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戦上手

私事ながら明日と明後日は更新をお休みさせていただきます。

なので、本日3話分更新を随時していきます。

 門をくぐってもうかなり経つ。 懐かしく思えるマルボロの宮殿の庭に出た。

 庭には突如現れた魔導門(ゲート)に駆けつけた兵士とヴォーグ達が待ち構えていた。



「サハラーー!」


 俺の姿を見て駆けてくるレイチェルが目に飛び込みさっくり避ける。



「なんで避けるわけよ!」

「一応お前人妻だろ」

「もうとっくに未亡人よ! 新たな恋をしたっていい頃合いじゃないのよ!」


 ……それダメだろ。


 なおも食ってこようとしたレイチェルの目にレフィクルの姿が映り、言葉を失って口を開けっ放しになる。



「あんたがレフィクルか」

「貴様は?」

「俺はヴォーグ、現マルボロ王国の王だ」


 名の確認をしたレフィクルは興味無さそうな顔を見せ、ここに集まっている面々を確認するように見ていく。



「へ、陛下ーっ! レフィクル様! 私でやがります! ログェヘプレーベでやがりますよ!」


 兵を掻き分け叫びながら近づいてくる。 レフィクルの間近まで来ると臣下の礼を取る。 その姿は口さえ開かねば妖艶さを備えた美女なため、非常に絵になる光景だ。



「お待ちしてやがりました。 それと私の手勢でやがる悪魔(デヴィル)悪鬼(デーモン)が姿を消したということは、ついに神になり上がりやがったのですね!」


 レフィクルは黙って聞いていたが、話が一度切れたところで手で制してやめさせる。



「今より全指揮権を余が取り仕切る」


 レフィクルがさも当たり前のように言い放った。 もちろん突然の宣言に辺りは騒然となるが、そんな事は御構い無しに続けていく。



「ログェヘプレーベ、自軍の兵力及び形勢を答えよ。 それと敵兵力などの情報をよこせ」


 後から現れ、勝手に指揮権を取り仕切ると言い出したレフィクルに、黙っていなかったのはヴォーグでレフィクルに食って掛かかった。 しかしレフィクルのたった一言で黙り込んでしまう。



「ここにいるものの中で、余より大戦を経験し、その指揮を取り仕切った者はいるか?

いなければ勝たせてやるから黙って余に従え」


 確かにこの中でこれだけの戦争経験のある者は、俺とアリエル、レイチェル、セーラム、キャス、ヴェジタリアン率いるエルフ軍ぐらいなものだ。 キャビン魔導軍は代替わりして経験者はほとんどいない。 そしてこの中でヴェジタリアン以外は指揮を取り仕切った者はいない。

 そのヴェジタリアンも自分が率いるエルフ軍のみであった。


 誰も言い返せる者がいないのを確認すると、自軍及び敵兵力などの情報を訪ね出した。



「……作戦会議室がある。 そこでやればいいだろう」

「余には情報がない。 ノンビリと会議室などで話している暇があるのか?」


 またもヴォーグの意見はぶっ叩かれてしまい、この場で話し合うことになる。

 まずは敵の情報から始まり、特にレグルスと【商売の神ニークアヴォ】の情報を細やかに聞いていた。



「良い、わかった」


 そういうとレフィクルが敵兵の捕捉のために魔導兵をほぼ全員にすぐに偵察に出させるようにグランド女王に命じる。



「かすかな接敵も見逃させるな。 見つけたら直ちに報告に戻らせろ。

ここの迎撃はマルボロ軍とキャビン魔導軍で行い、その指揮はヴォーグ、貴様が取れ。

余とウィンストン公女とウィンストン軍は、エルフ軍を引き連れウィンストン公国を奪還する。 貴様らも来い。 レグルス達はそこに必ず現れる」


 何を根拠にかわからないが、レフィクルを見ると自信ありげにいるはずのない敵の方へ顔を向けニヤリとしていた。



「わけがわからねぇよ! 作戦があるならちゃんと全員に説明しろ!」


 ついにはヴォーグがブチ切れてしまう。 レイチェルがヴォーグを宥めるが収まる様子もなく、仕方がなく俺がといつめる事にする。



「ヴォーグの言い分も間違ってない。 全く知らないまま動けで、はいそうですかというわけにはいかないと思う。 何より俺達はあんたの部下でも配下でもないんだ」


 チッと舌打ちする音が聞こえレフィクルが俺に向き直り、作戦の内容を説明しだした。



 マルボロ王国はその国の作りから、他国侵略に行くのは情報が漏れやすく動きにくい。 だが、侵略してくる相手にとっては落としにくい作りになっているらしい。

 そのため2度の戦いでそれを敵も思い知っただろうというものだった。

 逆にウィンストン公国はほぼ大陸の中央に位置し、他国に囲まれた国のため非常に他国が侵略しやすく、進軍しやすいのだそうだ。



「それが一体どうしたんだ?」

「ヴォーグ王、つまりレグルスは、【商売の神ニークアヴォ】は2箇所から攻め込める態勢を整えているという事ですわ」


 グランド女王もそれを危惧していたため、短期決戦に臨みたかった理由でもあるそうだ。



「ですが【闘争の神レフィクル】、防衛と進軍を同時に行うのは戦力を分けてしまうから良策ではないと思いますわ」

「お言葉ですがグランド女王陛下、古来より守りに入って勝った戦争はございませんよ」


 ルベズリーブが気味の悪い顔を気にすることなく晒しながら指摘してくる。



「それにあそこは元々レフィクル様が治めるガウシアン王国だ!」


 ナータスも大柄な体躯をより大きく見せながら自身満面に叫ぶように言った。



「……今はウィンストン公国です!」


 ローラ姫が気丈に言い返したがレフィクルはそれを「それも元、だ」と現実を叩きつけてきた。



「だが安心しろ、あの地を奪い取った暁には貴様にくれてやる」

「まぁ今のレフィクル様に土地は無意味なものになりましたからねぇ」



 このやりとりを見ていてここに居るどれだけの人が気がついただろうか。

 今ここに居る誰もが、今は不安を感じておらず、それどころかまだ奪還していないウィンストン公国のその後の話をしていた。

 レフィクルの戦上手は策でも武力でもなく、この何か人を惹きつけるような力と、レフィクルがいれば大丈夫だと思わせる安心感を与える力なのかもしれない。


 ……末恐ろしいな。



本日分です。


当然のことながら、レフィクルとの大戦以降大きな争いごとがなかった為、今いる人々は戦争の指揮をとる様な実戦経験者がいません。

グランド女王はキャビンの意思を受け継ぐ為、知識だけはあるといった程度です。

そこに現れたのがレフィクルで、短かったとはいえ一度は大陸を制圧したほどの指揮能力を有しています。

さてこれから神算鬼謀の【商売の神】とレフィクルの戦略比べがはじまります。


なーんて凄そうなことを書いていますが、上手に描ける自信はないので、読者様方で脳内補完をしていただく必要があるかと思います。


というわけで、夕方ごろ金曜日分を更新させます。


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