ラーネッドという女
以前ブリーズ=アルジャントリーが話した事がある。
『凄腕の暗殺者アサシンを何度か送り込みんしたが、失敗に終わったのか、変化が起こる事はありんせんでありんした 』
俺はその時一緒に話を聞いていたレイチェルを見ると、レイチェルも覚えていた様で頷いて返してきた。
「もしかしてラーネッドは、アルが昔言っていた暗殺者なのか?」
「はい、ラーネッドは未来から送り込んだおしまいの暗殺者でありんすぇ。 優秀な人で裏切る様な事は絶対にあり得ないはずでありんす!」
いや、見事に裏切ったようですね。
ログェヘプレーベは囚われたラーネッドがレフィクルに聞くもおぞましい仕打ちを受けた話をし、セーラムはあまりの内容に俺にしがみついて離れなくなり、レイチェルとエラウェラリエル、ローラ、グランド女王は顔を青ざめさせて今にもリバースしそうだ。 ブリーズ=アルジャントリーは怒りが勝ったのか怒りに震えている。
腹に子がいるベネトナシュをこの場にいさせなかったのは正解だ。 もちろん護衛としてリリスがついていて、何かあれば不死王と意思疎通できるらというから安心である。
赤帝竜は気にしていない……というよりは暇そうにしている。
俺を含む男性陣もそのおぞましさにひいていたが、たった1人ヴォーグだけが俺様をいきり立たせ興奮していた……
「だけど、そんな事までされて何でラーネッドはレフィクルの妻になんかなったんだ?」
「さぁ、それは私にもわかりやがりません。 何しろその頃私はセイバートゥースの領主を任命されてやがりましたからね」
ふふんと少し自慢げにログェヘプレーベは言うが、それは肝心なところはわからないと言っているも同然だった。
だがどちらにせよこれでレグルスが代行者に対抗できる事を知っているのも頷ける。 あとはラーネッドがどこまで未来の話をしたかというところか。
「お前達はどこまで知っているんだ?」
「ほとんど知りやがりません。 これは本当でやがりますよ。 なぜならレフィクル様が常々こうおっしゃってやがりましたからね。 先の世を知ったら愉しみが無くなりやがる、と」
……レフィクルのお陰でどうやら俺の事やキャスの事は知らないで済んだ様だ。
「ならなんでレグルスの事を知っていたんだ?」
「ラーネッド様は誰にも言わない様にと私だけにそっとお話になられやがりました。 理由はレフィクル様やルベズリーブ達が死極に封じられやがるが、私だけが逃げ延びれやがるからだそうです。 そして代行者に対抗出来る存在がいやがることを教えてくれやがったのです」
ブリーズ=アルジャントリーはそこまで喋った、裏切り者ラーネッドに対する怒りをログェヘプレーベにぶつけるかの様に問いただす。
「どうして何だぇ! あれだけ苦しい毎日を今日は生き延びれたって言いながら戦いの日々を過ごしてきたのに、なんでそんなに簡単に裏切ったんでありんすか!」
ログェヘプレーベにそれをぶつけるのはお門違いだろうとは思ったが、ブリーズ=アルジャントリーはただ単に怒りのはけ口がなくなってログェヘプレーベに当たっているんだろう。
「一応確認させてもらいやがりますが、貴女もラーネッド様と同じく、未来から来やがったんでやがりますか?」
黙って頷いたブリーズ=アルジャントリーを見てログェヘプレーベは何かを言おうとするそぶりを見せたが、首を振って俺の方に向き直した。
「私はアロンミットを倒すために今後も同行させてもらいやがりますが、悪魔達には手を引かせやがります。
これにより、レグルスの手駒はアロンミットとニークアヴォ、それと洗脳されてやがる人種だけとなるはずでやがります」
悪魔と悪鬼には人種のこの戦争には関与させないとログェヘプレーベは言った。 ただし戦争にだけと念を押されたところから、普段通りの悪巧みはしてくるのかもしれない。
「待てよ、ダークエルフやオーク達はどうなるんだ?」
「ん? ああ、あっちは我々とは無関係のはず……まさか……もしかしたらラーネッドの子供達が復讐のために追放された神を殺しにきやがったのかもしれませんね」
つまり言い方は悪いが、品種改良されたハイオーク達は母親の恨みを晴らすべく、追放されて無防備となった神を殺しに動き出した様だ。
そしてその最初の標的にされたのが【守護の神ディア】だったということなのだろう。
「じゃあヴィロームの襲撃は?」
「無かったそうだ。 つい先程報告でヴィロームは無事だとあった」
という事はやはりログェヘプレーベの言う通りオークは無関係とはいえず、こちらにも神が存在するのだから襲ってこないとも限らない状態だ。
「この後創造神に会って話を聞いてみようと思う」
ここまで来るとただ戦って勝ちましたという問題じゃなさすぎる。 それとレフィクルの事も俺に責任があると思ったからだ。
「主、全然休んでないだろう」
「そうだけど、そうも言ってられないだろ」
心配そうに見つめられる中、いない間攻めてこられたら頼むと笑顔で答えたが、内心では疲労困憊の状態だったのは確かだ。
「サハラ様、わっちも一緒について行ってもいいでありんしょうかぇ?」
「別にいいけど、創造神は1人ずつしか基本的に会わないと思うぞ?」
それならそれで構わないというため、ブリーズ=アルジャントリーだけ連れて行くことにした。
ここで一度解散となり、ウィザードであるキャスやエラウェラリエル、グランド女王達は魔法の再記憶のため早々に休みに戻っていった。
脳を半分ずつ休ませて活動できる霊峰の金竜とその息子オルは、空から警戒して貰い、赤帝竜には俺が有事の際には全力で戦ってもらえる様に伝えた。
また不死王は休む必要は無いらしいので、ログェヘプレーベの見張りについてもらう。
「サハラ、私は?」
「セーラムも休めるうちに休んでおいてくれ。 マナもだいぶ使ったんだろう?」
「んー、ほとんど使ってないんだけどなぁ」
底無かよ……
どちらにせよ俺についてきても仕方がない為、セーラムにも一応休んでもらうことにした。
実はこの章からの話、未だに未完成で発表できていない、以前報告した『狂王レフィクル』の方で描かれている部分が多くあります。
1話読み切りの予定でしたが、長くなってしまい連載形式で一気にドバーッとあげるつもりなので、それまで気長にお待ちください。
個人的に『狂王レフィクル』を見るとレフィクルカッコいいってなるかも? ですよ。




