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処刑よりもキスマーク

 かなり神殿に長いこといたようで、俺が神殿を出る頃には既に昼前……モリスの処刑時間が迫っていた。


『アリエル何処だ?』


 返事が返ってこない、何かあったのかと心配になる。


『アリエル大丈夫か!? 何かあったのか!』


 そこで不覚にも背後から何者かが飛びかかってくるのに気がつくのに1テンポ遅れを取ってしまう。


「とぉおぅ!」


 ガシィッ! っと背後から飛びついてきた。


「ビックリした?」


 それは帰りの遅い俺を神殿の側で待っていたアリエルだった。俺の正面にクルッと回り込んで覗き込んでくる。



「ビックリした! 今俺が1テンポ遅れてなかったら下手したら手が出るところだったぞ?」

「そう思ってから飛びついたのよん。……って、んん!?」


 アリエルが目を見開いて俺を見てくる。イヤ、正確には首元あたりのように思う。


「へぇ〜、サハラさんちゃ〜んとエラウェラリエルさんとよろしくしてきたのね!」


 アリエルが目を細めて俺に冷たくそう言い放つ。なんのことか分からず首を傾げていると、公衆の面前にもかかわらずアリエルが俺の首筋にキスをしてきた。


「あ、アリエル、いきなり何してんだ!?」


 ちょっと強く吸われたような気がする。そして口を離すとニンマリと神殿の方を見た。


「これでおあいこなんだから」

「な、何が?」

「キスマークだよ!」


 げっ! マジ?


 確認したくても手鏡なんてものがないから確認できない。が、最後にウェラが抱きついてきた時を思い出した。


 あの、時か……



「サハラさん急ごう? もう直ぐ時間になっちゃうよ」


 何食わぬ顔でアリエルが言ってくる。


「アリエルって本当に相手が誰とでも張り合うな」

「言ったでしょ? あたしはサハラさん一筋だって」


 恥ずかしげもなくアリエルが言ってくる。ウェラと違い、アリエルはアリエルのこう言う体当たり的な所はまたそれはそれで可愛く思うし、つい意地悪をしたくもなるところだ。




 公開処刑場である広場に急ぐと、そこにはギロチン台に頭と両手を固定されモリスの姿があった。

 そして決闘のルールである、「5つ、代理人を立てた場合、敗者は直ちに身柄を拘束され、然るべく日にて公開処刑とする。」を読み上げられていた。



 モリスは騒ぐことはなく、ただ大人しく受入れようとグッと我慢している顔を見せていた。


 合図が出され、ギロチン台の上にある巨大な刃物が落とされたーー


 広場中から「ヒッ」などの声が上がる。俺ですら、ウェラがタイミングを見誤ったかと思ったほどだ。


 そして巨大な刃物が落ちきると思った次の瞬間、1人の女性……エラウェラリエルが姿を見せて巨大な刃物を切断されることなく片手で受け支えた。


 広場に見に来ていた観衆が何事が起こったのかと見守る中、立ち会っていたグランド女王が中央のギロチン台の側に立つエラウェラリエルの所まで来ると、本来女王が取るべきではない敬うお辞儀をする。

 広場に来ていた観衆達はただただ呆然とその光景を見つめていて、そんな観衆達に向かって女王が声を上げた。


「この度の決闘による処刑、此方に控える【魔法の神エラウェラリエル】様による御慈悲が下されました!

よって、フィリップ=モリスの処刑は女神の判断により中止とします!」


 そう声高々に言うと女王がチラッと俺の方を見て微笑んだ後、ギロチン台からモリスを降ろさせた。



 観衆達は突如現れた【魔法の神エラウェラリエル】を見つめ、ウィザードであるものは頭を下げて膝を着き祈りを上げるように、または「おおおぉぉお!」と感激する声が上がった。


 その当のエラウェラリエルはと言うとニコリと観衆達に笑顔を向けながら、俺とアリエルがいる方を見つめ……ほんの、ほんの一瞬だけピクッと片眉が動き、笑顔もひきつったように思ったが、気のせいということにしておいた。

 そしてエラウェラリエルが姿を消した後、アリエルが勝ち誇ったようにニンマリと俺を見てきた。



 王宮に向かいグランド女王の元へ行き、その後のモリスの話を聞かされる。

 それによると、モリスは牢屋に入れられている時に俺とアリエルが入ってきたことは一切話すことはなかったそうだ。そしてわざと女王が魔法で問いただそうと脅しもしてみたそうだが、驚いた事に舌を噛み切ろうとしたらしい。


「私もあの変わりようには驚きました。まるで悪魔に今まで憑依でもされていたのではないかと思うほどでしたよ」


 解放する時今後どうするのかも聞いてみたそうだが、このまま学院で学びたいことがあると言って、学院に戻っていったそうだ。とそこまで話したところで女王が俺に変な事を聞いてきた。


「ところでサハラ様、首のそれは……」

「はい!?」

「サイズから見て片方はアリエルさんのようですが……もう片方はもしや?」

「グランド女王、そ、それはどうでもいいことでしょう!?

と言うかそんなに目立ちますか?」

「まるで火傷でもしたかのように」


 そう言って微笑んできた。



 後で鏡で見て確認するまで首元を隠しておこう……


学院寮に戻るまで俺は、ローブのフードを首に巻きつかせるようにしながら帰った。



「なんじゃあこりゃあぁぁぁ!!」

「愛の証よん」


 アリエルとエラウェラリエルのつけたキスマークは、薄っすらではなくあからさまなぐらい赤くなって左右についていた……


 俺、明日学院でどうしよう……




第3章終わり。

第4章からちょっと危ない展開になる予感!


本当は明日はクリスマスイブ用の話でもと思いましたが……たいしたもの書けそうに無いので諦めました。


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