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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
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憤怒の力

 狂戦士化したアラスカはそのままフェンリルに向かって一気に攻撃に転じてくる。

 フェンリルはその攻撃をひょいひょいと躱し、チラチラどうするんだとばかりに俺を見てくる。


 チッ! 舌打ちをして立ち上がり、一気に間合いを詰めて背後から羽交い締めにする。アラスカは標的にしていたフェンリル以外からの不意の羽交い締めに暴れて引き剥がそうとしてきた。


「クソッ!」


 羽交い締めから正面に回り込み、アラスカを抱きしめ焦点の合っていないアラスカに顔を近づけて叫ぶ。


「戻って来いアラスカーー!」


 ピクッと反応を示すがすぐに暴れようとしてきたため、足を掛けて押し倒す形に倒れこんだ。


 ドサっと地面に倒れこんだ衝撃でアラスカが素に戻ったようで、状況を確認する様に首を左右に振っている。そして真上に押し倒されている形で俺の顔が真正面に見えると全てを思い出したように謝ってきた。



「も、申し訳ありません!マスたぁぁうぐっ!」


 マスターなど言わせるわけにはいかない。両手はアラスカの手を押さえているため、仕方がなく口で口を塞ぐしかなかった。


 うおおーー! わあぁぁ! きゃあぁぁ! と声が聞こえてきたが仕方がない、仕方がなかったんだ。

 ゆっくりと口を離すとアラスカがトロンとした目で俺を見てくる。


「落ち着いたか?」

「申し訳ありま……す、済まない迷惑をかけた」



 ホッとしてアラスカから離れて立ち上がり、手を差し出してアラスカを立たせる。

 引き上げた時ピキだかボキだか音がした気がしたが、言い訳を考えるので気にしている場合じゃない。


 立ち上がったがすっかり気が抜けきったアラスカが、「済まないが今日はここまで」とだけ言い残してフラフラと去っていってしまった。



 あとに残された俺たちは微妙な空気になってしまい、デノンやビクター、アリオト、ミラとモリスが俺を見て何か言いたげだったが、無言のままそれぞれの寮に帰っていった。



 俺とアリエルも寮部屋に向かい、2人きりになるとアリエルも何か言いたげに俺を見つめてくる。


「アリエル、あのな……」

「ねぇその腕、大丈夫なの?」

「あれは手が塞がっていて仕方なく……え?」

「そんなの見ていたからわかってるよ。それよりさ、その腕どう見てもマズイと思うんだけど……痛くないの?」



 アリエルに言われて自分の腕を見る。


「お!? おおぉぉぉおぉぉぉ!!」


 俺の腕がプラーンと折れていて、ありえない場所から歩く振動に合わせて揺れていた。


「い、痛ぇ! ヤバいぞアリエル、治療、治療してくれ!」


 アリエルに治療魔法をかけてもらい、痛みが消え、折れた腕が元どおりになった。


 部屋に戻り、フェンリルを交えて話し合う。


「アラスカの奴、狂戦士(バーサーカー)だった」

「見ていておかしいとは思った。だってアラスカさん凄い嬉々とした顔をさせながら攻撃してたもの」

「ああ、あれは一体どういうことなんだ?」

“サハラ、あれはたぶん憤怒(レイジ)だ”

憤怒(レイジ)? 何それ」

「バーバリアンとかが持っている憤怒(レイジ)の力の事か?」

「サハラさん知ってるの?」



 バーバリアンの持つ力、血脈だったと思う。戦いの最中にこの憤怒(レイジ)の力を解放することで、恐怖や不安などが消え去り、戦いに没頭できる様になるという。

 その昔、ウォーレンと言う蛮族の戦士がいたが、彼は憤怒(レイジ)を使った事はない。

 だが、過去の大戦に彼の部族が手助けをしてくれた時に一緒に戦い見た者は、口々にその猛る戦いぶりに仲間であることを忘れて恐怖したという話は耳にした。



“うむ、おそらくそれだ”


 俺の話に頷いてフェンリルが答えた。


「それはわかったけど、でもアラスカさんが憤怒(レイジ)を何で使えるの? 彼女の両親はセッターさんとエルフの母親でしょ?」


 そうなのだ。セッターは一緒に旅をしたからよくわかっているが、狂戦士(バーサーカー)ではない。となると母親が?


「エルフに蛮族は……いるのか?」

「少なくともあたしは知らないなぁ」



 こうなると直接本人に聞くしかないのだが……そもそも憤怒(レイジ)の力が7つ星の騎士になるための訓練をしてる最中に起きたりしなかったのだろうか? そしてこれはアラスカ本人に聞いていいものなのかだった。



「明日……聞くか?」

「う、うん。でもさそれよりも明日はサハラさん、きっと大変だと思うよ?」

「何でだ?」

「あたしはキスしちゃった理由わかってるけど、クラスのみんなは……」

“ウシャシャシャシャ”


 ボカッ!


“痛ー!”



 コンコンとノックする音が聞こえ、扉を開ければアラスカが来ていた。


「今日の事を謝りたくて来ました」


 そう言いながらもアラスカが俺と顔を合わせようとはしてこない。やはりキスした事だろう。



「アラスカさっきは咄嗟だったとはいえゴメン」

「あ、はい! いえ! こちらこそマスターにご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした!」


 シーン……俺もアラスカも黙り込んでしまう。助け舟を求める様にアリエルを見れば、ベッドに横たわり両肘をつきながらニマニマしながら見ている。


『んふふ、サハラさんがんばれ〜』

『うぐっ! あ、あとで覚えていろよ』

『その元気が残ってたらね』


 アリエルの奴は俺とアラスカのやり取りを観戦して楽しむつもりの様だ。

 どうしたらいい? いきなりこの雰囲気の状況で憤怒(レイジ)の事を持ち出すわけにはいかないだろう。



“アラスカ、憤怒(レイジ)の力をどうしてお前が持っているんだ?”


 そう思っていたというのに平然とその話題を持ち出す馬鹿な狼がここにいた。




本日分です。

後4話で書き溜めがぁぁ!

2つの物語を書くって大変なんですね……


読み切りの方の作品はやっと中盤あたり……なのかなぁ。

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