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初の外食

 部屋に戻り早速服を着替えて楽しむアリエルとエラウェラリエルだが、ルースミアは退屈そうにしている。



「ルースミアはいいのか?」

「我は主が着ろというから着ているだけだ。 あいつらの様にどれがいいとかさっぱりわからん」

「そっか」


 じゃあとルースミアを抱き寄せて頭を撫でてやると、仏頂面から目を細めて気持ち良さそうな顔に変わる。



「あー! ルースミアさんズルいです!」

「ちょっといつの間に……」

「だってお前ら試着楽しんでたろ」


 そういうとアリエルとエラウェラリエルが思い出した様に服の着心地とかの感想を言い始めた。 そりゃああっちの世界じゃあり得ない素材だ。

 改めて自分達で選んだ服に着替えた姿を見ると、何処かの国のモデルさんにしか見えない。


 何はともあれ、これで服装まで整った。 あとは少しづつこの世界のルールとかを覚えてもらうしかないだろう。


 それはそうと仕事はどうしようか。

 とりあえずはこいつらを放ってはおけないし……初めて使うが、インフルエンザにかかったとでも連絡しておけばいいだろう。


 となれば来年の年始明けまでフリーだ。




「よぉし! それじゃあ夕飯にするか! どんなのが食べたい?」

「どんなのと言われても、あたし達サハラさんの世界の食べ物の事何も知らないわよ?」

「そうですね、今朝食べた物でも十分美味しかったですし」

「我は肉が食いたい!」


 さすがルースミアだ。 アリエルやエラウェラリエルのような言い方をされると何がいいか余計に困るが、ルースミアのようにストレートに言って貰えると選びやすいというものだ。



 という事で早速3人を連れてマンションを出る。 ルースミアは食事で帽子が邪魔にならないように今回はニット帽を被ってもらってある。

 お店まで歩いて行く間やはり注目を集めたが、こればかりは俺が慣れるしかないだろう。 そして辿り着いた場所は独り身では入り難く、更にはお祝いとかでもない限り行くことがないようなお店だ。

 俺自身初めて入る店だったが、中はシャンデリアが各テーブルにぶら下がり、光で隣のテーブル遮断しているような作りになっていて非常に落ち着いた雰囲気のお店だ。

 黒服が予約を確認してきた。


 ……しまった! そういうのが必要な店だったのか! という事はこの格好は不味かった。



「予約が必要だと知らずすみませんでした」


 そう言って店を出ようとすると、慌てて席は空いているので大丈夫と言ってきた。


 ……なら先にそう言え。



「こちらへどうぞ」


 黒服に連れられ4人掛けのテーブルに連れて行かれ、座ろうとすると何処から集まってきたのか4人の黒服が椅子を引いて座るのをエスコートする。

 席は一応俺の横にルースミアに座らせ、何かが起きた時に備えられるようにする。



「な、なんか、あたし達お姫様みたいね」

「気分がいいぞ」

「なぜか緊張しますね……さは、サラ?」


 想像と違った。 メチャクチャ高級レストランじゃねーか。

 恐る恐るメニューを開くとやはり全て英語で書かれていて読めない。 しかし今までと違い俺にも魔法がある。



言語読解(リードランゲージ)


 おおお! 見える見えるぞ! じゃなくて読めるぞ!


 黒服に1人諭吉が1枚ちょっとかかるコース料理を頼み、これに合うワインを頼んだ。


 綺麗に織り込まれたナプキンを広げて膝に引くと3人も同じように真似をする。

 最初のオードブルが運ばれ、俺がフォークとナイフで食べ始めると3人も真似て食べだす。



「お、美味しい!」

「何だこれは! 初めて食ったぞ」

「上品な味ね」


 好評のようでよかった。

 黒服がワインを持ってきて俺のグラスに少しだけ入れる。 それを慣れた手つきでテイスティングし、頷くと俺と3人にも注いでいった。



「これがワインなの!?」

「凄く芳醇で深みがありますね、美味しい」


 ルースミアは1口飲んだ後、一気に飲み干した。



「主よ、これは美味い!」


 空になって物悲しそうな顔をしていると黒服が継ぎ足す。



「まだ料理も来るからワインばかり飲んでると美味しい肉がわからなくなっちゃうぞ?」

「むぅ、それは困るな」


 その後も次々と料理は運ばれ、上品に食べるアリエルに、真似ながら緊張しながら食べるエラウェラリエル、運ばれてものの数秒で食べきるルースミア。

 ついにメインディシュの牛肉のステーキが運ばれてくる。



「い……サラ、あたしもうお腹いっぱいだよ」

「私もそろそろキツイです」

「それなら我が貰うぞ?」


 うん、こういうコース料理ってメインディシュが来る頃にはお腹いっぱいになってるんだよねぇ。

 いいお肉だから一口だけは食べて、無理そうならルースミアにあげるように言う。



「うっわ、柔らかいなにこれ肉なの!?」

「スジっぽさとか全くなくて、口の中で溶けるようですね」

「これは美味いな!」


 それぞれステーキに感動はしたようだが、俺もアリエルもエラウェラリエルもお腹が限界が近かったため、空になったルースミアのお皿と交換して食べてもらう。

 ルースミアがそれを次々と美味しそうに丸呑みの勢いで食べていく姿を見るとこのお店に連れてきて本当によかったと思った。


 最後のデザートと飲み物の時にコーヒーか紅茶かを聞かれる。 本当はコーヒーが良かったが、3人はコーヒーは飲んだことがないから飲めないだろうと思い、紅茶を頼むことにした。



「主よ、そのコーヒーというのはなんだ?」

「豆を煎ってそれを粉にしたものを抽出した飲み物だよ。 慣れがいるから紅茶にしておいた」

「ふむぅ」


 デザートが運ばれ、紅茶も置いて行かれるとエラウェラリエルが超反応を示す。



「とてもいい匂い。 これが紅茶ですか?」

「うん、好みで砂糖とレモンかミルク入れるのもいいよ」

「このふわふわしたの甘くて凄く美味しい!」

「口当たりが良くて、紅茶とも合いますね」

「うむ、どれもこれも美味しいものばかりだった」


 3人が食べ終わるのを見つめながら、俺は幸せを感じていた。 だがそう思う反面何かとても大切なことを忘れている気がしてならなかった。



「食ったぞ。 実に美味かった」

「もう何も入りません」

「そうね〜こんなに美味しいの初めて食べたわ」

「よし、じゃあそろそろ出るか?」


 通りかかった黒服を呼び止めて支払いを済ませ店を出る。 店の出口まで黒服が見送りに来ると3人がそれぞれ頭を下げたり、手を振ったり、美味かったぞと答えていた。


 少し恥ずかしいがまぁいいか。



 マンションまで戻る頃はもう夜も10時を回っていたが、駅徒歩3分圏内のマンション近辺はまだまだ明るく人集りも多かった。



「皆んな寝ないのかしら?」

「夜なのに街は明るいままですね」

「……眠い」


 そんな感想を言いながら部屋へと戻っていった。


 珍しくルースミアがぽやーんとして寝そうだ。 通常であれば脳の半分づつ眠らせて寝ることがないはずなのだが、まぁワインをかなり飲んでいたからだろう。 服は脱いでおくように言うと、いそいそと脱ぎ捨て素っ裸になると敷いた布団にサッサと潜り込んで眠ってしまった。



「ヤマタノオロチに酒なわけだ」

「何ですかそれ?」

「昔話みたいなものかな? さぁ俺達も風呂入って寝よう」

「イチャイチャは?」

「すまん、俺も疲れた」

「お疲れ様でした」

「うー、まぁしょうがないね」


 何とかアリエルとエラウェラリエルを風呂に入れて布団に潜り込むと一瞬にして意識が遠のいていった。



第12章は7話で抑えたので、残り2話となります。


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