恋人寮
第2章はじまりです。
長期休日が明け、俺達は今キャビン魔道学院の寮に居る。
レグルスの事件のことがあり、休日が3日延長され、バタついたがやっと明日から授業開始となる。
「まぁ、これだけは、レグルスに感謝だな」
「そうだ、ね。あんっ!」
とまぁイチャコラしているわけだが、あの事件以来、寮に変更がすぐに行われ、男性寮、女性寮に加え、恋人寮が出来たのだ。
とは言っても表沙汰に恋人ですという人がほとんどいないため、部屋の空き数が少しばかり目立つようだ。
「ねぇサハラさん、何でこんなにいっぱいいろいろあるわけ?」
俺が気に入ったものがあればアリエルにあげようと思い、鞄から取り出して見せていた。中には入手困難なスケスケのネグリジェやブラにパンツまである。
一般的な色気の無い、布を巻いたようなブラにふんどしのような下着姿で、部屋をうろつきながら服を物色するアリエルをガン見しながら答えた。
「それな、俺が女体化してだんだん精神も女性化し始めた頃に、自分で集めだしてたものなんだよ。後はアリエルと出会ってからのものだな」
「へぇ〜、あ! これってマルボロ王国の侍女長服だよね? ね、着てみてもいい?」
「襲いかかられてもいいならいいぞ?」
「えへへ〜、いいよ!」
“サハラひま”
「後で訓練場で走るか?」
“犬じゃないし”
「じゃあ希望言ってみろよ」
“肉!”
「それは朝昼晩3食しっかり食べてるだろ」
フェンリルとくだらない会話をしている間にアリエルが着替え終わったようで、俺に見せてくる。
「どう? じゃなかった。如何ですか?」
アリエルがギクシャクと慣れないお辞儀をしてみせる。
「うん、似合ってるよ」
侍女長服姿のアリエルを抱き寄せる。
“またか”
なぜまだ学院に残っているのかというと、レグルスはまだ8歳だ。恐らくこの世界を自由に行動出来るようになる15歳までは、見つからない場所で暮らしているんだろうと踏んでいる。
だとするならば俺はともかく、アリエルは魔法も使えるようになっておいた方が良いだろうという事でそのまま居ることになったわけだ。
グランド女王とはあれからは会っていない。アダーラ達を何とかしようとあれこれしているようだ。
キャスの方は今回の事件により学院での方針を各系統教師と話し合って変更するところは変えていっているようだ。その一つがこの恋人寮だ。
夕飯時になり食堂へアリエルとフェンリルを連れて行く。
アリエルと向かい合わせにテーブルに着き、横にフェンリルが座るには小さな椅子に、プルプルしながらお座りをしている姿はこの3日で見慣れた光景となり、他の生徒達もそこまで気にして見なくなった。
「よ! ご両人相変わらず仲が良いねぇ」
「デノンさん、そういう言い方は良くないですよ」
「ビクターさん、俺は別に気にしませんよ?」
「見えない所でもっと仲良くしてるもんね?」
「あ、あ、あぁぁぁぁぁぁあ! 羨ましいなぁぁぁぁ!」
気づけば、俺の正面にアリエル、横にフェンリル。反対にデノンとビクターが並んで座り、その正面にドゥーぺとアリオトが、フェンリルの横にはいつの間にかベネトナシュが座って、肉を分けてあげている。そしてベネトナシュの正面にミラとアルナイルも来て賑わいを見せているのも、この3日で当たり前の光景になっていた。
「飯食ったら皆んなでサハラとアリエルさんの愛の巣でも見に行くか?」
「ヤラシイわよデノさん」
「じゃあミラは見たく無いのか?」
「そ、そりゃまぁ、少しは? って馬鹿なこと言わせないでよ!」
そしてここも変わったところの一つで、就寝時間までの間なら、寮を自由に動いて良くなった。
「私達行ったらご迷惑にならないですか?」
「じゃあアルナイルは来ないっと」
「わわわ、行きます、行きますよ」
「つーことで、アリエルさん邪魔するよ」
「別に良いわよ?」
「おお? 余裕だな。よし! アリオト、部屋の散策するぞ」
「僕まで巻き込まないでくださいよデノ先輩」
そんな訳で俺とアリエルの愛の巣じゃない、恋人寮の部屋に移動する。
さすがに9名集まると手狭にはなるが、入れないことも無い。
「何も無いですけどどうぞ」
全員が中に入って行く。この時俺は重大なことを忘れていた。
雰囲気がガラッと変わりました。
一応学園モノになるんでしょうかね?
あまり長く続ける気はありませんが……




