アルナイル
明日金曜日分です。 後ほど土曜日分を更新します。
「ほ、本当に……サハラさん!」
「だから言っただ……」
いてもたってもいられず私はサハラさんに飛びついてしまいました。
アリエルさんが亡くなって葬儀も終わり、墓地にずっと佇むサハラさんの姿を見た私達クラスメートは何も言えずその場から立ち去るしかできませんでした。
その後も幾度か墓地に足を運んでみたけれど、ある日サハラさんの姿はなくなっていました。
それから私は魔導学院を卒業し冒険者ギルドで登録を済ませて冒険者として経験を積んでいって、時折悪魔と戦う凄腕の人物の噂を耳にしたけれど、名前が違うため最初はサハラさんだとは思いませんでした。 けれど一緒に連れる白い狼の話を聞いて私はサハラさんだと確信しました。
あの人は名前を偽って復讐する為だけに生きているんじゃないかと思いました。 手助けができるのであれば手助けがしたい、だけど探し出せるほど各地を旅するほど私にはまだ力もなく、冒険者としてただ生きるしかありませんでした。
だけどある日ここウィンストン公国でアロンミット武闘大会が開催される情報を得た私はもしかしたらと思い、急いで向かう事にしましたが到着した時は時すでに遅くサハラさんの姿はなく、それどころか砕け散る町の人々の姿でした。
冒険者ギルドからの緊急の仕事で、砕けた人達に残るという水晶のようなものを集める依頼が、通常では考えられない報酬で用意されていたので引き受けました。
そんな時神々が創造神様の命で神界を追放されたと噂が立ったかと思うと、今度は戦争が始まりました。 マルボロ王国とメビウス連邦共和国だそうだが、実際は違い神々同士の争いだという事でした。
ウィンストン公国はマルボロ王国に全軍で援軍に向かい、国を放棄するような信じられない状況になってしまい、国民はいつここにメビウス連邦共和国が占領しにくるか不安な日々を過ごしていました。
私は1度キャビン魔導王国まで戻ろうとしましたが、情報でキャビン魔導王国は不可侵領域を展開したと情報があって、行き場を失った私はここに滞在する事を余儀なくされてました。
「ちょっと待ってくれ、なんで君がここにいるんだ」
私はサハラさんに墓地から今に至るまで全てを話しました。
「そうか。 迷惑をかけちゃったみたいだな」
「そうよ、だけどね。 サハラさんはあたしの旦那様なんだから離れてもらえないかなぁ?」
え! アリエルさん!? なんで?
あまりの驚きに思わずサハラさんにしがみついちゃいました。
「サ、サササ、サハラさん! アリエルさんのゴーストがっ!」
「ゴーストじゃなーい! あたしは生きてるから、さっさとサハラさんから離れなさい!」
驚いた事にアリエルさんは生きていて、私もサハラさんにこれまでの事を教えてもらってやっと納得がいきました。
「えーと、つまりサハラさんは世界の守護者になって、アリエルさんは【自然均衡の神】の代行者様になっちゃったんですか!」
「まぁそんなところかな」
「凄いですね。 私の憧れの【自然均衡の神】の代行者様が、今度は世界の守護者だなんて……」
「ちょっと待ちなさい。 今なんて言ったのよ!」
「まぁ憧れるぐらいいいじゃないか。 アリエルだってそうだっただろ?」
「う……サハラさんそれ言っちゃう?」
どうやらアリエルさんも私と同じだったみたいで恋仲どころか夫婦になれたなんて羨ましいなぁ。
「主よその小娘はなんだ?」
うわ、綺麗な真っ赤な髪の美人さん。 サハラさんとどういう関係なんだろう。
「ルースミア、それとウェラ、こちらはキャビン魔導学院にいた頃のクラスメートのアルナイルだ」
「は、初めまして。 アルナイルです」
ウェラさん? あれ? あの人ってもしかしてもしかしなくても……
「ま、ままま、【魔法の神エラウェラリエル】様ですか!?」
こんなに近くで、しかもにっこりと微笑んでもらっちゃいました。 ウィザードの私にとって感動……ってあれ?
「サハラさん、今【魔法の神エラウェラリエル】様のこと……」
「ん、ああ……今紹介したルースミアもウェラも俺の、その……嫁、なんだ……」
思わず大きな声で驚きの声を上げてしまい、サハラさん、アリエルさん、ルースミアさん? 、そして【魔法の神エラウェラリエル】様の顔を順に何度も見てしまいました。
そこへその昔、まだ私が生まれる前に狂王と呼ばれたレフィクル、今は【闘争の神】が近づいてきたのでした。
今回はサハラがキャビン魔導王国を離れてからの話をアルナイル視点で書いてみました。
後ほど土曜日分を更新します。




