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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
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自分らしく生きる

 アリエルはどちらも拒んだ。ウェラがレイチェルがその後何を言っても聞き入れず、俺が言ってもそれは変わらなかった。



「あたしは【自然均衡の神スネイヴィルス】様の神官です。そしてサハラさんの従属化したゴッドハンドです。

それが叶わないのなら、生きている意味はなく、裏切ってばかりの人生になってしまいます。

だから残りが短くてもいい、最後の一瞬まであたしは【自然均衡の神スネイヴィルス】様の神官であり、サハラさんのゴッドハンドとして生きたい」


 エラウェラリエルもレイチェルもここまで決意したアリエルに何も言えなかった。


「アリエルよ。そなたの信仰心しかと受け取った。ならば少しだけ今より不都合になるがマナを減らし、少しでも残りの時間でサハラの役に立つのじゃ。これは儂の命令じゃ」


 スネイヴィルスが静かにそういった。


「随分と都合のいい事出来るんだな」

「マナを生命力を取る事は【死の神ルクリム】が出来るが……どれ程あるかは分からん。氷狼の精霊に見てもらいながらやって貰えば問題なかろう」

「なるほど、フェンリル!」

“あいよ”


 フェンリルが姿を見せる。


「【死の神ルクリム】!」

「はい」


 彫像のようなルクリムが姿を見せ、アリエルに近寄って手をかざす。ウッとアリエルが声を上げ膝をついた。


「アリエル!」


 一応マナは生命力と言うのだから、脱力感などがあるのだろう。

 アリエルを抱き支え立たせた。


“半分!”


ルクリムは吸収したであろうマナを見て驚いた表情を見せていた。


「どうしたのじゃ?」

「いえ、半分でこのマナの量は見た事がなかったもので」


 マナの量、つまり生きるための生命力のようなものだ。それを吸収するルクリムも凄いがそのルクリムを驚かさせるアリエルはもっと凄かったわけだ。


「つまりまだ問題無いと?」

「一般的なソーサラーまで減らすのなら、今の更に半分でも十分でしょう」

「ではやれ」


 アリエルの了承抜きで更にマナを抜かれる。


「ちょ、ちょっと本人の意思は無関係ですか!」

「サハラよ、この量はあるだけ無駄で、麻薬と言うものの効果を早めさせるだけです」


 凍りつくような瞳で見つめられる。

 先ほどマナを取ったから分かるのだろうか? 更に半分を吸収し終えたのかルクリムは消え去っていった。


「アリエル、サハラを頼むぞ。

……効果がどれ程あるのかは正直なところ儂もよく分からんが、アリエル、儂はそなたを寵愛しよう」


 そう言うとスネイヴィルスも消えていった。


「アリエルさん、サハラをお願いね。

うーん……」

「どうしたレイチェんぐぅっ!」


 レイチェルがキスしてきやがった。


「サハラ頑張って、じゃね」


 レイチェルが消えていった。


「ちょっと待てよんぐぅっ!」


 今度は抱き抱えていたアリエルがキスをしてきた。


「上書き。サハラさん油断しすぎ」

「済まん……」



 残るはウェラがいるわけだが……

 そのエラウェラリエルが、ワナワナと震えている。


「エラウェラリエルさん、はい!」

「え?」


 アリエルが俺をウェラに突き出した。


「え?」

「アリエルさん?」

「レイチェルさんは恋人じゃないけど、エラウェラリエルさんはサハラさんの恋人だから、キスだけなら、その、いいです!」


 おいおい、俺は物か?


「な、んで?」

「サハラさんってね、恋人以外には絶対に手を出さないんだよ。だから、エラウェラリエルさんは特別」

「そうなんですか、それでは……お言葉に甘えさせて貰いまして……」


 ウェラが俺にそっと身体をピッタリと寄り添ってジッと見つめてくる。


 やべぇ、この控えめなウェラの接し方もやっぱり可愛いよなぁ……


 そしてそっと口づけて……こない?

 耳元に口を寄せてきた。


「アリエルさんを、大切にしてあげてください」


 それだけ言って俺から離れると消えていった。



「あれ? エラウェラリエルさん何か言ってた?」

「ああアリエル、お前を大事にしろってさ」

「今、お前って……」


 ニマァッと笑顔を浮かべて抱きついてきた。


「お、おい!」

「いいの!」


 俺に抱きつくアリエルを見つめて俺は思う。アリエルは俺の力になる為にいずれ訪れる死の道を選んだ。ならばせめて俺はそれに全力で応えるしかないだろう。

 いや、応えたい。


「アリエル……愛しているよ」

「う、うん、あたしも」

“おい、そろそろ夕方だぞ”


 どう見てもフェンリルの顔は「またかよ」って顔だ。



 その少し後にアルナイルがパーティーの準備が出来たからと呼びに来た。



「うわわわあぁぁ」


 俺はアリエルをお姫様抱っこしたまま会場に顔を出した。アリエルは嬉しいのか恥ずかしいのか顔を真っ赤にさせて俺の首に手を巻きつけていた。


 それが引き金となっていろいろ言われたが、パーティーでも皆んなに祝福されながら過ごし、アリエルは終始嬉しそうだった。俺はその様子を椅子に座って眺めていた。


 不意に肩を突かれ振り返るとベネトナシュがいた。


「おめでとうございます……」

「うん、ありがとう」

「ねぇ……サハラさん……なんでそんなに寂しそうな顔をしているの……」

「え! そんな風に見えた?」

「……うん。結婚も突然だったし……何か、あった?」


 鋭いベネトナシュの洞察力に驚き必死にごまかしていると、ミラが割って入ってきた。


「ベネトナシュ、人様の旦那さんに手を出したらダメだよ〜」

「ミラに……言われたくない」


 なにそれ〜とミラとベネトナシュが話をしているのを聞きながら、横目でアリエルを見つめていた。


「……また」

「う?」

「なになにどうしたの?」

「なんでもない! なんでもないぞ!」


 ヤバい、ベネトナシュの奴エルフばりに勘が鋭いんだな。気をつけないといけないな。




 そしてパーティーも終わり、明日からの旅行の事もある為、全員就寝時間前には寮部屋に戻っていった。




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