【闘争の神レフィクル】誕生
そうなると今度は俺が約束を守る番になる。
「ルクリム、【死の神ルクリム】、あんたはここに来れるし見ているんだろう?」
そういうとルクリムが姿を現し俺に頭を下げてきた。
「少々危なげではありましたが、おおよそ1間30分ほどで無事交渉を取りまとめてくれましたね」
少しばかり嫌味がこもっている様に感じたが、以前あった頃より感情と親しみが感じられた。
「レフィクル、本日今この時をもって【闘争の神レフィクル】となりました。 今まで貴方が心象を力としていた悪魔王としての力は失い、新たなる【闘争の神】としての力を得ている事でしょう。
そして3人には【闘争の神レフィクル】が責務を果たした後に神界へ来てもらいます。
……もっとも、それまでに死ななければ、ですけどね」
「死の天使はもう使えぬという事か。 だが、自我を失う心配は無くなった……と」
レフィクルは新たに神となって手にした力を確かめているようだった。
ルクリムはルクリムで俺と違い、レフィクルと3人に感情を一切感じられない冷たい口調だ。
ルクリムが必要な事を言い終わると、レフィクルの兵達である元ガウシアン王国兵を一箇所に集めさせると、まるでお経の様なものを唱えはじめる。
「出でよ輪廻の渦! あるべき者をあるべき場所へ還し、生きかわり死にかわらせん! 渦よ、車輪の如く回転し極まりがないようその魂を流転させよ!」
最後に一箇所に集まるガウシアン王国兵片手を突き出し叫ぶと、兵士達の足元に渦が現れゆっくりと兵士達を引き込みはじめた。
「貴様等は勇敢であった。 今日までガウシアン王国兵として余によく尽くしてくれた。 礼を言う!」
徐々に渦に飲まれながら、レフィクルのその労いの言葉を聞いたガウシアン王国兵達は涙し、敬礼をしながら渦の中へと消えていった。
気がつけばアリエルとエラウェラリエルが俺に顔を埋めている。 もしレフィクルが狂王として悪い噂ばかり世間に広まっていなければ、マルス以上の王になっていたかもしれないだろう。 そう思わせるほど俺も心を震わされた。
「世界の守護者サハラ、貴方は貴方の成すべき事を急ぎなさい。
レグルスの軍が迫ってきています」
そんな光景も御構い無しに【死の神ルクリム】は俺の方へ向いて言ってきた。
「少しは感動したとか感じたりしないのか?」
「このような光景を私がどれだけ見てきていると思っているんですか?」
そうだろうけどさ……
用事が済んだとばかりに【死の神ルクリム】が姿を消し、残ったのは俺とアリエル、エラウェラリエル、ルースミアにレフィクル、スエドムッサ、ルベズリーブ、ナータスだけになる。
「ルベズリーブ、ここは崩しておけ」
「わかりましたよ。 これは私の努力と涙の結晶なんですけどねぇ」
ルベズリーブが魔法を詠唱して石で作られた城が消え、町を形成していた石も次々と消えていき死極らしい荒涼の地に戻っていく。
「作り上げるのにあれだけかかったものが、失うのは一瞬だったな」
ナータスがルベズリーブを慰めるように肩を叩いていた。
「そう言えば自己紹介をちゃんとしていなかったな。
俺とルースミアは先程言った通りで、こっちにいるのがエラウェラリエル、あんたと同じく【魔法の神】だ。 そしてこっちがアリエル、【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者だ」
「無駄な馴れ合いは良い、さっさと方をつけに行く」
神になったからと言え、レフィクルの性分は変わらないようだ。 肩をすくめてやれやれと仕草を見せ、死極を出る鍵を取り出そうとする。
「レフィクル様、自己紹介は確かにどうでもよろしいがお互い戦力を知っておくのは大事かと思いますよ。 それと敵の情報も……私が必要ですからねぇ」
「ふむ……勝手にしろ」
というわけで自己紹介……戦力を教えてくる。
ルベズリーブは蝿の虫人で見ての通りウィザードであり、卓越した頭脳の持ち主のようだった。 俺が手を差し出すと驚いた顔を見せる。
「気味悪がらないのですか?」
「戻ったら気味悪がる奴もいるかもしれない。 だけど、これからは一緒に戦う仲間だろ?」
ルベズリーブは俺をじっと見つめた後、俺の手を握ってきた。 その手は細やかな硬めの毛が生えていて本当は気持ち悪かったが、自分から差し出して拒否は失礼だと我慢したのは内緒だ。
続いてナータスで、ドラゴンキンと言われる竜の遠い縁続きにあたる種族と獣人のハーフだそうだ。 竜の血を薄からず引くため赤帝竜の眷属力は効果があるらしい。 そして吹き出しそうになったのをなんとかこらえたが、黒竜の姿になっていられるのは3分ほどらしい。
ルベズリーブ同様手を差し出して握手を交わすが、笑いをこらえているのがわかったのか不思議そうに尋ねてきた。
「何がおかしい? ですか?」
「悪い、思い出し笑いだ。 それと今後は無理して丁寧な口調で話してもらわなくていいぞ」
「そ、そうか、いや、やっぱりやめておく、ます」
俺の背後に目を向けて慌てて言い直していた。
最後にスエドムッサだが、半端な暗殺者らしい。 暗殺者は通常しきたりだかで親しい者を殺さなければならないが、スエドムッサはそれをしていないため、技術は暗殺者として備わっているが、感情を殺すまでは至っていないという。
スエドムッサは俺が手を差し出す前に手を出してきて、俺が手を握ると嬉しそうな顔を見せ、喉をゴロゴロ鳴らしながら両手で握ってきた。
「これから、宜しくお願いします」
「あ、うん、こちらこそ」
背後から感じる殺気は今は気にしないでおき、後ほど〆られる覚悟する事にした。
「よし、じゃあ行こ……」
「待て。 せっかくの機会、一度くらい貴様と赤帝竜がどの程度か闘っておきたい」
レフィクルが俺にそう言ってきた。
少しばかりレフィクルがいい人っぽくなりすぎている気がする今日この頃の私ですが、皆様はこの展開は嫌だったでしょうか?
そういえばこの章のタイトルまだ決めてなかった……




