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キャビン魔道学院

 何を言っても引く気のなさそうなアラスカに諦めた俺達は、アラスカの同行を許可せざるを得なくなった。



 アラスカは7つ星の騎士としてキャビン魔道学院の捜査を名目に滞在することになり、俺とアリエルは通常通り入学する形で決まった。




 そんな訳でキャビン魔道王国に移動し、そこでアラスカとは分かれて行動することになる。


「前に一度来た事があるが、やっぱりデカイよなぁ」

「これ全部が学院の敷地なの!? 信じられない広さね」

“俺はもう喋らない方がいい?”

「そうだな、俺とアリエルだけの時にしてくれ」

“分かった”



 魔道学院前は入学希望者でごった返しになっている。簡単な入試のような小魔術(キャントリップ)が使えるかが入学の資格らしい。


 俺とアリエルが並んでいると順番になり、試験官の教師らしい人物が証明書の提示を求めてくる。


「名前はサハラさんですね。それでは小魔術(キャントリップ)を見せてください」


 俺は記憶してきた(ライト)の魔法を唱え、机に置かれた石ころを光らせた。


「はい、合格です。ん、その狼は氷狼ですか?」

「はい、俺の連れなんですが……」

「ペットの持ち込みは困りましたね」


 渋い顔を見せる。


「別に良いんじゃない?」

「これは学長!」


 試験官の背後から声が聞こえ、学長と呼ばれた人物が姿を見せる。聞き覚えのあるその軽い口調に慌てて顔を見たが、長身のエルフで全くの別人だった。

 だが……俺を見て片目をつぶってシーッとやってくる。正確には視線からアリエルのようだった。


『あれキャスさんね』


 気がついたアリエルが従属化した事で使える心の繋がりで話しかけてくる。


『やっぱりそうだよな。キャスの奴いないと思ったらこんな所で姿を変えて学長やってたのか』



 キャスとは過去に悪魔王と戦った英雄の1人で、俺と同じく神の代行者だ。本当の姿は18歳ぐらいだが、魔法で姿を変え、ここで学長として過ごしていたようだった。


「学長が許可をするのでしたら……」


 俺はこれで入学となり、続いてアリエルも普段しない詠唱をして同じ魔法を使い、無事入学になった。

 引き続いて、部屋割り等の説明を受けていると、学長(キャス)がまた白々しく声をかけてくる。


「貴方達は、恋人同士ですか?」


 部屋割り等の説明を受けていると学長がわざとらしく聞いてくる。


「はい」


 アリエルが答えると、悩んだふりをしながら説明をしていた教師に部屋を一緒にしてあげてはと言ってくれるのだが……


「それは流石に風紀的にまずいでしょう。それにもし他にもいたらどうなさるおつもりですか?」

「う、そっか」


『やっぱり無理そうだな』

『仕方がないよ。でもこうして会話は心を繋げれば出来るんだし我慢しよ』

『まあ、天才児ってのが男か女か分からないしちょうど良かったか?』

『うんー』



 そんな訳で俺はアリエルと別れ、フェンリルと共に向かおうとすると、学長(キャス)に呼び止められる。


「何でしょうか?が、く、ちょ、う?」

「何かなぁその意味深な言われ方は? とりあえず僕にちょっとついてきてもらえないかな?」


 学長(キャス)に連れられ学長室に向かう。部屋に入ると念入りに魔法でロックをかけ、誰も立ち入りできないようにしている。


「これで大丈夫。久しぶりだねサハラ!」

「ああ、まさか見かけないと思ったらこんな所で隠れて学長やってたのか」

“俺忘れてるぞ”

「ごめんごめん、フェンリルも久しぶり。

それと残念だけど違うよ。ここに学長として入ったのは実はつい1年前からで、理由はたぶんサハラと一緒だね」

「天才児か?」

「そう、今年入学するという事で僕は準備をしていたんだよ。ただ問題があって8歳児が3人もいたんだ」

「特定は出来ていないわけか、それで?」

「うん、ほぼ間違いなく転生者だね」

「言い切ったな。根拠は何なんだ?」

「これさ」


 そう言って見せてきたのは、何の変哲も無い平らな石が表裏に白と黒で色分けされている。


「リバーシか」

「うん」


 実は俺もキャスも元々この世界の人じゃ無い。キャスは転生で俺は転移して来た過去を持つ。その為リバーシを知っているのだが……


「創造神には会ってないから、どう対処すべきか、だな」

「忘れてないかなぁ? この国はエラウェラリエルさんのお膝元だよ?」

「サハラさん、お久しぶりですね」

「ウェラ!」


 と、突然1人のエルフの女性が姿を見せる。

 ウェラとは愛称で、正式にはエラウェラリエルと言って、とある理由から【魔法の神】になった、元俺の恋人だ。いや、今もか。

 キャビン魔道王国はウィザードの国の為、【魔法の神エラウェラリエル】の神殿があり信仰も根強い。


「創造神様から伝達です。

神々は今、神威を高めるのでいっぱいで監視している余裕が無いので、もしも転生者であるなら、期を見計らってサハラがいずれかの神殿に連れてくるように。また、勝手な創造は辞めさせるように。

という事です」

「やっぱりそうだよな。でもいきなり会って、神の代行者だから創造は辞めろはおかしいよなぁ」

「なら僕が最初に注意するよ」

「それがいいかもしれないな。後はどんな奴かってとこか。

それとウェラ、神威の方はどうだ?」

「キャビン魔道王国のお陰でそこそこあがっています。ただ、前任のアルトシーム様のように魔力が私は強くなくて……」

「でも、高速詠唱できるんだよね!」

「ええ、それだけが取り柄かしら」


 久しぶりに話をしながら、俺はウェラの手に触れようとする。


「サーハーラー! ちょーっと用があって来たら何【魔法の神エラウェラリエル】に手を出そうとしてるのかなぁ?」

「うおっ! レイチェルじゃないか! なんで?」

「なんで? じゃ無いでしょう。創造神様の伝言を伝えに来たと思ったら、神に手を出そうとしてる輩がいて放っておけなかっただけよ!」



 レイチェル、元マルボロ王国の英雄の1人マルスの王妃だった人物で、俺とは旅の仲間だった。それが今では【愛と美の女神レイチェル】として存在している。


「あはは、相変わらずってところかな? レイチェルさん久しぶりだね」

「うん、キャスは凄く久しぶりだよね、ん?」

「ゴメン〜」

「うううん、私、1番最後だったからキャスの気持ち、少し分かるからいいよ。

それでなんだけど、私は【魔法の神エラウェラリエル】の伝言に加えて頼まれたんだけど……

もし、転生者が言う事を聞けないようであれば強制的に死極に送る、だそうよ……」


 まぁそうだろうな。創造神の創造し得ないものを作り出されて、もし世界のバランスを崩されたりでもしたらかなわないからな。

 重火器は無理だとしても、知識があれば爆弾は作れなくも無い。


「今じゃ俺もすっかりこの世界の人間だと思っている、だからもしそうなったとしても仕方がない事だと思えるよ」

「じゃあ伝えたからね。私早く戻らないと私の事を信仰している人達が困るから」

「おう、久しぶりに会えて嬉しかったよ」



 顔を真っ赤にさせて俺を見ると何故か溜息をつく。


「ルーねえ様、カイねえ様、【魔法の神エラウェラリエル】ゴメンなさい。

サハラ、【愛と美の女神レイチェル】は貴方を寵愛します! じゃあね!」


 言うだけ言うとレイチェルはさっさと姿を消してしまう。


「ああっ! 【愛と美の女神レイチェル】ズルい! サハラさん、私だって貴方を寵愛します! していましたから!」


 ウェラも叫ぶように言うと顔を真っ赤にさせながら消えていった。




「なぁキャス、今一体何が起こったんだ?」

「……さぁ、ただ僕が分かるのはサハラがモテモテって事だね」

“ウシャシャシャシャ”


 ボカッ!


“あ痛ーっ!”


本日あと1話更新予定です。

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