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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 学院生活とアリエル
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早い者勝ち

「キャーー! サハラさん大丈夫!?」


 意識が遠のき倒れかけたところをミラに支えられる。


「う……頭が……」


 そして俺を支えてくれたミラを見れば顔を赤くしながら、俺を覗き込んでじわじわ迫ってきた。


「ちょ! ミラ! 顔近い、近いってば!」

「はっ!」


 俺が慌てて言うとミラも慌てて顔を引っ込める。


「あはは、顔真っ青だったから大丈夫かなって……近づきすぎちゃったね」



 アリエルは何をしてるんだと見ると、未だに立ち直れていない様子だ。


 デノンは未だ爆笑し、それをビクターがいい加減にしろと止めていて、アリオトも悪いですよ〜とか言いながらも一緒に笑っている。

 そしてアリエルと同じようにドゥーぺは固まったまま俺とモリスを見つめ、アルナイルとエアロ王女はミラに抜け駆けだとか訳のわからない事を言って怒っている。

 そして唯一安定のベネトナシュは、口をアングリと開けて目を見開いているフェンリルを眺めて、珍しく口に手を添えて笑っていた。


 そして……俺をまっすぐ見つめ続けているモリス……何でこうなったんだ。



「すまんモリス、俺にはアリエルがいるんだ」

「分かってる。けどさ、この気持ち止められないんだよ!」



 それを聞いたデノンが「死ぬ! 俺を殺す気か!」と爆笑が止まらない。

 そしてついに、アリエルが立ち直り俺に抱きつくとモリスに向かって睨みつける。


「サハラさんは、あたしのものなの!」

「俺だって、負けねぇから!」


 もうわけが分からん……誰か助けてくれ。



 昼食の時間になり全員で食堂に行き、お盆に食べたいものを取るとテーブルに着く。

 俺の真正面にアリエルが座り、フェンリルが隣に座る。そして空いた俺の横に滑り込むようにエアロ王女より先にモリスが座った。


「へへへ、サハラさんの隣だぜ!」

「そこ私の場所です!」

「名前なんかついてないから早い者勝ちだろ?」

「うう……サハラ様ぁ」


 エアロ王女が泣きついてくるが、既にモリスは食事をし始めている。


「まぁ……仕方ないんじゃないか?」


 泣き落としが通じないとわかるとエアロ王女は諦めてモリスの横に座って食べ始めた。

 正直俺も好意を抱いている男のモリスよりはエアロ王女の方が遥かにマシではあるが、モリスが言うように席に名前が付いているわけじゃないため、退けとは言えなかった。


「サハラさん、これ美味いよ。ほら食べてみて」


 フォークに刺した物を口元に差し出してくる。それを俺に食えと言うのか?


「いや、食べたいものは自分で取ってきたからいいよ」

「そっかぁ……あっ! それ美味そう! 少しもらうね」


 フォークを伸ばして俺の食べ途中の料理を刺して奪うと口に頬張った。


 もうヤダ……




 そして食事を終えていつもの場所に座り込むと、いつものようにアリエル横に座り、反対側にモリスが座る。


「そこ私の場所です!」

「名前とかは無さそうだから、早い者勝ちだよな!」


 ここでもエアロ王女が言い負かされ、泣き出しそうな顔をし他のを見たアリエルが、ココいいよとどいてあげた。


「あ、ありがとうございます! でもアリエルさんはどこに座るんですか?」

「あたし? あたしなら……」


 そう言って俺にあぐらをかかせるとよいしょと座って寄りかかってきた。


「「あーーーー!」」


 エアロ王女とモリスが同時に叫ぶ。

 いい加減にしてくれと思った時、アルナイルがモリスの前にきて聞いてきた。



「モリス君なんでついこの間までサハラさんをあんなに敵視していたのにそんなに変わったんですか?」

「そ、それは……」


 そこでなぜ頬を染めながら俺を見る!



「サハラさんに、見てない、聞いてない、覚えていない、って約束したから言えないけど、サハラさんはな……とにかくめちゃくちゃ凄いんだぞ!

な? サハラさん!」


 そう言ってモリスの奴は俺に寄りかかってきた。



 聞いていた特Aクラスの生徒に加え、色目で俺を見て集まっていた一般の女子生徒達全員が、今のモリスの誤解をバリバリに生みそうな言葉に黙り込み、やがてヒソヒソし始めた。



 こ、コイツ、実はこうやって俺を貶めようとしてるんじゃないか!?

 このままじゃアリエルが魔法系統を習得しきるまでの俺の学院生活が、ただの変態野郎になっちまうじゃないか!


 そんな事を考えていると。



「ねぇサハラさん、なんか皆んな勝手に変な想像でもしてるみたいだね」


 アリエルがそう言ってあぐらの上に座りながら俺を見上げて首に腕を巻きつけてきた。


「あ、ああ……」


 俺の脳裏に変態のレッテルを貼られ、気持ち悪るがられる惨めな想像をしていたが、アリエルがそう言って見つめてくるのを見てハッとなる。


 そうだ、俺にはアリエルがいるじゃないか。たかだか1〜2年なんか今までの数十年、そして今後1,000年以上を思えば一瞬だ!


 そう思うと少し気が休まる。ありがとうなと思いながらアリエルを見ると腰をグニグニと動かしていて、しばらく続けられると思わず身体が勝手に反応してしまう。


「……っん、えへへ」

「ちょっとアリエルさん今の反応は何ですか!?」


 前回ここに座った経験からおそらく意味がわかっているエアロ王女がアリエルに問いただす。


「べっつにぃ〜?」


 そう言いつつも腰をグニグニしてくる。今更気がついたが、あぐらの上に座った時にアリエルは学院生ローブを広げて座っていたため、今の俺自身はズボン越しに下着に当たっている事になる。


 これはまたこれで妙な興奮を覚えてしまい、顔を赤らめながら見つめてくるアリエルを見て、そっと抱きしめてごまかす事にした。



「ズルい! サハラ様、明日は私がそこに座ります!」

「早い者勝ちだろ! 明日は俺がそこに座るんだ!」


 それを聞いていた他の女子達が何か思案する顔をしながら拳を握り締めて、口々に「早い者勝ち」とつぶやいていたように思う。



 なんとか妙な噂が立たなくなりそうだが、明日からこれはこれでまた大変そうだと俺は密かに思った。




定時更新分です。

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