代行者に対抗できる者
アリエルの業火によってレグルスは炎に包まれ……なかった。
レグルスの体が遥か後方に吹っ飛び逃れた様だった。そしてレグルスの横に金色の目をした男が立っている。
即座に悪魔だと気がつく。そしてその時『神の代行者に対抗出来る者の捜索だ』と言った事を思い出した。
「レグルス、生きたいか?」
「生きたい、生きたい!」
「ならばレフィクル様に忠誠を誓うか?」
ここで普通なら誓うとすぐに言うのだろう。しかしレグルスは言わなかった。相手を観察しニヤリと笑みを浮かべる。
「嫌だね。俺は誰かに仕える気はない。俺は俺のやりたい様に生きる」
「いい答え……だ……」
逃すわけにはいかない。縮地法で移動し、金色の目をした男の首目掛けて手刀を繰り出し首を刎ねた。
だが、それと同時にレグルスの姿が薄くなって消えていく。
「次元間移動拘束!」
アリエルが神聖魔法を使って移動を妨げようとする。詠唱の必要なグランド女王も遅れて使うが、あと一歩のところで間に合わず、レグルスは何処かに消えていってしまった。
「クソッ! あいつらが探している相手がレグルスだったのか!」
「どういうことですの?」
魔道兵もいるため、俺は黙り込む。
「そうですわね、ひとまず王宮に戻りましょうか」
グランド女王は魔道兵にアダーラやサルガス達を捕らえてくるように命令を出し、俺たちは王宮に戻った。
「俺たちが悪魔と戦っているのは知っての通りだと思いますが、彼奴らが死極の門の鍵を探しているのと同時に、神の代行者に対抗出来る者の捜索をしていたんです。
まさかその対抗できる者がレグルスだったとは……」
「アラスカさん緊急事態よ。直ちに本部に戻って7つ星の騎士団総出で探してちょうだい」
「それはサハラ様の総意ですね?」
「そうだな、頼む」
分かりましたと言うと足早に去っていこうとする。が、一旦足を止め俺にこう言ってきた。
「私はすぐに戻ります」
それだけ言うと出て行った。
「本当におモテになりますわね」
「は?」
別にそういう意味じゃないだろ。
アリエルを見れば素に戻ったのか、あの時叫んだことで顔を真っ赤にしながら「あたしなんてことを……」と言い続けている。
しばらくしてアダーラ、サルガス、ウェズン、シャウラが連れてこられる。
もちろん俺達は隠れて姿を見せていない。
学長が一人一人の目を見ながら、女王が手渡した麻薬である黒い塊を見せると4人は一斉に欲しがっていた。
「重症だなぁ……」
戻ってきたキャスがそう言ってくる。キャスが言うにはもう焦点が定まってないらしく、確実に廃人の道に向かっているという。
「一応治療魔法を試していくしかないんだけど、現状だと元に戻せるかどうか……」
「そうか……アリエルはどうなんだ?」
「アリエルさんは回数が少ないから、これ以上手を出さなければ大丈夫だと思うとしか……」
4人は極めてまずい状況らしく、王宮で内密に研究していくという形で決まり、学院の方はとりあえず退学という形になってしまった。
またレグルスは7つ星の騎士団によって、すぐに広まるだろうからということで、指名手配されることになった。
グランド女王はレグルスを捕らえられず、逃げられたことにショックを隠しきれず、レグルスと悪魔を酷く憎んだことは言うまでもない。
「エアロゴメンなさい。母は失敗をしてしまいましたわ」
と言うことらしい。
そして俺達は……
「アリエル、アリエルは頭のてっぺんから足の先まで全部俺の物なんだろう?」
「はう! ……う、うん、そうだよ。
だから、いつでも……召し上がれ?」
イチャコラしていた。
ドアがノックされ返事を待たずに開けはなたれる。アラスカが立っていて、俺とアリエルが服は着ているがベタベタしていたのを見ると、顔を赤くしつつも咳払いをしてからドカドカ部屋に入ってくる。
「サハラ様報告します! 7つ星の騎士団はサハラ様の手助けを最優先事項となり、各地に捜索が開始され始めました!」
俺が離れようとするがアリエルがへばりついたままなため、そのまま礼を言う。
「す、すみません、アリエルが離れてくれなくて。それでアラスカさんは今後どうするつもりですか?」
「私ですか? もちろんサハラ様に同行させていただきます!」
まぁそう言っていたもんね。
床に寝そべって話を聞いていたフェンリルが我慢しきれなくなったようだ。
“ウシャシャシャシャ”
「な! やはり今、その狼笑いましたよね!? 見ましたよね!?」
「「気のせいです」」
こうしてレグルスを逃してしまうことになり、危険自体は終わっていない。
代行者に対抗できる者……現状だと洗脳に長け、麻薬を作り出せる転生者レグルス。他にもどういった知識があるのか不明だが、分かったことは、あいつの前世は間違いなくやばい奴だったんだろう。
第1章はこれで終わりになります。
第2章からガラッと変わる……かも?




