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レフィクルの戦略

本日2話目、明日金曜日分です。

 落ち着いたところでレフィクルが続ける。


 ウィンストン公国の奪還はその2箇所から侵攻を防ぐためであることに加え、セーラム女帝国〜マルボロ王国〜ウィンストン公国〜キャビン魔導王国が繋がり、大陸の東半分を押さえることになる。



「天下二分の計か」


 俺がそう言うとレフィクルが少しだけ驚いた顔を見せた。

 実際は単に俺が三国志が好きで、諸葛亮孔明の天下三分の計に対して、周瑜公瑾が考えていたものが天下二分の計だっていう程度を知っていただけなんだが……


 つまりウィンストン公国を奪還してそこを守ればマルボロ王国とキャビン魔導王国から支援が可能になり、圧倒的に有利になってくる。 そうなればレグルスもウィンストン公国を攻めざるをえなくなるというものだった。



「それだけガウシアン王国はこの大陸の要となる国なんですよ」

「ウィンストン公国です!」

「これは失礼」


 ローラ姫が訂正するとルベズリーブが楽しげに返事を返していた。


 そうなるとマルボロ王国はマルボロ兵と臨時招集された冒険者達に、グランド女王と駆けつけてくれたキャビン魔導軍、いかなる理由があれど侵略行為には手を貸せないという7つ星の騎士団、そしてロメオ・イ・フリエタの動く城壁だけになってしまう。

 そしてウィンストン公国奪還が、セーラム女帝国のエルフ達とローラ姫、モリス侯爵率いるウィンストン公国軍だけだ。



「足りるわけがない! 守りは少数で抑えられても、攻めるのは数が必要だ!」


 ヴォーグが声を上げたが、レフィクルは横目にチラと見て静かに口を開いた。



「素人丸出しだ。 余の方は余の部下と、そこの世界(ワールド)守護者(ガーディアン)と【自然均衡の神】の代行者、【魔法の神】、それと赤帝竜(ルースミア)で向かう。

 そしてここには不死王、金竜(ゴールドドラゴン)が2匹、ハイエルフの娘に【愛と美の女神】、【魔法の神】の代行者が残る。 十分であろう」


 クッと悔しそうな顔をヴォーグが見せて黙り込む中、グランド女王が自分はどうしたらいいかレフィクルに尋ねると、キャビン魔導王国に残った兵力をまとめ上げてウィンストン公国に向かうようにいわれる。



「では私は国に戻って王国にいる兵はエアロに任せてきましょう。 その後私はこちらに戻ってヴォーグ王を支えますわ」

「……好きにしろ」


 ギクシャクしてはいるがなんとかなりそうに思えた。 だが俺は神算鬼謀のニークアヴォよりもレグルスの方が何かをやらかしそうで不安で仕方がない。



「サイコパスがなんだかはよくわからんが、要するに狂信者をまとめ上げている教祖のようなものであろう。

そう言う輩は、圧倒的な力の差を見せつければ簡単に黙る」


 簡単に返され言い返す言葉が見つからなかった。

 とその時魔導兵の1人が駆け込んできた。



「報告します! 敵兵こちらに向かって進軍中です! その数、おおよそ1万です!」


 報告を受けてレフィクルに顔を向けてさもウィンストン公国奪還なんて暇ないだろうとでも言いたげに見るが、レフィクルは動じることはないどころかヴォーグを見返してさっさと応戦してこいとでも言わんばかりに手を払う仕草を見せた。



「敵が迫ってるんだぞ!」

「早く迎撃に向かえば良かろう?」

「お前はこの状況でウィンストン公国奪還に行く気か!」

「無論だ」


 先ほどから見ている限りヴォーグはレフィクルを敵視したままで、ヴォーグに口添えをしたいが俺のような素人が戦略に口を挟むのはマズイだろう。



「よかろう。 【闘争の神】、貴様の言うよう掌の上で我が踊ってやる。 その代わりウィンストン公国奪還を失敗したら、我が眷属の下僕となれ」

「フンッ、好きにしろ」


 脅しともとれる不死王が見つめる赤い目に応え、レフィクルがこの場から立ち去り出すとナータス、スエドムッサ、ログェヘプレーベも後に続く。



「何をのんびりしているんですか? ガウシアン王国奪還に向かいますよ」


 それを聞いたローラ姫がまたも「ウィンストン公国です!」と返し、後に続くと追うようにモリス侯爵も続いた。



「ヴォーグ、俺も行く。 不死王、セーラム、キャス、マルボロ王国を頼んだ」

「友の頼みだ。 応えてみせよう」

「私もサハラと一緒に行きたかったけど仕方がないよね。 うん、マルボロは任せて!」

「いてらー」


 ……ゆるいなコイツ。



「サハラ、お前はあいつを信じるのか?」

「俺は戦略とかわからない。 だけどあいつが言ったことはなんとなくわかる。

ウィンストン公国が奪還出来れば東半分が取れれば、セーラム女帝国からキャビン魔導王国まで繋がるのは重要なことだ。

ヴォーグだってわかっているんだろ?」


 ヴォーグが悔しそうな顔をしながらも頷いてきた。 きっとこの考えはあったのだろうが、奪還は無理だと思っていたのだろう。



「儂らがマルボロ王国はしっかりまもってやるわい」

「ボルゾイ、いたのか? 済まない。小さいから気がつかなかった」

「いたわい! それにドワーフに小さいとはなんじゃ!」

「悪い悪い……頼む」

「任せておけい!」


 キースとアラスカもやってきて頭を下げてくる。



「マスターのいない間我らがしっかり果たしてみせます」

「頼んだキース」

「マスター……」

「アラスカ、君はセッターの娘だ。 君の中のわだかまりを解き放て。 そうすればきっと答えてくれるはずだ」

「何が……ですか?」


 不確かなことは口に出せないだろう。 俺は手を振ってレフィクル達の後を追った。



土曜日分の3話目は後ほど夜に更新させます。

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