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グレーターデーモン

 ボワアアァァァァァァァァァァァッ!


 後方のあちこちからそんな雄叫びなのか吠えているのか、よくわからないがデカイ声を上げて、ズシンズシンと足音をさせながら近づいてくる。



「ヒッ! バ、バババ化け物だ!」


 何処かからかアレに気がついた者が悲鳴染みた声を上げた。 見る者を畏怖させるには十分なその容姿は優に5メートルはあるだろうか。



「あれはグレーターデーモンでやがります。 言語は悪魔語しかしゃべりやがらないため知性は低く見えやがりますが、高位の擬似魔法を使いこなし、巨躯からの怪力はオーガーを遥かに凌駕しやがります」


 某ゲームとほぼ同じ様なもんか……


 パッと見ただけでもグレーターデーモンの数は10体はいる。 もし俺の知る様な奴であれば、氷嵐(アイスストーム)を連発してくるのかもしれない。



「その短剣があれば楽に倒せるんだろ?」


 ログェヘプレーベは整った顔立ちの口を尖らせながら首を振ってくる。



「残念でやがりますが、グレーターデーモンは常に非常に強力な魔法障壁を展開してやがりまして、その魔法障壁はいかなる魔力もほぼ無力化しやがります」


 つまりアイボールの主眼に似た性質の様なものらしい。 ただ違うのは、攻撃に対して盾のように防ぐ時に発動するもののようらしい。 となると力によるゴリ押ししかなくなる事になる。



「あいつらなんて言ってるかわかるか?」

「下がってやがれですね。 自分達の邪魔になるからだと思いやがります」


 ログェヘプレーベが悠長に説明してくるが、それは広範囲に広がって戦う冒険者達諸共一気に倒す気なのだろう。


 1匹でも早く倒さなくては、少しでも力無い冒険者達はやられかねない。 杖を構え突っ込無駄したまさにその時、ログェヘプレーベが全部で6、6、6の18匹いやがりますよと声が聞こえた。


 ……はっ! 悪魔の数字かよ。




 一番近くにいたグレーターデーモンの側まで近づいて杖で殴りつける。 仮にもこの世の創造神が創造した武器なのだから、たかだか悪魔如きの魔法障壁などで防げるはずもない!


 杖で頭部めがけて殴りつけに行った俺を、己の魔法障壁を過信して、擬似魔法を使おうとしていたグレーターデーモンの頭が真っ二つに割れて青い血が噴き出す。


 まずは1匹! そう思った瞬間、身体中に凍える様な極低温の冷気が襲ってくる。



“サハラ!”


 フェンリルが俺の身体を包み込み、俺諸共グレーターデーモンが発動させた氷嵐(アイスストーム)を喰らう。


 思えば初めて喰らう魔法による攻撃だと思う。 フェンリルに包み込まれているとはいえ、全身を冷たい冷気が襲い、今にも心の臓まで凍りつきそうだ。

 手足の感覚が麻痺しだし、杖を落としかけ意識すらとびそうになった瞬間に今度は全身が燃える様な熱さが襲う。


“白い砂浜、暑い太陽、そしてビキニ姿の美女達が走り回る真夏のビーーーーチ”



 砂浜もないし太陽もねぇし、ビキニ姿の美女達もいねぇだろうが!


 とは言え、全身から炎を噴き出させたイフリートの機転のおかげで、凍りつきそうだった身体が一気に温まりーー


「熱ぃんだよ筋肉ダルマ!」

“熱ぃんだよ筋肉ダルマ!”



 フェンリルと見事なまでに被った。

 だがイフリートのおかげで助かったのは事実だ。 今殴りつけたグレーターデーモンを見ると頭が割れて倒れ息絶えている様で、ちょうど擬似魔法を発動させたところだったのだろう。


“油断しすぎだぞサハラ!”

“油断は禁物、男は金持つ!”

「悪い。 調子に乗りすぎていた」



 他のグレーターデーモンに目をやると、ルースミアとセーラムがタイマンしている最中で、7つ星の騎士団もグレーターデーモンを相手に戦っているが、苦戦している様子だった。


 そんな中、グレーターデーモンの擬似魔法の餌食となって凍りついてしまった冒険者達の姿や、中には捕まえられそのまま喰われている者までいた。

 またレドナクセラ帝国騎士の亡霊(ゴースト)達も最初の頃より随分数が減ってきている様に見える。 おそらく騎士魔法の聖剣(ホーリーソード)も魔法障壁で無力化されているのだろう。



「まだ本隊の手始めでやがりますよ! グレーターデーモンが倒れれば、いよいよ私の部下だった悪魔(デヴィル)達も動きやがるはずです」


 ログェヘプレーベが別のグレーターデーモンをちょうど倒し終え情報をよこしてくる。


 これで2匹……




「わはははは! サハラよ、これが悪鬼(デーモン)とやらか! 脆すぎるぞ!?」


 いや、既にルースミアは3匹目を倒し終えて、ちぎり取ったのだろう手に持ったグレーターデーモンの指にかぶりついている……



「どうしてなかなかイケるではないか?」


 喰うなよ! とは言えやはり赤帝竜(ルースミア)は伊達ではなく、やはり無茶苦茶な強さを見せつけていた。

 何はともあれこれで5匹、残りはまだ13匹か……



「私がいる事に……気がついて、やがった?」


 ログェヘプレーベがわけのわからないことをボソッと呟く。



「どうかしたのか?」

「マズい、これは囮でやがります! 本隊は別の場所……おそらく王都に向かいやがっているはずです!」

「なんだと!?」

「あの野郎! レフィクル様を裏切りやがりましたね! ーーー」


 怒りに震えながらログェヘプレーベが裏切り者の名を叫んだ。



 その裏切り者の名を聞いた瞬間、俺はフラッシュバックに襲われ、有無を言わさず戦線を離脱して王都に引き返し出す。

 俺の名を呼ぶ声があった様だったが、俺の耳には届いてこなかった。




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