変化
翌朝目が醒めると、隣で眠るアラスカも目を覚ました。
着替えを済ませ俺は教室に向かい入るとレグルスが挨拶をしてくる。
「おはようサーラさん、昨日は楽しかったね」
「あ、おはようございます。そうですね」
他愛のない話をしているとアダーラやサルガス達も加わってきて会話を楽しんでいた。
そこにアリエルがいつの間にか教室に来ていて、俺は慌てて挨拶をした。
「アリエルさん、おはようございます。昨日はなんのようだったんですか?」
そう言う俺をなぜか少し悲しそうな顔で見た後話し始めた。
内容は俺とアリエルが元恋人で、レグルスが攫ったから取り返しに行っただけだと言い張る為、事実かどうかを尋ねられたといった。
すごい言われようだなと思いながらレグルスの様子を見ると目が合い、アリエルの事など興味ないかのように俺に声を掛けてくる。
「サーラさん、今日皆んな集まるんだけど来れないかなぁ?」
「昨日機会があったらと言ったばかりですよね?」
「良いじゃん! アダーラもサーラさんに来て欲しいよね!」
「あ、うん。サーラさんも来なよ。少しぐらいなら大丈夫だよ」
2人きりじゃないし、昨日大丈夫だったし、少しぐらいならいいか。
「では少しだけですよ」
「本当! ありがとうサーラさん! 嬉しいなぁ」
レグルスが本当に嬉しそうな顔を俺に向けてくると、断らなくてよかったと思う。
『サハラさん!?』
『どうした? アリエル』
『自分がおかしいって気がついてないの?』
『大丈夫、断ればキレられるからちょっと顔出すだけだよ』
『だからその時点でおかしいって気がつかない? 気がつかない……か』
『心配性だなぁアリエルは』
アリエルは俺が洗脳されていると思い込んでいるようだ。
昼時になるとレグルスが一緒に食堂に行こうと誘われて、アダーラ達と向かうところでアリエルがいない事に気がついた。
「アリエルさんいないみたいですけど」
「きっと何か用があるんだよ。後で来るよ」
アリエルの奴ちゃんと洗脳されたフリしなきゃだめだろうに……仕方がないサポートしておくか。と思った矢先、
「気になるの?」
「あ、少しだけ。昨日私が原因であんなに泣き出したから、私がいるからなのかなと思ったんです」
「サーラさんって本当に優しいんだね。でもそれはアリエル自身の問題だから、アリエル自身に任せた方がいいんだよ」
そう言うものかな? まぁこれで何とかなったか。
食堂に着いてお盆によそってテーブルについて食べ始める。横にレグルスが座り、囲むようにアダーラ達も座ってきた。
食事を終えてもアリエルが来る事は無かった。
食後にレグルス達と休憩時間を楽しんでいると、デノンとビクターが俺たちのところに来た。正確にはレグルスに用事のようで、デノンがいきなりレグルスの胸ぐらを掴んできた。
「お前よ! アリエルさんをサハラから奪い取っておいて、サーラさんが現れたらポイかよ!」
「勝手な事言わないでくださいよ! ポイされたのは俺の方ですよ! 今朝から俺に話しかけてくれないのはアリエルの方だ!」
「ならお前から話しかけてやれば、いいだろう!」
そう言ってレグルスを殴ろうと振り上げ、レグルスが身構えた。
バシンッと俺がレグルスに振り下ろされた拳を手で受け止める。
「暴力は……いけません! 相手はいくつ離れていると思っているんですか!」
手で顔をガードしていたレグルスがその隙間から俺を見る。デノンも俺に腕を押さえられたまま俺を見つめ、手を引くとビクターと何も言わずに立ち去っていった。
「サーラさん、ありがとう! 君がいなかったら今頃俺はボコボコにされていたよ」
アダーラとサルガスにまで凄かったカッコよかったと言われると照れてしまう。
そして午後の授業も終わり、夕飯の時も俺たちのところに来る事がないままアリエルは洗脳されているフリを見せず、レグルスに近づきさえしなかった。
何しているんだよアリエルは……
夕飯の後レグルスの部屋に集まり、会話やリバーシをやって楽しんでいる。
「やったぁ! サーラさん俺の勝ちだね!」
「え! あれ!? レグルスさん待って、もう一回、もう一回良いですか?」
「えー! どうしようかなぁ?」
「あと一回だけで良いですから」
「じゃああと一回だけね」
二回目を始めて少しするとアダーラ達の呻くような声が聞こえ、声がした方を見ると煙の匂いを嗅いで痙攣しだしている。
リバーシをやりながら横目で見ていると、悶えているような声を出しながらおとなしく座っているだけになった為、リバーシにまた集中する。
そしてそこそこ自信があったはずなのにまた負けてしまった。悔しさからその後も数回続けて長居している事も忘れて没頭してしまう。
「レグルス君〜、私達帰るねぇ〜」
レグルスは何も答える事なく俺とのリバーシを続ける。俺もこれが終わったら帰ることにした。
「また負けちゃいましたね。レグルスさん昨日はワザと負けてたんじゃないですか?」
「そんな事はないよ。今日だって勝ったり負けたりだったりだよ」
「そうですね、じゃあ私も帰りますね」
「うん、バイバイ」
特にここでも引き留められたり、麻薬の事を口にはせず、俺はアラスカの待つ部屋に戻った。
戻るなりアラスカに王宮に行くように言われたが、もう時間もかなり遅い。
「今頃寝てるんじゃないですか?」
「いえ! 必ず来るようにと言われているので大丈夫なはずです!」
「ふーん、変身解けても困るし行ってみますね」
そう言って俺は王宮に向かった。
今日は後1話更新しておしまいです。