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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
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アリエルの過去と気持ち

 縮地法で空からアリエルを探すと、この宿屋の離れ、つまり俺とアリエルが止まっている場所のすぐ裏手の岩山と思っていた場所に入っていった。


 そして中に入って10分ほどすると岩山から出てきて、離れに戻ってこようとした為俺も急いで戻る事にした。


「お帰りアリエル」

「……ただ……いま」

「どうした? 急に元気がなくなったな」

「気が……ついていたのでしょう」

「何がだ?」

「貴方が自然均衡の代行者だと、知りました……」



 驚いた事にシェイプシフターが謝罪してきて、そして今すぐにでもアリエルを返すと言い出してきた。


「アリエルは無事なんだな?」

「無事です。ただ、記憶をコピーする時以外は眠らせています……」

「なら良い。じゃあアリエルを……」



 そこでクラスメイトがやってきた為、シェイプシフターに口早に伝える。


「いいか、あいつらが帰るまで余計な事は一切言うな。そして今はアリエルとして俺に接しろ」

「そ、そんな私がたいそれた事……」

「いいか、これは俺の頼みだ。聞いてくれ」

「はい……いえ、うん、わかったわ」


 俺がニヤッとさせるとシェイプシフターもすぐにアリエルと変わりない動作に変わった。


 こいつは本当にすごい能力だな……



 クラスメイト達と温泉に浸かり、ゆったりと時間を過ごす。アリエルに化けたシェイプシフターは俺に寄り添い、その義務を全うするかの様に俺に胸を押し当ててきていた。


「くぅぅサハラが羨ましいぜ! いつか俺だってべっぴんさんの冒険者仲間を見つけてサハラみたいになってみせる! それが俺の夢だ!」

「おいデノン、君は英雄キャスの様になるのが夢だったんじゃなかったんですか?」


 それを聞いて皆んなも爆笑する。

 最初の頃とは違い、和気藹々とした雰囲気の中ドゥーぺが思い出したかの様にアダーラたちの事を口にした。

 それを聞いて皆んなも心配そうな顔を見せるが、俺はアダーラ達がどうなったのかを知っているためか、つい暗い顔になったようで、それに気がついたミラがドゥーぺを怒っていた。

 もっともミラが怒っていたのはアリエルが洗脳された時の事だと思うが、実際にはそれよりもアリエルの結晶化の事だった。

 シェイプシフターはそこまでの記憶もコピーしていたのか俺を優しく抱きしめてきた。

 ドゥーぺが謝り、また、デノンが無理矢理場の空気を変えるような話をして雰囲気は戻ったが、ビクターとエアロが時折俺を見ている事には気がついた。



 温泉から上がって皆んなも就寝のため自分たちの宿屋に戻っていき、俺とアリエルに化けたシェイプシフターの2人きりとなった。


「その……大丈夫ですか?」

「どこまで知った?」


 シェイプシフターはコピーしていくせいか記憶を逆に話していき、結晶化の話からはじまり、麻薬の話になり、そしてレグルスの話も出てきた。


「許せませんね、そのレグルスという男は」

「それはアリエルとして、か?」

「記憶をコピーしたからという理由もあるかもしれませんが、それ以上にアリエルさんの心がわかればわかるほど、同じ女として許せません」

「お前、女だったのか?」

「え……はい。シェイプシフターは、男なら男に、女なら女にしかなれませんので」

「そういうものなのか、それとアリエルの気持ちというのはどういうものなんだ? 頼む教えてくれ」



 するとシェイプシフターは突然黙り込んでしまった。悲しそうな顔をするシェイプシフターはアリエルそのもので、ついいつもの癖で抱き寄せてしまった。



「だ、ダメです。私はアリエルさんではないですから。

それとアリエルさんの気持ちですが……アリエルさんは死を望んでいます……ずっとサハラ様のそばに居たい気持ちと同時にそれと同じぐらい……生きるのに辛くなっているようです」

「それは俺ではアリエルを支えられないからなのか?」

「それは違います! 決してそのような事はありません! ただ、彼女はアリエルさんはソーサラーとして虐げられた壮絶な過去を持っていますーー」



 アリエルの過去、俺が決して聞かなかった、いや聞けなかった話を今、シェイプシフターから初めて聞いた。

 内容は確かに壮絶でソーサラーと知られた時点で両親からは恐れられ、町の人たちからも恐れられた。次第に何もしていないというのにアリエルはつまはじきにされ、ある日の朝両親が自殺していた。

 そして瞬く間に親殺しと罵られるようになり、居づらくなったアリエルは逃げるように町を出て行き、その日からアリエルは決して誰も信じる事はなくなり、冒険者として生きるようになる。

 当初はドルイドになって人里離れた場所で平穏に生きようとしたようだが、簡単になれそうもないのがわかり、ドルイドに近い自然均衡の神の神官になったらしく、そして偶然出会った仲間が何も言わず聞かず詮索してこない為、居心地がよく長くパーティを組むようになったんだそうだ。

 そんなある日、レジスタンスに加わる事になり、そこで自分の信仰する神の代行者を見た。つまり俺だった。

 恋人を失い苦しんでいるにも関わらず、仲間たちからその力に恐れられ、つまはじきにされ消息を絶った時の姿が自分と重なったらしい。にも関わらず仲間の為にキャビン魔道王国軍を率いて帰ってきた、その時その姿に憧れを抱いたらしい。

 照れるね……

 そして出会って恋人になり共に年月を過ごしていくと、アリエルは次第に自分と俺の辛さの次元の違いに気がついていったんだそうだ。



「サハラ様はたった1人異世界からやってきて、そこでどんなに苦しいことがあっても、諦めずに立ち向かっていきました。それを知ったアリエルさんは自分を恥じたようです」



 アリエルはそれでも役に立ちたい一心で俺を追ってきたが、レグルスの一軒で自身の弱さを知ってしまったという。どういうことかと聞くと、洗脳は確かにされてはいたけれど、レグルスと関係を持ってしまったのは、誘われはしたけど、まだどこか迷う自分がいたにも関わらず受け入れてしまった事なのだそうだ……


 その後結晶化の事を知り、アリエルは悟ったそうだ。これは罰なのだと、そして俺にこの先ついて行くのはもう辞めようと決めたそうだ。そんな時に俺にプロポーズされ、思わず嬉しくなりそのまま結婚してしまった。


「アリエルさんは、今幸せのようです。この幸せを感じたまま消えたいと望んでいるようです」


 思わず涙が頬を伝う。アリエルはレグルスに出会う以前から、既に俺と居続けるのが辛かったようだった。


「ありがとう。えっと……」

「シア、それが私の名前です」

「そうか、ありがとうシア」

「あの、アリエルさんを……連れてきますね」



 そう言うとシアは宿屋を出て行った。横でずっと静かにしていたフェンリルが俺の側まで来ると悲しそうな表情を見せていた。


「お前そう言う顔もできるんだな」

“シアは嘘は言っていない。サハラは気がついていなかったかもしれないが、時折アリエルが悲しげにお前を見つめる顔を俺も見たことがあったが、これでやっとわかった気がする”

「そうだったのか……」



 そして2人が宿屋に戻る音が聞こえてきた。




そろそろこの章も終わりが近づいています。

以前よりお聞きしていたサハラと一緒に旅するメンバーをそろそろ決めたいと思います。

今現在はベネトナシュで決まりそうですが、この登場人物をもう少し見てみたいと思う人物がいたら希望を感想までにお願いします。


・ドゥーぺ

・デノン

・ビクター

・アリオト

・モリス

・ミラ

・ベネトナシュ

・アルナイル

以上になります。

学院のクラスメイトはこの章以降登場予定はありません。

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