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アルナイルの素質

土曜日分です。

「話はだいたい聞いた。 つまりまだ占領はされていないのだな?」


 アルナイルがレフィクルに少し怯えていたようだが、ハッキリと「はい」と返事をした。


 すぐにローラとモリス侯爵達が呼ばれて集まったところでレフィクルが指示を出す。



「ローラを先頭で直ちに向かう」

「私、戻れるんですね!」

「左様ですぞ公女様」


 ローラ姫が腰に吊るしている父親の魂とも言えるマナ水晶を大切そうにそっと撫でていた。



 行軍が開始されローラ姫を先頭で公爵領に入っていき、その後にモリス侯爵や爵位を持った者達が続いた後、俺やレフィクルが続く。

 町はローラ姫が戻った事で歓声が上がり、不安そうだったローラ姫も心なしか笑顔が戻ったように思える。



「すぐにここは戦場と化す」


 レフィクルがそんな事を呟いた。





 公爵の屋敷に戻ると残っていた公爵の執事や召使やらが喜びの声を上げてローラ姫を出迎え、中に入ると綺麗に掃除をしてあり、俺がいつぞや始原の魔術で開けた穴も修復されていた。



「国には戻れましたが、私はどうしたらいいのでしょう? 私には国を取り仕切る自信なんてありません……」

「そんな暇はない」


 ローラ姫の心配をよそにレフィクルはすでに先を見ているようだった。



「参ったな、俺は全く役に立たないな」

「仕方ないわよ。 サハラさんは政治は無関心なんだから」

「あと戦争も、ですね」


 ルースミアは気にも止めていない様子で、城とはまた違う公爵の屋敷を珍しそうに眺めていた。



「そ、そんな事ないですよ。 サハラさんはリーダーシップがあります。 よね?」


 俺のそばにいたアルナイルがそうは言ってくれたが……なぜ最後の俺に聞くよ。




 ウィンストン公国の正確な地図をレフィクルが要求し、作戦会議という名のレフィクル独断のような集まりが行われ、その中になぜか俺は呼ばれなかった。

 当然アリエルとエラウェラリエルとルースミアが抗議をしたが、ルベズリーブが「世界(ワールド)守護者(ガーディアン)は発言力が強く、作戦会議が止められかねない」と上手い事言われてしまう。

 きっと公爵領から攻めるかの時の事と、先ほどのフィリップの事を言っているのだろう。





「なんだよ、俺はのけ者ってか?」


 1人文句を言い、暇を持て余した俺は屋敷をうろつこうとしたところに声をかけられる。

 振り返るとエロ可愛い格好のスエドムッサだった。



「呼ばれなかった者同士一緒にいかがですか?」


 すぐに気がつく、ああ、これは間違いなくレフィクルにはめられたんだな。 そう俺は思った。



「悪いけど、俺にはやる事があるんだ」

「お手伝いします」


 本当はやる事なんて何もない。 スエドムッサはそれをわかってワザと言ってきているんだろう。



「遠慮するよ」

「そう邪険にしないでください。 貴方に嫌われるような事をした覚えはありませんよ」


 その通り、だからこそ俺は言い訳もしにくいし2人きりになんかにみなりたくないのだ。

 だけどこのままじゃラチも開かないだろう。



「では一緒に来てもいいけど、君と親しくなるつもりはないぞ」

「今は、ですよね」


 ほんとグイグイ来るなこの子。

 そこに渡りに船の如くアルナイルが俺を見つけて声をかけてきた。



「あ、サハラさん……とスエドムッサさん」

「お、おお! アルナイルどうしたんだ?」


 スエドムッサと2人きりだったため、声をかけたものの邪魔しちゃいけないだろうと気を利かせたのか、そのまま立ち去ろうとしたアルナイルにすかさず声をかけて引き止める。



「そうまでして避けますか!」


 さすがに怒らせてしまったようだ。


 スエドムッサを見るとふるふると震えながら目には涙を浮かべている。



「んー、騙されないでくださいね」

「え?」

「スエドムッサさんそれ嘘泣きですよね?」


 アルナイルがスエドムッサの嘘泣きを看破して俺に教えてくれる。

 俺は嘘泣きと言われて顔を向き直すと、スエドムッサが驚いた顔でアルナイルを見つめていた。



「なぜわかったんだ?」


 ほんの僅かに見せた仕草で気がついたらしい。 ふと以前魔導学院の時にも似たような事があったと思い出した。



「君は……凄い観察眼の持ち主なんだな」

「そ、そうなんですか? 私あまり友達いないから、人を観察してばかりだったんで」


 恥ずかしそうに照れた顔を見せて笑ってくる。

 スエドムッサは嘘泣きを看破したアルナイルをジッと見つめていた。



「どうかしたのか?」

「少しこの子とお話をしたいと思いました」

「まさか暗殺者(アサシン)にしたいとか言わないよな?」

「そちらの素質はこの細い体では無さそうなのでご心配なく」


 そう言われて俺は思わずアルナイルとスエドムッサの胸を見比べてしまう悲しい男のサガ。



「サハラさん見ている場所エッチです」

「ご、ごめん」


 慌てて視線をそらして謝るとアルナイルとスエドムッサがクスクス笑っている。



「じゃ、じゃあ俺は行くよ。 勝手に2人で話でもしてくれ」


 その場から逃げるように俺は立ち去った。 後々思えば上手い事スエドムッサから離れられたとは思ったが……まさかな。




次の1話で第14章が終わります。

この物語も終盤に差し掛かったのかな? たぶん。


そんなわけで次回の更新は日曜日です。 楽しみにしてくれている方たちにはご迷惑をおかけいたします。


それでは

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