ゴロツキとの戦い
ゴロツキ達は相当慣れているようで、囲いはするが無駄に斬りかかりは決してしない。
俺が1人に打って出ようとすると、身を引いて時間稼ぎをひたすらしているようだった。
「もうすぐ仲間が駆けつける。その時になってもまだその余裕の面をしていられるかねぇ?」
今現在俺は修道士の呼吸法は使っていない。さすがに修道士で戦う姿をデノン達に見せるわけにはいかない。その為今の俺はドルイドと騎士魔法で戦わなければならなかった。
最もそれだけでも十分勝てる相手ではあるのだが、標的が俺以外になった場合守りきれなくなりかねない。
「厳しいな……」
俺が呟いた一言にゴロツキの1人が今更気がついたかと叫んでくる。そういった意味ではなかったのだが、確かにこれ以上増えられても面倒なのは確かだった。
さっさとなんとかしないとマズイだろうと、鞄に手を入れドングリを4個取り出して爆発物に変えて投げつける。
うわぁと情けない声とともに4人が痛みに苦しみ、武器を手放して転げ回った。
残るは2人……
腕の立ちそうな奴は後回しにして、杖で攻撃を仕掛けサックリと意識を刈り取った。
「残るはお前だけだ」
「このまま見逃す気はないか?」
「ないな。出るところに出てもらい裁きを受けてもらう」
「ならば戦うしかあるまいな。ちょうど援軍も来たようだ」
気がついていたからこそ数を減らしておいたのだが……まさか10人も来るとは思わなかった。
「形勢逆転のようだな」
倒れた仲間を見て俺を脅威とみなしたのか、全員が俺を取り囲んできた。
だがそれと同時にもう1人物凄い速さで近づく人物がいることに気がつく。
「それはどうかな? こちらにも援軍が来てくれたようだぞ」
言い終わるかどうかのタイミングでアラスカが姿を表した。
「貴様らそこまでだ! 大人しくするなら殺しはしない!」
7つ星の騎士の登場でデノンやミラは助かったとばかりに喜び、ゴロツキ共は絶望的な顔を見せる。そんな中1人のゴロツキがニヤつかせながら叫ぶ。
「まぁ待てお前ら、コイツを試す時が来たってことじゃねーのか?」
そう言ってゴロツキの1人が小瓶をとりだし、一気に飲み干した。
特段変わった様子は見られないが、小瓶を飲み干したゴロツキは恍惚とした表情を見せている。
俺達と他のゴロツキ達もその様子をジッと伺っていると、突然そいつはアラスカに斬りかかった。
とは言えアラスカも7つ星の騎士、その攻撃は容易く躱し逆に斬りつける。
だが斬りつけられたゴロツキは恍惚とした表情のまま、アラスカに反撃を仕返してきた。
「なっ!」
アラスカが驚きながらも躱して、今度は心臓を突き刺したがゴロツキは倒れることはなく、剣の抜けなくなったアラスカが抱き掴まれてしまい、振り解こうと身をよじらせるが全く動じることはなく、そいつはアラスカの喉元目掛けて喰いつこうとしてくるのを自由な片腕で必死に食い止めている。
もちろん俺もただ見ているだけじゃない。俺の方にも小瓶を飲んだゴロツキが邪魔をしてきていて、アラスカを助けに入れない状況だった。そしてそんな小瓶を飲んだゴロツキが9人いる状況だ。
『アリエル、デノン達を連れて逃げてくれ』
『分かったわ!』
俺の意図を読んだアリエルが、手で合図をしてデノン達を連れて強引にその場から逃げ出そうとする。
「だけどサハラさん達が!」
「あなた達がいると足手纏いになるだけなの! 分かって頂戴」
「大人しく引きましょう。私達がいても役に立ちませんから」
後は何をしゃべっているかは分からないが、アリエルが先頭に立って逃げ出した。
感知の範囲から離れたのを確認し反撃に移る。
修道士特有の呼吸法をし、気を張り巡らせる。
まずは縮地法でアラスカの側まで移動し、抱き掴むゴロツキを杖で頭をまさしく殴り飛ばす。地面をゴロゴロと転がった。
「アラスカに抱きつくなんて羨ましいことしてんじゃねーよ!」
「マスターならいつでも歓迎致しますよ」
アラスカが念動力で武器を手繰り寄せ、剣を構えながらそう応えた。
「アラスカ、一気に叩くぞ!」
「はい、マスター!」
恍惚とした表情のゴロツキ達はそんな会話など気にすることもなく攻撃を仕掛けてきた。
アラスカが2人を切り伏せ、その間に俺も通り魔の如く、杖で4人の頭を叩き割った。
「残り4人、内2人は小瓶の薬を飲んだ奴か」
そう言って振り返る。小瓶を飲んでいない2人のうち1人は腕の立ちそうな奴で、おそらくもう1人もそんな感じなんだろう。
「降参だ、降参する。俺達は雇われてやっただけなんだ。7つ星の騎士を敵にする気は毛頭無い」
「ならば武器を捨ててを頭の上に置きなさい!」
2人の男は素直に従い武器を放棄して手を頭に乗せた。
「わかっているとは思うが、下手な動きを見せればすぐにわかるからな」
俺が念を押すように2人に言って、小瓶の薬を飲んだ2人のゴロツキに向き直り、アラスカと立ち並んで武器を構えて対峙する。
1対1にしなくてもどちらも1人で倒せるが、お互いに譲り合うようにそれぞれに攻撃を仕掛けた。
お互い一刀で斬り伏せ、頭を叩き割ったが、その隙を見て手を頭に乗せて立っていた2人が、武器を手にして走り出した。
「あの方角はアリエルさん達が逃げた方角です!」
「心配は無いと思うが俺が行く。アラスカはこっちを頼んだ」
「はい!」
アラスカの返事を聞いて2人の後を追いかける。本当なら高速移動か縮地法で追いたいところだが、出来れば正体は知られずにいたいため少し早めで追いかけることにした。




