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潜入と捜査

本日も先週同様、木金土、今日、明日、明後日分の3話更新させます。

 スエドムッサが慎重に耳を傾け外の音を確認し、1人そっと短剣とナイフを使って縦穴を登って行き両足を壁面に固定させて押し上げる。

 日の光が入り込み、下で待ち構える2人の目に大股開きどころか開脚しきったスエドムッサの下着が丸見えになる。



「こ、こら、小僧覗き込むんじゃない!」

「見ねぇよ女に興味はない」

「小僧……お前まさかとは思っていたが……」


 ルベズリーブはそっとフィリップから少し離れた。


 上から携帯できる簡易的な縄梯子が降ろされスエドムッサが上がる様に上げ下げして合図を送ってきた。


 苦戦しながらフィリップが登り、ルベズリーブは気持ち悪い動きでしゃかしゃかと上がり3人が登りきると周りを見回す。



「ここは武闘会場の裏手?」

「レフィクル様の王宮の跡地を闘技場にしたのか!」

「お父様喜びそう」

「それで? 俺1人で見てくればいいのか?」

「敵だらけだったらどうするんですか。 私もついていきます」

「それでは私はここで姫のお帰りをお待ちしております」


 フィリップが行こうとしたところで、スエドムッサに止められる。

 簡単に変装だけしておきましょうと言って、砂をすくい上げてフィリップの顔に擦り付け、文句を言おうとしたスエドムッサ自身も同じ様に砂を擦り付けていた。 続いてタオルに少量だけ水を垂らしてフィリップの顔を拭い出す。 同様にスエドムッサ自身も拭うと数日風呂にも入っていなさそうな汚れた顔になる。



「嫌かもしれませんが髪の毛も砂をまぶして適当に振りはらいましょう」


 スエドムッサがやってみせると、あれだけ美しかった顔が砂まみれで髪の毛も埃っぽくなる。 フィリップもそれを見て真似るとチュニックを手渡される。



「私のですがサイズは合うでしょう」


 スエドムッサがチュニックに砂をまぶして汚していきそれを着込み、ズボンも取り出し同様に汚してから履くと汚らしい娘へと変わった。



「さぁ急いでください」


 先ほどまでサラシのように巻かれた胸元に丈の短いベストを着て、足元まで伸びたスリットの入ったスカート風のものだったが、姫と言われれば十分通用するだけの美しかったスエドムッサが、今はその見る影もなく薄汚れた町娘の様になっている。



「す、すごいな……」


 驚きながらもフィリップも同じように服を汚して着込み終えた。



「フィル行こ」

「フィ、フィル!?」

「フィルどうしたの?」


 全く別人のようになったスエドムッサに腕を引っ張られて、町の方角へ引っ張っていく。

 フィリップはこの変装したスエドムッサをただただ驚くしかなかった。





 人通りの多い場所に出る前にスエドムッサが兵士かどうかだけ見てからフィリップの腕を取りながら通りにでた。



「だ、大丈夫かな? バレないかな?」

「そんなに心配ならあんな事しなきゃよかったのよ。 それよりどうなの?」

「な、何がだよ」

「見知った人とかいないわよね?」


 ワザとらしくスエドムッサがキョロキョロしながら尋ねるのだが……



「こんな所にいるわけないだろ?」


 本来の目的を忘れているフィリップに苛立ちを感じながら、スエドムッサがフィリップの腕をつねった。



「痛いじゃないか!」

「まさかと思うけど貴方目的を忘れてないわよね」


 ハッとした顔を見せたフィリップを見てスエドムッサが溜息をついた。


 本来の目的を思い出したフィリップを連れて町を彷徨く。



「知り合いとかいる?」

「ここは俺の住んでいる領じゃないから、そう簡単に出会うなんてないよ」


 なぜこの少年がこの潜入に選ばれたのかとスエドムッサは本気で思いはじめていた。

 なのでスエドムッサは自身の耳を最大限に利用し敵に占拠されているのか聞き取る事にした。

 スエドムッサの耳に入ってくるものは不安や心配などの声であり、操られているような雰囲気は感じられない。



「……あ」

「どうしました」

「知り合いが……」


 フィリップの見つめる先にキャビン魔導学院のクラスメートだったアルナイルの姿があった。

 驚かせないように、そして慎重にフィリップが声をかける。



「アルナイル、久しぶり」

「フィリップ君? あれ、どうしてそんなボロボロな格好……」


 フィリップが上手い答えが言えずに困っている所にスエドムッサが変わりに話しかける。



「私はムッサ、貴女は?」

「私はキャビン魔導学院時代にフィリップ君とクラスメートだったアルナイルと言います」

「そう、少しお話ししてもいいかしら?」


 アルナイルを連れて軽食が取れる場所に入り、飲み物を注文して落ち着くとスエドムッサから話し始めた。



「ここにはいつから?」

「武闘大会があった時に来てました」

「そう、ではこちらも素性を明かします。 聞いても驚かないように」


 そうは言っても驚かないはずがない。 目の前にいる女がまさか過去ガウシアン王国の王女スエドムッサだというのだから。

 そしてここには潜入して調査に来た事も伝え、情報を提供してもらうように話す。



「私は……狂王のために力を貸すつもりはありません!」

「アルナイル違うんだ。 狂王は、レフィクルは今は【闘争の神】となってサハラを手助けして世界を守ろうとしているんだ」

「……っ! サハラさんがいるんですか! わかりました。 ただし、この目で確認するまではお答えできません!」


 困ったようにフィリップがスエドムッサを見ると頷き、一緒に行く事になって秘密の通路まで戻りルベズリーブと合流し、レフィクルやサハラの待つ場所へと戻った。




出す予定がなかったアルナイルの登場と、珍しい3人組のお話でした。


後ほど明日、金曜日分を更新します。

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