エピローグ
今まで読んでくれてありがとうございました。
「ねぇ、結局さ悪魔の言っていたサハラさんに対抗できる存在って、レグルスで良かったのよね?」
「どうだろうなぁ、でも十分辛い目にあったのは確かだったな」
「アリエルもサハラさんも、こんな時にそんな話をしなくたっていいと思いますよ!」
そう、俺達の前には今、超巨大なゾウのような魔物が迫っている。
「ははは、ごめんごめん。 でもウェラ、心配する必要は全くなさそうだよ」
俺達のいる場所より少し前方を見ると、氷の世界でより際立って目立つ燃えるような真っ赤な髪の女性と、景色と同化してしまいそうな真っ白い毛皮に覆われた狼の姿がある。
そして……ん、あれ? セーラムはどこだ?
シャコッとリストブレードを伸ばした赤帝竜が、目の前に迫る魔物を切り刻もうと嬉々とした表情を浮かべている。
「あれは我の獲物だからな!」
“ズルいぞ! 早い者勝ちだ!”
ルースミアとフェンリルが奪い合おうとしている相手はマストドンと言って、所謂マンモスだ。 表皮は厚く、体毛がぼうぼうに覆われ巨大な牙が2本生えている。
そしてフェンリル曰く、肉は非常に美味なんだそうだ。
「とぉおぅ!」
それを電光石火の紡いだ槍の投擲の一撃でセーラムが仕留める。
姿が見えないと思ったらいつの間にか飛行していたようだ。
「とぉったあぁぁぁ!」
「小娘、お痛が過ぎるぞ!!」
“反則だ! インチキだ!”
俺達は今、フェンリルの故郷である北の氷に覆われた大地にいる。
ルースミアとヴァリュームを出てから神界に戻っていたウェラはとはすぐに会えたが、アリエルと再会するまでが結構大変だった。 まぁその話は長くなるからいずれ……
そして以前約束した通り冒険に出ているところなわけだが、世界の守護者である俺に【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者のアリエル、【魔法の神エラウェラリエル】、赤帝竜、英雄にしてセーラム女帝国の女帝セーラム、そして氷の最上位精霊のフェンリルともなれば、もはや冒険などではなくただの家族旅行でしかない。
「ねぇー! 皆んなで食べよー?」
倒した獲物のとこから振り返り、セーラムが大声で叫び、ルースミアとフェンリルが黙りこむ。
「私達家族でしょー?」
「う、うむ、我も、さ、最初からそのつもりだったぞ」
“お、俺、俺だってそう思ってた!”
後ろからそのやり取りを見てアリエル、エラウェラリエルが微笑みながら見つめている。
……家族かぁ。
嫁さん3人に娘が1人、それと喋るペットってところか?
どんなリア充だよ俺は。
その後、広大な氷の大地を彷徨うように冒険し、西の大森林の方にでも場所を変えようとした時だった。
突然俺達の前に慌てた様子で【自然均衡の神スネイヴィルス】が姿を見せる。
「サハラよ、新たな転生者らしき人物が現れたようじゃ。 我らも注視してはいるが、其方にも任せたいと創造神様からのお達しじゃ」
俺達はお互い顔を見合わせ、やれやれといった顔を見せる。 どうやら家族旅行はここまでのようだ。
「わかりました、それでその転生者らしき人物の見当はついているんですよね」
「うむ……それが実はな……」
マジスカ!
俺の旅はまだまだ続くが、ここでひとまず終わりになる。 強大になりすぎた俺の力を必要となるその日まで、この世界を見守るのが役割だ。
俺がやってきたことは今後はアリエルが引き継ぐ、キャスと代行者としての役割を果たしていくことだろう。
ーーーFin
今までお付き合いいただきありがとうございました。
いかにも続くような終わり方にしていますが、次回作は以前にも書いていた通り『狂王レフィクル』を書き上げ次第、一気に上げていくつもりです。
そしてその後はしばらくお休みをいただき、ほぼ続編のような話を始める予定です。
ほぼ続編のようなというのはこの話でサハラの主役としてのサハラは終わり、世界の守護者としてその後の物語に登場する形になっていくためです。
なお、『狂王レフィクル』の後はタイトル未定になりますが、マルボロの王女の物語になる予定でいます。
今回それぞれの登場人物のその後を描きませんでしたが、マルボロの王女の物語で全員ではないと思いますが明かされていく予定です。
あとがきらしいものは既に書いたので、しばらく間はあきますが……
次回作予定
『狂王レフィクル』
『マルボロ王国の王女ララノア』
を予定しています。




