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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第15章 ワールド・ガーディアン
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忘却神の人種粛清

 ウィンストンの男爵が引き返してきたところでレフィクルが姿を見せる。

 戦いは既に始まっていて、ルベズリーブやナータス、ログェヘプレーベは防衛戦でのんびりとしていた。



「私達の出番はまったくなさそうでやがりますね」

「ログェヘプレーベ、敵の罠かもしれないから油断してはダメだぞ。 何しろ相手は卑劣なアロンミットに神算鬼謀と謳われるニークアヴォだ」

「なぁルベズリーブ、アロンミットはわかるが、その神算なんたらっていうのはそんなに強いのか?」

「ナータスにわかりやすく言えば、ニークアヴォは極めて優秀な戦術家だ。 人の考えの及ばぬ(はかりごと)を思いつくのだ」


 ナータスはわかったようなわかってないような返事を返した。



「でもよ、戦術なんざぶっ飛ばしゃいいだけだろ?」

「それだけの力があるお前ならだな」


 よくわかっていないのか、ナータスは褒められたと勘違いして踏ん反り返り、呆れた顔でログェヘプレーベがそんなナータスを見ている。



「貴様ら随分と悠長だな」


 レフィクルがその様子を楽しげに声をかけると、ナータスとログェヘプレーベが慌てて姿勢を正す。



「あの中に兵はもちろん、私も飛び込みたいとは思いませんのでのんびりと鑑賞していたまでですよ」


 ルベズリーブに言われた先を見ると阿鼻叫喚の世界が広がっていた。 とはいえレフィクルが神でなければさほど変わりがないのかもしれない状況かもしれない。



 漆黒の甲冑姿のブリゼはアロンミットの様に両手で振り回すトゥーハンドソードで、敵兵の剣や鎧ごとまさに『破壊』していく。


 露出の多い妖艶な姿のリネの周りに近づく者は次々と四肢を切断され、辺り一面『血』しぶきが舞いまくっている。

 レフィクルは自身が暗殺者(アサシン)のため、リネが鉄糸の様なものを使っている事にすぐに気がついた。


 そして最後にデセ、ウィザードかと思われたその容姿とは裏腹に、死神が持つ巨大な鎌の様なものを振り回していて、その鎌に触れた者は血はおろか傷一つ無く、まるで魂だけを刈り取られたかの様に『死』んで行く。


 忘却神の戦いはどれ一つを見ても人が神になったものとは違い異形であった。

 それもそのはずで、忘却神は創造神によって創造された人種粛清のための神だからだ。



 あまりの恐ろしさから数で相当上回る敵兵達も徐々に逃げ出し始めるが、忘却神の追撃は情が一切無く、距離が離れてもブリゼは巨大な剣をブーメランの如く投げつけて木や岩諸共破壊して殺していき、リネも高笑いをしながら巧みな操作で血の花を咲かせ続け、デセも小鎌を撒き散らせて死をもたらせていった。



「さすが忘却神ですなぁ。 対人種においてあれ程までの暴力を見せられてはいかな兵力があろうとも話になりますまいな」


 ルベズリーブが感嘆の声をあげた。


 だが忘却神の攻撃も1神の登場で動きが止まる。


 ついにアロンミットが姿を見せて同じ巨大な剣を持つブリゼがその攻撃を防いでいる。

 それを見たレフィクルの顔が不敵な笑みを浮かべてアロンミットの方へと向かおうとすると……



「レフィクル様、コレを」


 ラーネッドがレフィクルに一振りの小剣を手渡すと、レフィクルは受け取った小剣を眺め、以前ラーネッドから貰った漆黒の短剣を抜いて見比べる。 漆黒の短剣と今手渡された小剣が同調している様に感じた。



「その小剣と短剣は雌雄一対の剣です。 是非私の小剣も連れて行ってください」

「ふむ」

 

 レフィクルは雌雄一対の剣を気に入った様で腰に吊るして固定するとアロンミットに向かって歩き出した。





「下がれ忘却神、それは余の獲物だ」


 レフィクルの声を聞いたブリゼとリネとデセは防御の手を止めてすぐに引き下がる。 なぜなら忘却神には忘却神の制限で神には攻撃を加えることができないという制約があるためだった。


 そしてレフィクルはアロンミットに顔を向けると、長い間待ち望んだ相手に向かって小剣と短剣を身構えた。



「久しいな卑怯者」


 アロンミットもレフィクルを見て顔をニヤつかせる。



「性懲りも無く殺されに来たか?」


 アロンミットが巨大な剣をレフィクルに向けて余裕の表情で答えるが、徐々に顔色が変わっていく。 レフィクルが神威を露わにしたからだった。



「貴様が何故神になった!」

「ふん、死極から出る条件とやらで【闘争の神】になってやったまでだ」


 焦った様な雰囲気は見せたが、【闘争の神】と聞いてかアロンミットが余裕を見せる。



「何の神かと思えば……【闘争の神】か。 成り立てとなれば神威もさほどあるまい」


 それを聞いたレフィクルがくだらんと一蹴してくる。



「神威、神威、神威、くだらん事を気にするのだな」

「神威の意味もわからん若造の神が……」

「それはそうと、喜べ貴様らはどうやら悪魔(デヴィル)に認定されたらしいぞ?」


 レフィクルがアロンミットを無視して悪魔(デヴィル)に認定された事を教えると、アロンミットが一瞬だけ愕然とした顔を見せたが、貴様らと言ったことに思い出した様にニヤつかせる。



「ニークアヴォもという事か。 フッ、ならこんなところで遊んでいる暇はないぞ? あいつなら今頃公爵領に攻め入る算段に入っているはずだ」

「残念ですが、【勝利の神アロンミット】貴方以外辺りに敵兵の姿は見えませんわよ」


 上空から幻馬(ファントムスティード)に乗ったエアロ王女とキャビン魔導兵団の姿があった。



「ぷ、ぷぷぷ、ぶ、ぶわっはっはっはっはっは! み、見捨てられてやがるぜアイツ! ぶははははっ!」


 豪快にナータスが笑い出し、哀れそうにログェヘプレーベやラーネッド、スエドムッサ、ルベズリーブもアロンミットを見つめた。



「違う! そうだ! あいつはここを俺に託しただけだ!」

「なら、証明してみよ」


 レフィクルがアロンミットに斬りかかった。




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