死極からの帰還
第13章最終話です。
「じゃあ行くぞ」
俺が確認を取り何もない空間に鍵を差し込み扉を開く。
誰しも死にたくないのでルースミアに倒されたレフィクルには触れないようにしているようだ。
試合はこうだった。
開始の合図のあと高速移動で、一気に間合いを詰めに行ったレフィクルが短剣でフェイントからの攻撃に転じようとしていたんだと思う。
ルースミアはそのフェイントにもろに引っかかってしまい、大振りをして大きな隙が出来てしまう。
そこへレフィクルが一撃を入れようとした時だ。 ルースミアがレフィクルの突き出した短剣を持つ腕にガブリと噛みつき、そのまま捻って地面に叩きつけてパンチの応酬をしでかした。
全容が見えていた俺から見ても、あれは相当屈辱的だったと思う。
ただレフィクルの誤算は戦う相手が人の姿こそしているが、ドラゴンであるということを忘れていたことだろう。
動物などの噛みつきを行う生物の大半の反応速度は常軌を逸した速度で、その速さは人では躱すことすら難しいものだ。
ルベズリーブ曰く、あそこまで完膚なきまでに敗れたレフィクル様を見たのは初めてだという。
チラとレフィクルを見ると何事もなかったような顔はしていたが、微かに歯噛みしている様子を俺は見逃さなかった。
レフィクルがそもそもルースミアに挑もうとしただけでも十分立派なことであって、勝とうなどと思った時点で愚かな事だ。
例によって先が見えない扉の先に踏み込み進む。
真っ暗な先を抜けるとそこにはバルロッサが待っていて、振り返ると巨大な死極の門が口を開けていた。
「小僧、見事達成したようだな」
「ええ、なんとか。 それと……」
アリエル、エラウェラリエル、ルースミアと次々と姿を見せ、レフィクル達の姿が現れたところで敵ではないと言おうとしたが、バルロッサがわかっているとでも言うように俺の肩に骨の手を乗せてくる。
「【闘争の神レフィクル】、 儂は【死の神ルクリム】の代行者バルロッサだ」
知っていたのか。
どうやらルクリムから既に通達があったようだ。
ルベズリーブがキョロキョロしているとバルロッサが睨みつけながら警告する。
「そこの虫人、この地を記憶使用など思うなら儂の部下の仲間入りさせるぞ」
骨の指でルベズリーブを指差す。
「偉大なる魔導王バルロッサに逆らうつもりはありませんよ。 むしろ出会えた事を光栄に思います」
そう言って素直におとなしくなる。
ノンビリしたかったがそうも言ってられず、エラウェラリエルに頼みマルボロ王国に魔導門を出して貰おうとするとレフィクルが俺に待てと言ってきた。
「3人は今どういう状況だ?」
「ん……どういうって……」
返答に困りアリエルを見るが困った顔をみせるため、エラウェラリエルを見るとサッと顔を背けられてしまう。
「そこの3人は現状【闘争の神】、つまりお前のゴッドハンドだな」
という事はアリエルが一時期なっていたのと同じ状況なんだろうか? それを訪ねてみた。
「代行者の時のゴッドハンドとは違うんですか?」
「似たようなものだ。 神のゴッドハンドは呼ばれはいいが、ただの神の盾でしかない。
仮に神が死ぬことがあれば代わりに死なせ息伸びるためのものだ」
以前アリエルが俺のゴッドハンドになった時と同じで、恩恵としては定命「モータル)ではなくなる。 最も俺とアリエルの時は真円の指環の力で付随した能力も与えられていた。
ということは3人の命はレフィクルの生死にかかってくる事になる。
「それはラーネッドも同じという事か?」
「勿論」
「なら、余が死なねば良いだけだ」
納得したようにレフィクルが答え、俺に顎でいいぞとでも言うように合図してきた。
……偉そうな奴だな。
「それじゃあ師匠、もう悪魔の心配はほぼないと思うけど門の方を頼みます」
「おう任せておけ。 儂も本当は共に行きたいところだがこればかりは仕方があるまいからな」
そう言ってバルロッサが骨の手を振ってきた。
今度こそエラウェラリエルが魔導門を使ってマルボロに繋がる。
「行くぞ! マルボロへ!」
明日から第14章に入ります。 ですが相変わらずタイトルが決まってません……
気になっている人がいるかもしれませんので一応こちらで書いておきます。
アリエルがサハラを“あなた”と呼ばないのはエラウェラリエルとルースミアの手前控えている。といった理由からです。
あとはルースミアは別として、アリエルとエラウェラリエル2人からあなたあなただとわけわからなくなるかもと思ったためです。
フェンリルとイフリートに関しては、レフィクルには一応秘密にしておこうとサハラが出てこないように命じています。
なんかまとまりないですが、こんなところで……f^_^;)




