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妖竜宿(シェイディドラゴンイン)へ

 町の中央に位置する場所にある大きな宿屋である妖竜宿(シェイディドラゴンイン)が見えてくる。


 見えるに従い、【闘争の神レフィクル】以外の神々の顔色がみるみるうちに悪くなっていく。


 妖竜宿(シェイディドラゴンイン)に近づくとさもお待ちしておりましたとでも言わんばかりにシャリーがおっとりと立って待っていた。



「やっぱり貴女は全て知っていたみたいね」

「うふふっ、なんのことかしらぁ?

それよりアリエルさんよかったですわねぇ。 それと無銭飲食をなさろうとした神々の方々とぉ、元狂王様とその御一行様方、それとノーマ領主様まで」


 ただそれだけシャリーは言っただけだが、目の前に立つ底知れぬ存在に【闘争の神レフィクル】は生まれて初めて恐怖を感じていた。



「ひとまず宿の方へいらしてくださいませぇ。 もちろん何かご注文はなさってくださいねぇ。 無銭飲食は……殺しますわよぉ」


 神々は冷たいものを感じながらも妖竜宿(シェイディドラゴンイン)に入り込み、慣れた足取りでアリエル達は入っていった。





「いらっしゃ……いいぃぃぃい!? あ、アリエルさん!?」

「シア久しぶりね。その姿にはもう慣れた?」

「え、えーと……はい!」


 最初こそ驚いたシアであったが、この妖竜宿(シェイディドラゴンイン)の超不自然空間で働くシアは既に不可思議な事に慣れきっていた様だった。



「あの、サハラさんは……」


 いつも先頭に立って歩いているはずのサハラの姿が見えず、シアが尋ねるとアリエルが黙り込む。 代わりに赤帝竜(ルースミア)がゼロを指し示した。

 何かを察した様にシアはゼロを見つめたあと、小走りに厨房の方へ引き返してしまう。



「とりあえず注文をしなくてはいかんらしいのじゃが、儂等は文無しじゃ」

「ノーマよ、わかっているな」

「はっ! 今日のここのお代は我輩の奢りなのである! なんでも頼むといいのである!」




 全員が注文を頼み少ししたところでシャリーが姿を見せた。



「戦争でお客様はほとんどいらっしゃらないから、今の時間は貸切にしておきましたわぁ。

それで今日は皆様お揃いでいらした理由は、サハラ()、ですわねぇ」


 ハッとした顔をアリエルとセーラムが見せる。 以前までシャリーはサハラをサハラ王様といつも呼んでいた。 それが今はサハラ様に変わっていたからだった。



「シャリーさん、お願いします。 なんとかサハラさんを助けてもらえませんか!」


 我慢できなくなったアリエルが叫ぶ様にお願いする。 この場所を指定したのも実はアリエルの中で、シャリーならもしかしたらなんとかできるかもしれないという思いもあったからだった。

 【魔法の神エラウェラリエル】も頭を下げ、信じられない事に大惨事(カタストロフィ)の象徴とまで言われる赤帝竜(ルースミア)までもが頭を下げた。


 だがそれもシャリーの滅多に見せない難しそうな顔を見てアリエル自身の考えの甘さに気がつかされる。



 その沈黙を破った人物がいた。



「どうでもいいけど俺は一体どうなるんだよ。 それに揃いも揃って酒場風情の女主人なんかに何頭下げてんだ?」


 テーブルに肩肘をつき、レグルスから見れば皆んなから惜しまれるサハラの存在がうざったかっただけなのかもしれない。

 だが酒場風情の女主人、たったその一言が間違いだった。 一瞬にしてシャリー以外のその場にいる全員が凍りつく。



「その子の面倒は私が見てあげますわ。 その条件で彫像は預かりましょう。 それでどうかしら?」


 どう? とでも言う様にシャリーが全員を見回す。

 【自然均衡の神スネイヴィルス】が願ったり叶ったりとでもいうのか即答で首だけをコクコクと頷いて答える。 人種の神々、いや赤帝竜(ルースミア)ですら逆らわぬシャリーであれば、一番任せて安全だろうと思ったのもあるが、それ以上に今もおっとりと笑顔を見せているシャリーのこめかみに浮かんだ青筋を見て、拒否は出来なかった。



 それではぁとニッコリとシャリーが笑顔で会釈をすると、ナータスがあれほど必死になって持ち歩いていた動かなくなったゼロの彫像を軽々と抱えてシャリーが立ち去っていく。



“俺はサハラと契約破棄なんてしない。 ここでお別れだ”


 フェンリルがブリーズ=アルジャントリーからピアスを奪う様に口に咥え、サハラに渡された鞄を赤帝竜(ルースミア)に渡すとシャリーの後を追っていく。 その姿はまさに主人思いの忠犬の様だった。



「それでは儂等も戻るとするかのぉ」


 立ち上がりシャリーがいなくなった今がチャンスとばかりに【自然均衡の神スネイヴィルス】が出て行こうとする。



「俺はどうなんだよ! 約束は守れよ」

「安心せい、シャリー殿がお主の面倒を見てくれる」


 あとは知らんとでも言わんばかりに【魔法の神エラウェラリエル】と【闘争の神レフィクル】以外の神々は逃げる様に妖竜宿(シェイディドラゴンイン)を立ち去っていく。



「あなた……レフィクル様、私達も……」


 気を使いラーネッドが出ましょうと連れ出そうとする。



「ふむ、ノーマよ金を置いていけ」

「ハハッ!」


 【闘争の神レフィクル】達も妖竜宿(シェイディドラゴンイン)を去っていき、残されたのはアリエルと赤帝竜(ルースミア)と【魔法の神エラウェラリエル】、不死王、ブリーズ=アルジャントリー、セーラム、イフリートそしてレグルスだけになった。




次話は明日更新します。


なお、最終確認中ですが書き終わりました!

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