見果てぬ夢の続きを……
お待たせしました!
「皆んなはここで待っていてくれ」
巨大な大空洞を少し入ったところで仲間を待たせ、フードを深く被った俺が1人で巨大なドラゴンに向かって歩いていく。
俺が攻撃するでもなくただ近づいていく事に、きっと赤帝竜は今困惑していることだろう。 なぜなら過去の侵入者は皆問答無用に赤帝竜に攻撃を仕掛けてきているからだ。
もっともこれは赤帝竜本人から聞いた話だが……
警戒し俺を見つめてくる視線を感じながら、遂には5メートルはない距離まで近寄って立ち止まり、フードを退けて見上げる。
「やっと巡り逢えたね、ルースミア」
赤帝竜が口をあんぐりとだらしなく開けたまま俺を見つめたかと思うと、一転して目を血走らし怒りを露わに激昂しだすと、まるで壁が迫ってくる様な勢いで前足で薙ぎ払ってきた。
「サハラが生きているはずがない! 貴様何者だ! 我を愚弄した罪、万死に値するぞ!!」
まさかこんな再会になるとは夢にも思わなかった俺は、予測も修道士の呼吸法もしていない状態で、しかも咄嗟に縮地法ではなく腕を壁の様に迫る前足に向けて防壁で防ごうとしてしまった。
直後強烈な衝撃が全身を襲い、叩き飛ばされて柱の様に切り立った壁に激突して金銀財宝の床に倒れ込む。
「かはっ!」
柱の様に切り立った壁に叩きつけられ、倒れ込み肺の中の空気が全部漏れて、苦しさに必死に呼吸をしようと息を吸うが上手く呼吸ができない。
激痛と息苦しさの中、近づく気配を感じて瞼を開けて見つめる先には、巨大なドラゴンの口が迫っていた。
「助けて……」
咄嗟に出た言葉は懐かしい日本語だった。 まさか元の世界よりも長くこっちで生き抜いて、苦し紛れに出た言葉が日本語とは思いもしなかった。
「主……!?」
必死に呼吸をしようと酸素を求めるが、まったく取り込もうとしてくれない。
その時誰かが俺をそっと支えてくれる。霞んでいく目に映ったのは……
「ルースミア様、私です! カイです! この方は正真正銘本物のサハラ様です!」
俺を支えてくれた人物はカイだった。 遠のきそうになる意識が一気に戻り、カイを見つめて声を出そうとするが、未だ肺が酸素を求めていて喋ることができなかった。
そしてその時、指環が光っていることも気がつくことはなかった。
「いやあぁぁぁぁぁぁ!! パパあぁぁぁぁぁぁ!!」
「サハラさん!」
遠くからセーラムとエラウェラリエルの声が聞こえて、金銀財宝の音で近づいてくるのがわかる。
来るなと言ったのにと、視界に涙をボロボロこぼして見つめてくるセーラムと、青ざめた顔で俺を見てくるエラウェラリエルの姿が映る。
身体を全く動かせないのと2人の顔を見て、今の状態の有り様がとんでもない事になっていて、おそらく俺の肺はルースミアの一撃で潰れたのだろう。
まったく、凄い一撃だったよ……
まだ身体に痛みが残るなか目が覚める。 まるで長い夢でも見ていた様だった。
「イテテテテ……」
あたりを見まわそうと身体を動かそうとした時、誰かに身体を押さえつけられていて動かせない。
「主よ! 済まぬ、済まなかった!」
両肩を手で押さえてのしかかり、両目から涙を流して謝ってくる赤帝竜が目の前にいた。
その姿は最後に見たあの時と変わらない、燃えるように綺麗な赤毛のロングヘアで20歳ぐらいのままで可愛らしい……そんな娘が素っ裸で俺に跨って乗っかり両肩を掴んでいる。
「ルースミア、お前素っ裸だぞ」
「かまわん、かまうものか! 我は主にとんでもない事をしてしまった。 許せ……」
……そこは許してくれだろう。 でもまぁそんなところがルースミアらしいな。
「それで俺は何で生きているんだ?」
「我が回復魔法をかけたからだ。 だがこれで持ちこたえなければどうにもならなかった」
なんか以前にもこんな事あった様な気がするな。
「そっか、遅くなったがルースミアお帰り。 また一緒に夢の続きをしよう」
「お、おお……」
お、なんか照れてるぞ。
「んじゃ、起きるから退いてくれるか?」
顔を赤らめたルースミアが素直に頷きながら俺の身体から退いて、不思議そうな顔で俺を見てくる。
「主、随分変わったな?」
「そうか?」
「うむ、しゃべり方が前と違って何というか、堂々としている」
「いろいろとあったからな」
まだ痛む身体に再生を掛けて癒した後辺りを見回すと、エラウェラリエルとセーラム、不死王、イフリートが揃っていた。
いかがでしたでしょうか?
ルースミアとの再会は結構悩み考えて、如何に強烈さを出そうかと時間がかかりました。
凡人の異世界転移物語のルースミアとの出会いを覚えていれば、ニヤッとする部分もあるかもしれません。
ちなみに凡人の異世界転移物語時代のルースミアは、赤帝竜である事を隠していた為、相当パワーセーブしていました。




