マルボロ王国迎撃戦
サハラやレフィクル達がウィンストン公国へ向かい、グランド女王もキャビン魔導王国へ1度戻った。
「迎撃だ! 誰1人町には入れさせるな!」
ヴォーグの命令で兵士達が一斉に動き出す。 そんな中7つ星の騎士団では話し合いが行われていた。
「アラスカ、いやアラスカ卿、マスターが言った意味がわかるか?」
「わだかまり……一体何の事だか……」
「しかしマスターの事だから何らかの意味があるはずだ。 思い出すんだ、マスターに言われた事で何か思い当たる事はなかったか?」
アラスカが必死に記憶をたどり、サハラに言われた言葉を辿っていく。
「憤怒?」
「それは狂戦士の能力だ。 確かに武闘大会で似たような力を見せたが、あれは自制できていないから憤怒とはまた違う」
しかしアラスカに他に思い当たるところはない。
「わかりませんか? サハラはわだかまりって言ったのです」
そんな集まって話し合っている7つ星の騎士団達の元にセーラムが来た。
「わだかまり、というんだから心の中に何か引っかかってる強い想いとかがあるんじゃないのですか?」
セーラムはわかったように言うだけ言うと行ってしまい、アラスカはといえばむしろ余計に悩んだ顔になってしまっていた。
「とりあえず俺達も行こう。 わだかまりがわかっても何がどうなるかわからないしな」
アラスカも頷いて7つ星の騎士達を連れて迎撃に向かう事にする。
「ヴォーグ、貴方も行くの?」
「ああ、国王である俺が出ないでどうするっていうんだ。 婆様はベネトナシュを頼む」
「うん……気をつけてね。 これから産まれてくる子供の為にも絶対に無理したらダメだよ」
「婆様は心配しすぎだ」
ヴォーグはそう言って宝剣アルダを掴んで出て行く。 残されたレイチェルは自分が神である事を忘れてヴォーグの無事を祈った。
兵達と真っ先に迎撃に向かったキャスと不死王が状況を確認すると、また例によって爆発する物を掴んだ兵士達の姿が見て取れた。
「またダイナマイト使ってくるのかぁ」
キャスがボヤくが不死王はそれには応えず、違うものを見つめている。
「あいつらは儂等に任せてくれい!」
代わりに応えたのはボルゾイ達率いる動く城壁のドワーフ達で、そこに1人につき1人づつ魔導兵が付き従っていた。
「私たちの魔法と動く城壁の防御力で必ず受け止め切ってみせます!」
他人の力を借りる事を嫌うドワーフが力を合わせることにキャスは驚く。
「そのあとの事は俺達が何とかしてみせる」
兵を率いて辿り着いたヴォーグが応えたが、その表情にはどこか焦燥感が見れた。
「我等も出ます!」
最後に辿り着いた7つ星の騎士団が立ち並んだ。
そんな中先程から口も開かず静かに敵を見つめていたのは不死王だけではなくいつの間にか来ていたセーラムもだった。
「セーラムどうかしたの?」
「すっごく嫌な何かを感じる」
キャスは言われた先を見るが何も感じない。しかし……
「来る!」
不死王がそう言って飛び出し向かった相手は薄青い人型の姿をしたものだった。
セーラムも無言のままリングオブマナで一瞬で黄金の鎧に身を包み、槍と盾、翼を紡いで不死王の後を追った。
「僕も行ってくる。 どうやら相当な相手みたいだ」
「待て! 俺も行く。 指揮はお前達に任せる。いいな!
7つ星の騎士団も頼む!」
ヴォーグはマルボロ兵を指揮する兵長などに任せると、宝剣アルダを抜き放ち馬を走らせた。
不死王がその相手の元まで着くなり、伸ばした爪で引き裂こうとする。 だが傷一つ付けられずに逆に同じ様に伸ばした爪で不死王の片腕を軽く斬り飛ばした。
追いついたセーラムが槍で攻撃を加えようとした時不死王に止めらるが、間に合わずにその青白い人型に一撃を入れてしまうと、腕が槍の様に変わり、セーラムを貫こうとしてきた。
何とか盾で受け止め、その異形さに驚いたのか1度セーラムは離れる。
「何あれ! まるで私の紡いだ槍!」
そう言ったところでヴォーグが馬で駆けつけ宝剣アルダで攻撃を仕掛け、不死王が止めさせようとしたが間に合わずに斬りかかってしまうが槍で弾かれてしまう。 青白い人型が今度は腕を宝剣アルダに似た形状に変えると馬ごとヴォーグの片足を斬り落とした。
悲鳴をあげて馬から崩れ落ちたヴォーグにとどめを刺そうとしたところを、間一髪で不死王が引っ張って救い出し、後方でキャスが魔法の詠唱に入っているのを見てヴォーグを投げつけて止めさせる。
「何を!?」
「あれを攻撃するな! 全て模倣される」
ヴォーグを抱えたキャスが相手を見て、宝剣アルダと酷似した腕になっているのを確認する。
「あれは一体何者なのか不死王は知っているんだよね」
「我や赤帝竜の類だ。 早くヴォーグ王を連れて【愛と美の神】の元へ急ぐがいい。 我は彼奴をここから引き離す」
不死王が敵である青白い人型から目を離さない様にしながら答えた。
キャスがヴォーグを連れて離れたのを確認すると今度は不死王がセーラムに声をかける。
「ハイエルフの娘、我が盾になるからコイツをここから1度引き離す。 槍は使ってもいいが、魔法と……特に原初の魔法は絶対に使うな」
「わかったわ! それより腕は平気なの?」
「我は不滅だ、心配ない。 だが……再生が少しばかり遅くはなる」
最初に飛ばされた不死王の腕が未だに再生しきってなく、中途半端に再生された状態で非常にグロテスクだった。
『私達も手伝いましょう』
『セーラム、君は僕が守るよ!』
金竜が2匹姿を見せ加わってきた。
「それは構わぬが、ブレスや擬似魔法は使うなよ」
不死王が即座に答え、青白い人型にコッチだとばかりに戦場からどんどん遠ざけていった。
ゴールデンウィークは更新だけでゆっくりしてしまいました。
今日から続きを必死に書かなくては……
明日の分までしかないです(・・;)




