表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
56/212

決める道

「覗き見なんていくら神様とはいえ趣味悪いですよ〜」


 そう言いながらアリエルが俺にくっついてくる。ウェラがヤキモチでも妬かないか心配だったが顔を見ると目に涙が浮かばせている。


「サハラさん、アリエルさん、ごめんなさい……もっと早く気がついていれば」

「儂も悪かった。キャスやお前さんを見ていたせいか、異世界記憶保持者、レグルスを甘くみすぎておった……」


 大丈夫だなんて当然言えない。アリエルは死ぬのだから。だけどアリエルは謝ってくる2人の神に向かって首を振った。



「あたしの落ち度でもあるんです。これは洗脳されていたとはいえサハラさんを裏切った罰なんだと思います。

でも、こうしてサハラさんからプロポーズして貰って、結婚式で沢山の人に祝福されて夫婦になれて、十分幸せだから……しあわせ……だから……」

「アリエル、さん……」


 エラウェラリエルが申し訳なさそうに俯く。

 スネイヴィルスがそんなアリエルを見つめ、俺を見つめた後口を開いた。


「サハラよ、氷狼の精霊が言うのが確かなら、おそらくアリエルは持ってあとおそらく半年じゃ。じゃが、もう少しだけ延命することはできる」

「ほ、本当ですか!」

「と言ってもどれだけ持つかまでははっきり分からん」

「それでも良いです! それまでに治す方法が見つかるかもしれない!」



 スネイヴィルスはうーむと難しい顔をし、アリエルを見つめてくる。


「アリエルよ、そなたのマナを一般人のそれと同じかそれ以下まで落とす。麻薬とやらの影響をあまり受けていないお主は、それで延命は出来るが……戦えるだけの生命力はなくなるじゃろう」

「それだとあたし、サハラさんの足手まといにしかならないじゃないですか!」

「いや……寝たきりとまでは言わんが、付いて回るだけの体力はない。普通に暮らしていけるぐらいじゃろうな」


 アリエルがそれを聞いて絶句する。

 そして黙っていたエラウェラリエルが口を開いた。


「あともう一つだけ……あります」

「【魔法の神エラウェラリエル】、それは人の神として言うべきではないぞ」

「分かっています。ですが、私はサハラさんのためであれば、例え神を辞めさせられようとかまいません」


 真剣な表情のエラウェラリエルの顔を見て、やれやれといった顔を見せたスネイヴィルスが引き下がる。


「今ここで神が減られては困るからのぉ。

サハラよ、お主はどうやら世界にも愛されているようじゃしな」


 チラッとスネイヴィルスが俺の手……いや、指輪を見た。


 世界に愛されている? だって世界って創造神の事じゃ……まさか、な。


 俺は指につけている指環を見た。



「アリエルさん、聞いてのとおりこの方法は神は認めない手段です。ですが、確実に麻薬の影響は受け付けなくなります」


 アリエルがゴクッと生唾を飲む音が聞こえる。


「【魔法の神エラウェラリエル】、そんな言い方されちゃうと義理とは言え妹が可哀想だからやめてよねぇ」

「レイチェル!?」


 レイチェルが脱兎の如く俺に走り寄って抱きしめてくる。


「久しぶり私の寵愛するサハラ!」

「うお、やめろ! それにそんな気分じゃないんだ!」

「あ、そうだった。ゴメンなさい……」

「分かればいい。それよりその方法って何なんだ?」

「言ったでしょ、私の義妹って」

「それがどうし……!」

「そう、リリスちゃんにお願いして、ヴァンパイアに不死者の眷族になるの」


 アリエルをヴァンパイアに?


「サハラさん、不死者はマナを持ちません。つまり麻薬も効果はなくなります。そして、不死は変わらないので一緒にいられます。

これが私が思いつく唯一の手段です」

「アリエルがヴァンパイアに……」


 ヴァンパイアになればアリエルは生き続けられる。生きているという言い方はおかしいかもしれないが、少なくともいなくなることはなくなる。



「決めるのはアリエル自身じゃな。じゃが、ヴァンパイアになればゴッドハンドとしての資格は失われる事になるのは覚悟してもらうぞ」

「ちょっと【自然均衡の神スネイヴィルス】! 貴方だって元は人だったんでしょ! 少しはサハラとアリエルさんの気持ちもわかってあげたらどうなの! ん?」

「うぐっ……」


 おいおい、レイチェルの奴、序列第1のスネイヴィルスにそんな口聞いていいのかよ。


「そうです。人の気持ちも分からないで何が神ですか!」


 エラウェラリエルまで……


 アリエルを見ると自分の事で神同士が言い争っている姿を見て慌てているようだった。


「わかった、わかったわい! じゃがゴッドハンドに関してはどうしても無理なんじゃ。

ヴァンパイアになると生者ではなくなり、不死者の眷族になってしまうのじゃ。こればかりは儂でもどうにもならぬ」

「不死者って【死の神ルクリム】とは関係ないんですか?」


 俺はバルロッサ王の事を思い出し聞いてみた。

 それによると、アンデッドは確かに元は人だが、ヴァンパイアの真祖は別なのらしい。突如生まれた存在で一種の魔物のようなものなんだそうだ。

 そして【死の神ルクリム】は死んだ者の魂を輪廻に戻すのが役割であり、不死者とは無関係なのだそうだ。



「そうなるともう、アリエルとは繋がれなく……なるのか……」

「ですけど、一緒にはいられます」

「そうだよ、サハラのこの先を考えると側に誰かが居てあげないと心配だしね、ん?」


 そりゃ一体どういう事だよ。


 だけど決めるのはアリエルだ。俺はヴァンパイアになろうがアリエルを愛し続けるつもりだ。だが……



「あたしは……どちらも選びません。最後の瞬間までサハラさんの為に役立ちたい。それが叶わないのなら、今生き続けている意味が無いですから」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ