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秘密の抜け道

 ワームホールを抜けて出た場所は、公爵領まで徒歩で1時間はかからないであろう場所らしい。



「それではレフィクル様、行って参りますよ」

「お父様、2人の護衛はお任せください」

「お、俺は、役に立ってみせる!」


 レフィクルは3人を見つめ、何も言わずに公爵領の方角に目を戻すと、ルベズリーブを先頭に馬が走り去っていった。





 馬を走らせながらルベズリーブは懐かしむように辺りを見回す。



「ここで馬は待たせましょう」


 まるで目印のように1本の木が植わってあり、そこでルベズリーブに従い3人は馬を繋ぎ止めた。


「ここは前にどこかで……」

「覚えてましたか、昔姫が迎え入れられたばかりの頃に奥方様と訓練した場所ですよ」


 目立つ1本の木があり、周りには大小の様々な形の岩がゴロゴロ転がっていて、身を隠したり身体トレーニングにも使えそうな場所だ。

 ああと思い出したような顔を浮かべてスエドムッサは懐かしんでいる。



「急ぐんじゃないのか?」


 1人ほっとかれたフィリップが口を尖らせながら2人の会話に水を差すと、ルベズリーブが何かを言いたげにフィリップを見たが、スエドムッサに「任務優先です」と止められたため黙った。 フィリップはここで鎧を全ておいていくことになり、鎧を1箇所にまとめて置くと、スエドムッサがカモフラージュに枯れ木や小さな岩でぱっと見では気がつかない様に隠し出した。

 それが終わるとルベズリーブが先頭になって移動を開始する。



「あそこです」


 そうルベズリーブが指し示した場所は、一際大きな岩があるが、特に入り口とかがあるようには見えない。



「一体どこが入り口なんだよ! 何もないぞ」

「小僧はおとなしく黙ってついてきてればいいのだ!」

「そんな事を言うなら俺は帰る……」


 そう言った瞬間フィリップの首元にナイフが突きつけられる。



「お父様の意思に逆らうのであれば殺しますよ?」

「お前らは神の制約で俺の事殺せないだろ!」

「残念ですが、私もルベズリーブも神ではなく、扱いとしてはゴッドハンドと言って神の制約はないんですよ?」


 スエドムッサに首元に短剣を突きつけられながらフィリップは己の愚かさを思い知ることになってしまう。

 だがフィリップはスエドムッサがサハラと親しくなりたいと思っている事を思い出し、スエドムッサに小声で囁いた。



「俺はサハラと親しいんですよ」


 シュッと短剣が退けられ、代わりにスエドムッサが耳元に口を寄せてくる。



「……実に興味深い話ですね」


 スエドムッサがフィリップを立たせルベズリーブに「さっさと任務を遂行しましょう」と、まるで何事もなかったような態度を見せる。

 ルベズリーブは聞こえこそはしなかったが、なんとなく察したようでため息をついた。



「この岩はカモフラージュです。 この様に……」


 ルベズリーブが岩に手を触れると手首まで岩の中に潜り込み、そのまま岩に吸い込まれていく様に姿が消えていく。

 驚いた顔を後に残されたスエドムッサとフィリップはしたが、すぐに後に続いて岩の中に入り込んでいった。



「中は随分と狭いのですね」

「1人ずつしか進めそうにないな」


 岩の中に入った先には細く狭い通路があり、伏せながら進まなくては行けそうにない。

 シッと合図を出してスエドムッサが耳を澄ませ、通路の先に何者かがいないか音を探る。



「物音はしませんが何かあっても逃げるにも逃げれませんね。 ここは私が先頭を行きますので、続いてフィリップ、後方をルベズリーブに頼みます」


 返事を待たずにスエドムッサが短剣とナイフを抜き取ると、四つん這いになって進み始める。

 その後をフィリップが続き、ルベズリーブが最後に進み始めた。


 狭い通路を3人が一列になって這い進んでいくが当然明かりがないためすぐに真っ暗になる。



「何も見えない」

「後からついてきてればいいだけです」


 猫獣人であるスエドムッサが真っ暗な中、目を光らせながらフィリップを見つめて答えまた進み始めた。


 どれだけ進んだのだろうか、突然フィリップの顔面に柔らかいものが当たる。 もちろんそれはスエドムッサの尻だ。

 声をあげそうになるフィリップにスエドムッサが尻を押し当てて黙らせ、短剣とナイフを構えて前方を見据える。

 フィリップの耳にもわかるゴソゴソと何かが動く音が聞こえる。



「どうりで生物が全くいないわけですね」


 スエドムッサの見つめる先には伏せた人ほどの巨大な蜘蛛がザワザワと足を動かしながら近づいてきた。



「姫!!」

「大丈夫です、これだけ身体を動かせれば十分倒せます」


 宣告通りスエドムッサは身体が起こせるギリギリまで背を起こし、猫が威嚇する時の様な低い姿勢のまま猫パンチさながらの小振りな振りで、手に持った短剣とナイフで戦い始めた。



「一応細くしておきましたので、気をつければ蜘蛛の体液が着かずに進めると思います」


 フィリップは見えないながら、出来るだけ身体を起こして背中が通路に当たるところまで身体を起こし、こする様にしながら歩いて行った。 蜘蛛の死骸の辺りであろう場所で気持ちの悪い感触を足に感じながらズリズリと進み抜ける。 その後に続くルベズリーブはインフラビジョンの魔法を自身にかけているため問題なく進めるのだが、蜘蛛の死骸に思わず反応しそうになるのをグッと堪えて先に進む2人の後に続いた。


 這い進んでかなり経った頃、また急に止まったスエドムッサの尻にフィリップは顔を埋める。



「モガッ!」


 苦言を吐くがスエドムッサは美人だ。 通常なら美人の尻に顔を突っ込んで喜ばないはずはないのだが、フィリップは(サハラ)が好きなため嬉しそうではない。



「ルベズリーブ、この先はどこに繋がっているんですか?」

「ガウシアン王宮の裏辺りです」

「変わっていなければですよね」

「そうですねぇ、100年とか言ってましたからな」


 スエドムッサが頭上から微かに聞こえる声を聞きながら慎重に先を進み、やがて3人が立っていられる少し開けた場所までたどり着いた。



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