打つ手なし
本日後ほどもう1話更新させます。
サハラがゼロとまた打ち合っている最中、【自然均衡の神スネイヴィルス】は落ち着きながらも急かす様にレグルスに真実を言う様に問いただした。
そしてレグルスがニークアヴォ達と共にゼロを封印から解放した時の事を話し始める。
ゼロの封印された場所まで行ったレグルス達がゼロを封印から解放すると、まだ何の力を持っていないゼロは3人を見つめ、産まれたてのヒヨコのように大人しくついて歩き、ニークアヴォの都合のいいように聞いているのかわからないゼロに話しかけていく。
つまり無知な段階でしつけを施していった様だった。
急ぎだったため、必要最低限の事を教えるとゼロにレグルスの使う爆弾やらの弱めたものを投げつけ、あらかじめ未知の攻撃に対する抵抗を与え、最終的には爆弾やらを耐えるだけの抵抗を身につけさせた。
「あとは戦っていれば強くなるとニークアヴォは言ったんだ。 そして俺がもし捕まった時の対処も教わっていた」
期待していた唯一の武器が使えなくされていた事を知り、【魔法の神エラウェラリエル】が愕然とし崩れる様に座り込んでしまう。
「我の覚えた魔法ならどうだ?」
今度は赤帝竜がそう言い放つ。
「ティルト何とかですか?」
「うむ」
「でもサハラさんがきっと怒りますよ」
「かもしれん。 だが我もな、サハラがいなくなる方が耐えられん」
「そうね……それじゃあ3人の共犯って事にしちゃいましょ!」
何の話かわからない神々が首をひねっている中、アリエルがサハラに叫ぶ様に声をかけた。
「サハラさん! 赤帝竜が今から魔法を使います!
……風を感じたらすぐに離れてください!」
俺がゼロの攻撃を捌いているとアリエルの声が聞こえてきた。
魔法なんか使ったらゼロが模倣するのではないか? と聞き返す間もなく、言われた様に風を感じる。
慌ててその場から縮地法で距離をとった直後、物凄い爆風がゼロを襲った。
その爆風だけで辺りが粉砕されていく。 次いで再度衝撃波と爆風を発生させ、粉砕されなかったものは炭化していて触れれば崩れそうな姿に成り果てた。
上空にキノコのような煙が立ち上がり、スゥッと何かに吸い込まれるように消えていく。
「これはまさか……」
俺の知る中で思いつくのは、この世界にはない、とあるゲームの魔法使い最強の核融合爆発の魔法だ。 もちろん見た事がないが、映像による核爆弾を目の当たりにした様なものからそうだろうと思った。
振り返ってルースミア、アリエル、エラウェラリエルを見る。 3人共俺に申し訳なさそうな顔を向けている。
思い返せば、俺の世界に来て3人はしょっちゅうルールブックを見ていた。 ただ興味があってだとばかり思っていたが、まさか使うためだとは夢にも思っていなかった。
そのとんでもない威力にこの場にいた全員が息を飲み、恐怖したことだろう。
「ゼロを倒したか!?」
煙が晴れていき、中央……爆心地にポツンと黒焦げた人型が佇んでいる。 もちろんゼロだ。
息を呑んで見守る中、全員の期待を裏切る様にゼロがゆっくりと動き出した。
「やっぱ、倒せるわけがないよな……」
俺はボソッとつぶやく。
赤帝竜の事はドラゴンのくくりでモンスターデータを見ていなかったが、やはり最強のモンスターデータを見ると言うのは普通興味本位でしておくものだ。
そして名前こそ違うがゼロと同じ意味を成すモンスターデータは存在していて、どういう奴かは知っていた。
モンスター名確かは『虚無』、ゼロと違い本来は固定された姿もない設定のはずだ。 神々の頂点に立つ創造神の対極に位置するため、倒すことは不可能としっかりと規定されているチートモンスターだ。 ではどうするかというと方法も書かれてあり、1つが宇宙空間のような何もない場所まで連れ出して漂わせる。 2つめが創造神の力による助力を得て封印するしかない。
つまり模倣させないようにして放置するしかないのだ。
神々……特に【自然均衡の神スネイヴィルス】が済まなそうに俺を見つめてくる。
「サハラさんダメです! 他に方法があるかもしれないじゃないですか!」
「そうだ! サハラ、主が負うべき理由はないぞ!」
「サハラさんせっかく戻ってこれたのに……私を置いていかないで……」
心を揺さぶる様な事を3人が言ってくる。
ブリーズ=アルジャントリーやセーラム、金竜、その息子のオル、俺がこの世界で出会ってきた仲間や手助けしてくれた全員が首をイヤイヤと振っていた。
「ここには今いないけど、キャスも、そこのレグルスだって転生してこの世界に入り込んだ。
だけど俺はさ、転移してこの世界に入り込んだ唯一のイレギュラーな存在なんだよ」
チラとゼロを見ると炭とかした表皮にあたる部分を気にしている様で、汚れを叩いて落としている。
そんなもん気にしてんなよ……
覚悟を決めると3人の前に行く。
「3人共この間話した冒険話は悪いがもう少し延期になりそうだ」
引き止めようとする手を振り払うようにブリーズ=アルジャントリーの元へ行きピアスを外して手渡す。
「アル、こいつを預かっていてくれないか? そうだな全てが終わった時にするって約束したデートの時に返してくれればいい」
俺はブリーズ=アルジャントリーの返事を待たずに手のひらに掴ませ、最後にセーラムの前まで行く。
「セーラム、ちょっくらパパは世界を救いに行ってくるよ」
ぶわっとめに涙を浮かべて近寄ろうとしたが、縮地法で距離をとった。 今誰かに触れられたりしたら決心が鈍りそうだったからだ。
“サハラ……”
“ここでお別れなのか?”
「今までありがとうな。 2人共契約解除してくれ」
これは必要なくなるか?
フェンリルに俺の鞄をかけてやり、後でルースミアに渡す様に頼む。
そのまま振り返らず、鞄も手放し杖1本だけを持ち、ゼロに向かって最後の戦いを挑みに向かった。
後ほど更新する話で第15章のラストになります。
そして第15章の次は遂に最終章に入ります。




