カタストロフィ
急遽明日明後日の更新が出来なくなりましたので、本日明日明後日分の更新します。
門を抜けた赤帝竜が目にした光景は、全て消滅したと思われた種類様々な悪鬼達の姿が町中を闊歩する姿だった。
その中には当然グレーターデーモンの姿もあり、以前サハラが……サーラが戦った事のあるエリニュスやハマトラに似通った悪鬼達の姿もあった。
最後に門をくぐってきた【魔法の神エラウェラリエル】が慌てて門を閉じる。
「なんてことじゃ……」
「こんな数相手になんて……」
【自然均衡の神スネイヴィルス】と【魔法の神エラウェラリエル】が危機感を感じている中、最初に姿を見せた赤帝竜は違い、既に1匹の悪鬼に絡まれていた。
“お前は敵か? それとも味方の奴か?”
赤帝竜がどうするとばかりに背後に立つ2神に振り返った時だ。
“なんだぁこりゃぁ?”
赤帝竜が腰にぶら下げていたネズミーマウスのキーホルダーをブチリと音をさせて悪鬼が引きちぎった。
その音と引っ張られた感覚で赤帝竜が腰に目をやるとキーの部分だけが残り、悪鬼の手にネズミーマウスが握られていた。
しかもよく見ると頭の部分がほつれて綿が飛び出している。
「……貴様らはやるべき事をやってこい。
我はここで少しばかりやる事ができた」
ふるふると震えながら赤帝竜が背中を向けたまま2神に言う。
【自然均衡の神スネイヴィルス】が【魔法の神エラウェラリエル】にどうするという様に見つめると、青ざめた顔をさせながら【自然均衡の神スネイヴィルス】のローブを引っ張り早く行きましょうと小声で訴えていた。
「そうであった……エラウェラリエル、コイツは……持っておいてくれ。 後でサハラに怒られたくない」
赤帝竜がそう言うと守護のローブを脱ぎ捨て冒険者が好んで着る様な服だけになり【魔法の神エラウェラリエル】に放り投げる。
「……確かに預かりました。
赤帝竜……さん……一応町中なので……その、町を崩壊とかさせないよう、お手柔らかにお願いしますよ……」
「保証はできんな。 何しろ奴らは、我の、我の大事なネズミーを汚したのだからな!」
【自然均衡の神スネイヴィルス】は今の2人の会話を聞いて、ただただ唖然とするしかなかった。 何しろあの大惨事の赤帝竜が、たかだか縫いぐるみ1つであそこまで怒りをあらわにするとは思いもしなかったからだ。
「【自然均衡の神スネイヴィルス】早く行きましょう」
【魔法の神エラウェラリエル】に声をかけられ我に返った【自然均衡の神スネイヴィルス】は頷いて何も言えないままその場を離れていった。
2神の姿が見えなくなったのを確認すると、赤帝竜はネズミーマウスの縫いぐるみを握りしめている悪鬼を睨みつけた。
「貴様ら我を怒らせて五体満足で居られるとは思うなよ!」
正体を知らない悪鬼達は燃える様な赤い髪をした赤帝竜をただの小娘としか見ていない。
「さて……他人の目も無くなったし、ネズミーの恨みを兼ねて我も1つ試させてもらうとするぞ」
そう言うと赤帝竜が一番大量に集まっている悪鬼達に向かい、片手を突き出す。
ふむ、と赤帝竜が納得した様に力を放出すると、強烈な風が巻き起こり出す。 これはこの魔法が発動する直前に放たれるものだ。
その魔法風が悪鬼達を包み込むと膨れ上がり広範囲にわたり爆発した。
魔法に絶対の自信がある悪鬼達は余裕の表情を見せていたが、その爆発に包み込まれた時になってようやく自身の愚かさに気がつくが既に遅い。
それは火球のように熱による燃焼とは違い、まず強烈な爆風が襲う。 その爆風だけで小柄な悪鬼達は粉砕されていった。 次いで放射線が放出され熱放射が出される。 放射線により発生した火球はこの世界では存在し得ない数百万度にもなり膨張し、再度衝撃波と爆風を発生させる。 粉砕された悪鬼達が焼き尽くされていき、比較的大型の悪鬼達は粉砕こそされなかったが、炭化していて触れれば崩れそうな姿に成り果てた。
その時に起こった爆風の余韻が赤帝竜にも到達し、燃えるように赤い髪が空を勢いよく泳ぐ。
赤帝竜が顔を上げると爆発した上空にキノコのような煙が立ち上がり、スゥッと何かに吸い込まれるように消えていった。
「これは確かにとんでもない威力だ……ティルト何とかと言う核融合爆発魔法とかいったか」
赤帝竜が行使した魔法はサハラが所持していた『上級洞窟と竜』とは別のTRPGルールブックのもので、魔法使い系最強の全体攻撃魔法だった。
見た事もないあまりに強烈な魔法を目にした悪鬼達はザワザワとざわつき出し、目の前にいる赤帝竜をようやく敵と認識し出す。
その間にも赤帝竜は腕からリストブレードを外して放り投げると、一瞬にして着ていた服が破れて、超弩級の巨大なドラゴンの姿へと変えた。
“なんだ今のは!”
“それよりアレは何だ!”
悪鬼達がその巨大なドラゴンを見て驚きこそしたが、さすがは本拠地とでもいうのだろうか、すぐに体制を整えて一斉に赤帝竜に怯える事なく襲いかかってくる。
「やはり我本来の戦いかたの方が好みだな」
大惨事の象徴とまで言われている赤帝竜の本来の姿での攻撃はすさましく、まずドラゴンが必ず最初に行う基本行動ともいうべきブレスを吐きだした。
先ほど赤帝竜が使った核融合爆発の魔法ほどの熱量には遠く及ばないものの、一息で吐き出し切るまでのブレスであちこちで断末魔が上がり、辺り一面を火の海へと変えていった。
ブレスをなんとか逃れ攻撃に転じてきたハマトラに似た悪鬼やグレーターデーモンですら、赤帝竜の噛みつきや尻尾によるぶん回し、1本1本が巨大な両手剣のような爪で切り裂かれ、傷一つ付けられずに無惨な死体へと姿を変えていく。
大きくそして一見脆そうにも見える翼を狙って来るものもいたが、翼を一凪すればそれ自体が刃物のように悪鬼を切り裂いた。
擬似魔法で攻撃する悪鬼もいたが、それを上回る速度で相殺する擬似魔法を次々と赤帝竜は使い、無力化させ、魔力の桁違いからそのまま押し切る形で悪鬼は死んでいく。
エリニュスの様な飛び道具を使う悪鬼は、赤帝竜の固い鱗にキズすらつける事ができず、拘束しようとしても赤帝竜の動きの障害にすらなっていない。
大半の悪鬼が死に絶えたところで、まだ息のある悪鬼達はとんでもない相手を怒らせてしまった事にやっと気がつき、自分達の愚かさを呪いながら逃げる事すら許されずに死んでいった。
1人残された赤帝竜が辺りを見回し、町が半壊しているのを確認すると、人型に変身して誇らしげな顔を見せる。
「うむ、崩壊はさせていないな」
私事で誠に申し訳有りません。
今後ももしかしたら金曜と土曜は更新できないことが多々あるかと思います。
その際は必ず木曜日に日数分の更新します。
毎日楽しみにしてくれている方達にはご迷惑をおかけします。
さて明日の予定だった赤帝竜のお話でしたが、使った魔法はわかる人にはわかる、ティルト何たらです。
いずれはT&Tの魔法を元ネタにしたものも使いたいなぁ。
「これでもくらえ!」
大好きでした。
というわけで、土曜日分は後ほど更新します。




