楽しかった夢の日々
第12章最終話です。
朝食はマンション1階に入っているMバーガーで朝Mを4セットを俺1人で買いにいって戻る。
ここでも三者三様の声が上がったが、もうだいぶ慣れはじめてきた。
朝食も済ませ今日はこの後どうしたものかと思案する。
「サハラさん、あたし達のためにそんなに無理しなくてもいいよ?」
「うむ、我はサハラがいればいい」
「それに……サハラさん忘れていませんか?」
エラウェラリエルが覚悟を決めた様に俺に伝えようとしてくる。
「エラウェラリエルさん、それはまだいいんじゃないかな?」
「我ももう少しこの時間を楽しみたい」
「そう、ですね……」
3人がわけのわからない事で納得し合っている様だ。
どちらにしても会社はインフルエンザという仮病で年始までたっぷり時間がある。 俺はドルイド魔法で女体化して服を着替え直し、3人にも出かける準備をさせてマンションを出た。
「主よどこへ行くというのだ?」
「たぶん楽しいとこだよ」
初めて乗る電車に驚き、その移動速度に驚く姿を楽しみながら3人を連れてある場所に向かう。
「えっと、動物公園?」
「あの大きい車輪の様なものは何ですか?」
「嗅いだ事のない獣の匂いがするな」
そう、有名な動物公園に連れてきた。 入り口を入りちょうど入り口の反対に当たる西園までバスで向かい動物園から回る。
ホワイトタイガーやキリンやゾウ、サイ、カバなどを見て回り、アリエルとエラウェラリエルが初めて見る動物を見て喜ぶ姿を堪能し、ルースミアに怯える猛獣の姿を見て俺は大笑いをして楽しんだ。
もちろん動物が目当てだった他の客の視線を一身に浴びたのは言うまでもない。
「どれも初めて見る獣ばかりだわ!」
「キリンという獣はなんであんなに首が長いんですか?」
「主があんなに笑う姿は初めて見たぞ」
「そりゃそうだよ、ライオンやホワイトタイガーが尻尾巻いて逃げる姿なんかまず見られないからな」
動物園はパパッと回ったが昼になり適当に売店で買ったものを芝生に座って食べた後、エラウェラリエルが気になっていた大観覧車の列に並び乗り込み、子供の様にはしゃぐ3人を見つめ、嫌がる俺を無理矢理絶叫マシンに乗せられ歓喜する声も聞けた。
時折エラウェラリエルが俺に何か言いたそうな顔を見せたが、聞いても答えないため気にしない事にしてその後も乗り物に乗ったり、スワンボートに乗って何故か速度バトルが勃発して後で係りの人に怒られたりした。
「今日は楽しかったー!」
「絶叫マシンでしたっけ? あれ気持ちよかったですね」
「ぐるぐる回るカップは目が回るだけで何が楽しいのかわからなかったぞ!」
なんだかんだで3人も楽しんだ様で感想を言い合っていた。
「明日は朝早いからな?」
「どこか行くの?」
「夢の国だ」
「夢の国、ですか?」
「我には今が夢の世界だがな」
そう、明日はネズミーランドに行くつもりだ。 3人が喜ぶかはわからないが、あそこには何故かワクワクさせる力があるのだ。
翌日宣告した通りネズミーランドに行き、パレードを見たり、乗り物に乗ったりと3人も不思議な力に乗せられはしゃぎながら楽しんでいる様に見える。
グリーティングでプリンセスと写真を撮った時は、一斉に無関係の人達から写真を撮られまくったりもした。
その後は年を越し仕事をしながらも楽しい日々を過ごしていき、無事? ルースミアも発情期を迎え3人で愛し合う様になり、これが永遠に続くかと思われた。
そんな日々が続いき、ルースミアも発情期が過ぎても俺を受け入れる様になってくれた。 もっとも本人曰く「全くもって無駄な交尾だがサハラと繋がれるのは嬉しい」という理由らしく、快感を得ているわけではなさそうだ。
そんな1年ほど経った頃の夜のことだ。 3人が俺と愛し合い眠りにつこうとした時にエラウェラリエルが俺に申し訳なさそうに口を開いてきた。
「サハラさん……今日までとても楽しい日々でした。 正直なところ何も言わずにこのままこうして過ごしたかったんですけど……立場上そういうわけにはいきませんので……」
「なんで過去形なんだ?」
「忘れてしまいましたか? ここが死極で門をくぐった理由を……」
エラウェラリエルの言葉で思い出す。 だが理由までは思い出せなかった。 それを察したエラウェラリエルが、俺がレフィクルの説得しに来たことを思い出させる。
だがこの夢の様な時間から抜け出したいなんて誰が思うだろう。
「サハラよ、主がこのままここに居続ける事を望むのであれば、我は主と共にい続けるぞ」
「あたしは……あたしもずっとここに居られるのなら居たい。 だけど……」
「それは私だって同じです! この時間とても楽しかったです。 だけど……」
正直なところこのままずっとここに居たい。 何もかも忘れて4人で居続けたい。
「これは言いたくはなかったのですが……サハラさん、私達もサハラさんももうこの世界の住人じゃないんです!」
この世界の住人じゃない……いや、アリエルやエラウェラリエル、ルースミアは違うかもしれないが、俺はこの世界の住人だ。
だって俺は何一つ変わってないじゃないか?
いや……今の俺はドルイド魔法も修道士の力も所有したままのこの世界にあらざる存在……
「俺は、もうこの世界から弾かれた存在なんだな……」
エラウェラリエルが申し訳なさそうに頷いた。 女神が言うんじゃ間違いないんだろう。
「そっか……そうだよな。 これは死極が俺を留まらせようとする力で起きた奇跡で、本当の元の世界じゃないんだよなぁ……」
エラウェラリエルはまるで自分が悪いかの様に顔を背けて爪を噛んでいる。
大事な俺の嫁をこれ以上困らせるわけにはいかないだろう。
「行こう、レフィクルのいる場所に」
「サハラさん……」
申し訳なさそうにするエラウェラリエルの頭を撫でる。
「ウェラそんな顔するなよ。 別にここを抜け出たからといって、この1年間の思い出やウェラや2人に会えなくなるわけじゃないだろ?」
この1年間を思い返していると、3人も同じ様に見えた。
「行こう、俺達の世界で俺達の成すべきことをしに!」
そうと決まれば準備をしないといけない。 この世界の物は今度は全て置いていくことにして、洗ってしまっておいた冒険者の服を取り出し着替え始める。
「え! この服と下着持っていっちゃダメなのかな!? 元の世界の下着姿より色っぽいでしょ?」
「私もホールディングバッグにシャンプーとボディソープは持って行きたいんですけど……良い匂いの方がサハラさんは嬉しくありませんか?」
ルースミアはルースミアで、訴える様な顔でこの世界で初めて欲しがった、ネズミーランドの縫いぐるみ数個を奪わせないぞとでも言わんばかりにギュッと抱きしめている。
「お、お前ら…………」
結局俺以外は思い思いの品を自分達のホールディングバッグに詰め込む。 ルースミアの縫いぐるみは俺の鞄の中だが……
ホクホク顔の面々を見ながら準備が整い、元の冒険者衣装にローブと懐かしく感じる着心地の悪い姿になった。
「それでどうやったらここから出られるんだ?」
「サハラさんが出たいと思えば鍵が現れるはずです」
「そういやこの世界に来て鍵が無くなってた事も忘れてたよ」
名残惜しみつつも目的を果たすために行くんだと思うと、俺の手元に鍵が現れた。
「それじゃあ行くぞ! 心残りはないな?」
「無いと言ったらもちろん嘘になるわ」
「平和で楽しかったですもんね」
「うむ、夢の様な日々であったな」
それぞれが万感の思いを口にする。
何も無い空間に鍵を差し入れると鍵がはまった感覚があり、捻るとガチャリと音がして扉大の空間がゴッソリとスライドして動き、その先は暗闇が広がっている。
「行こう!」
修道士特有の呼吸法をし、感知と予測を使ってから最初に俺が暗闇の中に入り込んだ。
外伝にしていればもう少しとも考えましたが、別に戦いもなく終わろうと思わない限り続けられそうな逆転移のような話を描居を続ける自信がありませんでした。
なので打ち切るような形になりますが、終わりにさせます。
明日から第13章に入ります。
あと、文章力がないのは重々承知していますので、直したほうがいいところなどありましたらご指摘して貰えると成長に繋がると思うので、そう言う感想もお待ちしています。
ただその際は具体的に書いて貰えると理解しやすいのでお願いします。




