリエルを見ていき、分析をしていっているようだった。

 グランド女王が麻薬を渡すとバルロッサが気がついたように声をかける。


「ふむ、やはり何処と無くお前キャビンに似ておるな。キャビンは確か代々その知識や知恵を継承しておるはずだ。お前も手を貸せい!」

「私で良ければお手伝いしますわ」



 凄い光景だった。魔導王と呼ばれたバルロッサと不死者の王である不死王、そしてグランド女王、いやキャビンが一つになってアリエルを助けようと知恵を絞り出している。

 フェンリルも加わりアリエルのマナの量などを話していた。


「さすがは魔導王バルロッサ様ですわね。そこには気がつきませんでしたわ」

「全くもってふざけた物を作り出したものだ」

“マナの結晶化が少しずつ始まっているようだ”

「ええい! 厄介な!! サハラ! 少しばかり荒療治するぞ!

アリエルも我慢するのだぞ」




 皆んなが必死にアリエルを救おうとしてくれている。そんな中アリエルが口を開いた。


「皆さんありがとうございます。でももう……良いんです。あたし十分幸せに生きられました。生きられたんです。

サハラさんはもうわかってくれてるよね。シアから聞いてるんだから」

「馬鹿を言うな! これだけの人……かわからないがアリエルの為に頑張ってるんだ。

諦めるな! 俺の為にも生きてくれ!」



 だがアリエルは首を振って拒否してきた。


「サハラさんにはこの言い方の方がいいかな?

あたしの夢は全て叶ったの、もう十分なぐらい満足したから、この幸せなまま終わらさせて」


 アリエルのこの思いに、この部屋にいる皆んな何も言えなくなり、ただ見つめるしかできなかった。




 ……そして、フェンリルが言う結晶化してしまう日が来る。




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