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次のターゲットは俺

 休憩時間の鐘が鳴っても戻らない俺を心配したのかアリエルから繋がってきた。


『サハラさん戻ってこないけど無事?』

『大丈夫だ。それより身体の方は異常ないか?』

『異常?』

『煙の匂い嗅いだだろ?』

『そうだ! サハラさん怒らないで聞いてね。

何であの煙を嗅いだらいけないの?』


 そうか、麻薬という存在が無かったから麻薬の恐ろしさが分からないのか……


『それは後で教えるよ。それよりどれぐらい嗅いだ?』

『えっと、昨日2回と……休憩時間にみんなと1度……』


 マズイな、もう依存し始めているのか? それとも麻薬の恐ろしさがわかってないからだけなのならいいんだが……


『ゴメンなさい……ダメって言われたのに嗅いじゃって……』

『とりあえず何があっても、もう2度と嗅ぐなよ』

『う、うん』

『とりあえず俺は大丈夫だから話は後でだ』

『分かった』


 そこで繋がるのをやめてレグルスを見ると俺をジッと睨むように見ている。


「ゴメンなさい、少し考え事してました」

「人が話をしている時に考え事をするなんて失礼だ! 絶対に許されないことだぞ!」

「ご、ゴメンなさい」


 急に怒鳴られ、驚いた俺は謝るだけしかできなかった。


「俺の話がそんなに面白くなかったかな? それとも俺と一緒にいるのが嫌だった?」

「そ、そんな事ないですよ」


 そう答えるとまたレグルスがジッと見つめてくる。そして突然手を振って歩き出した。



「じゃあね。そんな態度されたら案内する気なくなったよ。バイバイ」


 ええええええ! おい、ここどこだよ!


「待ってください、レグルスさんここ私どこかわからないんですよ!」

「地図でも見たらいいんじゃないですか?」



 興味なさそうに吐き捨てるように言われて、慌てて地図を取り出す。大体の位置を感知(センス)で確認していくが、非常にわかりにくい。おそらくわざとそういう場所に連れて行かれたのだろう。



 まぁいい、最悪レグルスがいなくなってから修道士(モンク)の奥義とも言える虚身を使って、自身の身体をエーテル化させて壁を抜けて行けばいいさ。それにしても信じられないぐらい無責任な行動をする奴だ。


 そんな事を考えながら、レグルスが立ち去った方角に歩いていく。曲がり角を曲がったところでレグルスが待ち構えていて、俺を見てニッコリ微笑む。


「驚いた?」


 感知(センス)を使っていた為、曲がり角の先にレグルスが待ち構えていたのには気がついていたが、あえて驚いたふりをしておいた。


「び、びっくりしました。置いて行かないでくださいよ!」

「サーラさんの驚く顔が見てみたかったんだよ」


 そう言ってくるレグルスの言葉と行動が理解できず、こっちの頭が痛くなってくる。


「サーラさん……怒った? もし怒らせちゃったらゴメン。本の悪ふざけのつもりだったんだ」

「悪ふざけにもほどがあります!」

「ゴメン!」


 ここでプンスカ怒ったところでコイツの思う壺か?


「もう良いです。教室に連れて行ってください!」

「本当にゴメンね。そうだ! お詫びに後で良いもの見せてあげるから許してよ」

「良いもの?」

「うん! 夕飯食べたらついてきてよ」

「はぁ……?」


 きやがったな。これで2人きりになって洗脳しようって魂胆か。

 それにしても面倒だ。アリエルの洗脳は解けたんだから、本当なら引きずってでも神殿に連れて行けば良いんだが、魔道学院(ここ)でそれはさすがに無理がある。

 次の長期休日まであと5日か、その間に正体がバレないようにしつつ、アリエルが再度洗脳されないように見張るのは骨が折れそうだな。魔物や悪魔と戦っている方がよっぽど楽だぞ……



 教室まで戻ったレグルスと俺を見て、アダーラやサルガス達が近寄り学院の案内されてどうだったかを聞いてきた。アリエルは言われた通り洗脳されているフリをしてあまり俺に近づかず、話しかけようとしないスタイルを取っている。話に合わせるように返事をしているとアリエルから繋がってきた。


『サハラさん無事?』

『洗脳されるとどうなるのかよく分からないから多分としか言えないな』

『……ゴメン』

『そういう意味で言ったんじゃないよ。アリエルは覚えている限りどうなって行ったんだ?』


 あまり気分の良い内容では無かったが、リバーシを終えた最初の日にはレグルスといて褒められると嬉しくなるんだそうだ。そして日を追うごとに、怒られないように、喜んでもらえるように、褒めてもらおうとしたくなってきたと言う。

 それを聞いて俺自身を思い返すと、少しづつではあるが、怒られないようにしようと返事を返していた様に思うとゾッとした。


『今晩、呼ばれたよ』

『行ったらダメだよ!』

『分かってるんだけどな、断り切れなかった』

『サハラさん!?』



 そこに学長(キャス)が教室に入ってきた。


「えーと、アリエルさんとレグルス君、それとドゥーぺ君一緒に来て。その後でサーラさん、まだ寮の部屋を割り当てられてないから来てもらうね。

じゃあ最初に呼んだ3人はついてきて」



 1時間ぐらいした頃だろうか。3人と学長(キャス)が戻ってきて、次に俺を連れて学長室まで連れて行かれる。中にはグランド女王も待っていた。



「一応2人で魔法の目で見ていたんだ。音は聞こえないから観れただけだけどね」


 アリエル達はとりあえず騒ぎが起きたから注意しただけらしい。寮の話で俺だけ呼ぶのはグランド女王がわざと避けたんだそうだ。


「あの子、かなり危険ですわね」

「やっぱりそうですか?」

「ええ、かなり手慣れた感じに見えました」

「そうすると夕飯の後呼ばれていますが、行ったら危険ですか?」

「それは大丈夫だよ。とりあえず部屋が決まるまでの間、アラスカと一緒の部屋ということにしたから」

「問題はアリエルさんね」

「え? 洗脳は解けているんですよね?」

「確かに洗脳は解けています。けど残念ですがまだ非常にかかりやすい状況のままです」

「それと麻薬の依存が少し見られたよ」

「ああ、確かに。どうしたら良いんだか」


 そこでグランド女王が策を講じたそうだ。それによると、俺はアラスカと部屋を共にすることで夜にレグルスと2人きりの状況から守れる。アリエルはグランド女王が警備兵を率いて連れ出すそうだ。


「理由は何ですか?」

「独房に入れられている人物(俺)が、あの時一緒にいた女性は恋人だと言い張り、捕まっていたのを助けたと言うので、本当かどうかを確かめるためですわ」

「なるほど、ですがそれも一時でしか無いですよね?」


 するとグランド女王がにこやかに微笑みかける。


「サハラ様次第よ」


 そう訳のわからないことを言ってきた。



お次はサハラが……

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