キッス!
第4章スタートです。
翌日俺は布を切って作った細長いマフラー状のものを首に巻きつかせて特Aクラスに向かう。隣にくっついてくるアリエルはそれはそれはニッコニコだ。
「よぉ! サハラ、アリエル、昨日は見に行ったか?」
「私は感動しましたよ。まさか【魔法の神エラウェラリエル】様をこの目にできるとは!」
普段冷静な犬獣人のビクターが興奮気味に喋っていた。
クラスの他の生徒達も昨日の事で持ちきりだったのだが……
「あれ? サハラさん首に何を巻きつけているんですか?」
目ざとくアルナイルがマフラー風に巻いた首元に気がつかなくていいものに気がついた。
それを見たエアロ王女も不思議そうに見てくる。
「サハラ先輩首に何かあるんですか?」
「ない! ありません! 何もないから気にしないでください!」
「サハラさんそれって逆にあやしいよぉ?」
「ミラ……珍しく鋭い……」
「珍しいってどういう事よ!」
「怪我でもしたんですか? いや、それならアリエルさんが治療しているはずですね」
ドゥーぺまで余計な事を言ってくる。
しどろもどろになりながら、俺はオシャレでしょう? と誤魔化してみるがクラス全員から余計に怪しまれることになる。
隣で話を聞いているアリエルはクククッと含み笑いをしていやがった。
今夜覚えていろよ……
怪しまれつつも俺の鉄壁のガードによりなんとかマフラーを死守していると、学長が教室に入ってきてホッとする。
「今日は特Aクラスに移動してくる生徒がいます。皆んな知ってるかと思うけれど、仲良くしてあげるんだよ」
入っておいで〜って感じで呼ぶと扉が開かれ、ガラの悪そうだった以前と違い、しっかりとした雰囲気に変わったモリスが入ってきた。
しかし外見が多少変わったとはいえ、モリスがやらかした事は忘れられるものではなく、当然ざわつき出しデノンとエアロ王女は怪訝な顔になる。
「皆さん……」
そこでモリスが深々と頭を下げて謝ってくる。土下座と言うものがないこの世界だが、貴族である人物がここまで頭を下げて謝ることは土下座に相当するものだ。
それを見るとさすがに静まり返りモリスに注目する。
「俺が皆さんにしでかしたこと許されることではないと思っています。許してくれないのであればそれでも構いません。ただこのクラスで一緒に学ばせてください! 宜しくお願いします!」
静まり返る中、俺とアリエルだけが拍手する。
まさか1番許さないだろうと思われた俺とアリエルが拍手をしているのを見て、次第に1人また1人と拍手を送り、最終的には全員が拍手していた。
そしてそうなると今日の授業で学長がやる事と言えば当然……
「今日は親睦を深めてもらう為、授業は無しだよ」
じゃあねぇという感じでさっさと教室を出て行ってしまった。相変わらずいい加減な学長だ。
そして学長が去ると、いの一番にモリスは俺の元に来てお礼と謝罪をしてくる。しかもさん付けだ。
「えっと……謝罪はわかるけど……なんでお礼している……んですか?」
ベネトナシュの鋭い指摘にモリスがアッと口ごもる。
「あたし達が最初に拍手したから、かな?」
アリエルが機転をきかせていうとモリスもそうなんだ! と頷いて答えた。
モリス、10歳、髪の毛をしっかりとセットしているとショートボブのような金の髪型をしていて、目つきを治すと年相応に可愛らしくも見える中性的な整った顔立ちをしている。
そして終始俺にやたらと話しかけてきて、少しばかりウザったい。
「えっとモリス様? 君? 親睦を深めるように言われているんだから、サハラさんとばかり話してないでよ」
ミラがそう言うとモリスも謝って、他の皆んなとも話し始めた。
『アリエル、俺、なんか嫌な予感がするんだが……』
『何が?』
『モリスの奴何でこんなに俺に話しかけてくるんだ? しかもさん付けだ』
『多分あの時のサハラさんを見てあこがれたんじゃない?』
そうであってほしい……俺は本気でそう思った。
「とぉうりやぁー!」
俺が考え事をしている隙をついてデノンがふざけてマフラーを剥ぎ取りやがった。
「サハラさん……それって……」
見逃すことなくエアロ王女が俺の首に釘付けになる。その王女の言葉で皆んなが俺の首に集中し、そして全員が固まった。
「いや〜サハラ先輩とアリエルさんって本当に暑いねぇ。あれ? でも片方サイズとか違く見えるね」
そして空気を読まない馬鹿アリオトが余計な事に目ざとく気がついた。
キャーーーー、ウオォーーーとクラスが湧き出し、俺ではなくアリエルに詰め寄り出し、もう一つは誰がつけただ、浮気? だとか聞きたい放題に聞いている。
そんな中俺は見てしまう。モリスが俺を恨めしそうに睨んでいるのを……
そして、俺からアリエルの方に皆んなが集中している最中、モリスが俺に近づき……
キスをかましてきた……
慌てて引き剥がし、アリエルを囲っていた皆んなも俺とモリスを見て凍りついているようだった。そして今の今まで大人しくしていたフェンリルまで驚きのあまり口をアングリと開けて目を見開いている。
「ブファ! モリスお前いきなり何するんだ!」
「サハラさん! 俺、俺サハラさんの事が好きだーー!」
キャーーーー、ウオォーーー、ヒィとクラスが湧き出す。アリエルもさすがにこの展開が読めていなかったらしく、ブツブツと「サハラさんが男と、サハラさんが男と、サハラさんが男と」と目を白眼にさせていた。
「サハラは女だけじゃなく、ついに男までたらし込んだか!」
デノンが腹を抱えながら大爆笑する。
ウェラごめん……俺の口、侵されちゃった。
第4章開始です。
モリス君どうやらサハラに惚れてしまったようです。
この章は卒業までを描いていく予定のため長くなると思います。
ちなみに、前々から希望を聞いていますが、サハラが旅立つ際クラスから1人だけ一緒に同行させようかなと思っていますが、その希望を募集しています。
現状ベネトナシュに1票です。
そして、新たにモリスも同行可能メンバーに加えます。
ドゥーぺ、デノン、ビクター、アリオト、モリス、ミラ、ベネトナシュ、アルナイル
以上の8名が候補になっています。変更も受け付けますので、お気軽にお願いします。




