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原初の魔法

 イフリートに近づくと俺の事を腕を組んで見下ろしてくる。 負けを認めたくせに態度がデカイ。 いや、図体もデカイ。



「負けを認めたのなら、この先を行かせてもらってもいいんだな?」

“負けは確かに認めたけれどもぉ、残念だなぁあんちゃん、こっから先は通行禁止だぜ”



 呆れて何も言えなくなる。

 こんなところでノンビリしている暇もない。


「なら力ずくで通らせてもらう事になるぞ!」


 するとイフリートがチッチッチッと偉そうな態度をしてくる。この世界の精霊は皆んなアホか馬鹿なのかと思えてきてしまう。



“はいはーい、勇者様御一行のご招た〜い”


 はっきり言ってわけがわからない。 相手にするだけ無駄な気さえしてくる。



“けれどその前に、勝者には景品がもれなくプレゼント、ワァオ!

聞いて驚いて死んだりするなよぉ〜、何とジャジャーン”


 イフリートの姿が消えて代わりに一振りの剣が地面に突き刺さっている。


“さぁ勇者よ! 剣を手に取り共に旅立とう! 死極の先まで……ってそこまではついては行けま、せ〜ん!”


 ……何も言えねぇ。 相手にするのも嫌になってくる。



 エラウェラリエルたちを見ると至極普通の態度で、嫌悪感はまったく感じられない。


 ……俺がおかしいのか? これが普通なのか?


 とにかくどこぞの漫画で見たような炎の剣に姿を変えたようだった。 しかしこれがまた問題を引き起こしてしまう。



「悪い。 俺の武器はこの杖なんだ」

“ハーイ残念賞! 残念なあなたには、松明をプレゼント! それでは次の方どうぞ”



 エラウェラリエルは自分のウィザードスタッフを持ち上げて見せ、セーラムは槍と鎧と盾をマナで紡いで見せ、不死王は不要だと首を振る。

 そして最後がフェンリルで、見事なまでに剣を扱う者が1人もいない仲間の姿を見て、ウシャシャシャシャと笑い出した。



「申し出はありがたいが誰も必要ないみたいだ」



 するとイフリートが喚き始めた。


“おいおーい、おたくら本当にお頭大丈夫か? 普通勇者といえば剣を持たなきゃダメってもんだぁ!

わかってないなぁ、まぁ100歩譲って勇者じゃなくたって歓喜して泣き叫ばなきゃ。 はい泣いて泣いてぇ”


 ……まぁ確かに言いたいことはわからなくもないが……わかりたくもない。



「そう言われてもだな……じゃあ土産っていうのはどうだ?」

“な、な!? 土産? 土産って言いましたねお客さん、お持ち帰り一丁〜!

ってそりゃあ酷すぎってもんだ”

「……なら悪いけど要らないよ」



 んのおぉぉぉぉぉう!


 いちいち大げさな返事が剣から返ってくるのを見ると、欲しいものであったとしても欲しくもなくなってきてしまう。


 するとイフリートは元の姿へと戻り、コミカルに如何に自分がいると便利で強いのかを歌と踊りでショーでも見せる様にアピールしだした。



「この精霊面白いね」

「まるでお芝居でも見ているようですね」



 ……これが面白いのか? 勘弁してくれ。



 ショーが終わり、もう一度俺にこれで分かってもらえただろうと聞いてくる。



「とりあえずうざったいのだけはわかった」

“そりゃないぜダチ公、ダチは大切にするってもんだ”


 クイクイと肘を俺に当ててくる。 どうやら本人の意思で温度は変えられる様だ。



“サハラには俺がいるんだ! お前なんか必要ない!”


 俺のバカっぽい忠犬が騒ぎ始め、イフリートと言い争いが始まってしまった。




「サハラさんどうしましょう?」


 あははとフェンリルとイフリートのやり取りに少し呆れた様子でエラウェラリエルが聞いてくる。


「ここは魔物もこなさそうだし、少し休むとしよう。 その間にどうするか決めてもいいしな」




 エルフの携帯食を食べながらフェンリルとイフリートの言い争いを観戦する。


「見てる分には笑えるが、ずっと付きまとわれるのかと思うと嫌だな」

「だがな、あれでも我の魔法を受けて生き延びた。 という事は相当な力を持っているという事になる」


 不死王は戦力としては相当だと言う。

 と、そこでエラウェラリエルが先ほど不死王が使った魔法について尋ねる。


 案の定、エラウェラリエルが言った通り原初の魔法というもので、始原の魔術が自然現象を利用したものだとすれば、原初の魔法はこの世界が生まれた時にできた頃の魔法らしい。

 今の魔法とは違って不安定で、複雑な印字や中には魔法陣を描く必要があるものまであるという。ただしその分威力は絶大なんだそうだ。


「教えて貰えば私も使える様になるの?」



 興味を持ったのかセーラムが聞いてきた。


「原初の魔法は貴様の様に詠唱しないで魔法を使える者にしか扱う事はできない」

「それで人の魔法の神は扱えないんですね」


 不死王が頷いて答え、フム、と頷くとセーラムに教えてもいいがと条件を出してくる。

 それはもちろん、俺と同様に友になれというものだった。 不死族の王と永遠を生きるハイエルフ、対極に近い存在同士が果たして友になれるのだろうか?



「オッケー!」

「うおぃい! セーラムお前それでいいのかよ!」

「なんで? 魔法教えて貰えて友達ができるんでしょう?」

「国のエルフの反対があったらどうする気だよ」

「私がその国のトップの女帝ですが、何か?」

「追い出されたらどうする気……」


 ニマニマさせながら俺を見つめてくる。 その言葉がセーラムによってうまく誘導されていた事に気がついたが遅かった。



「そうしたらずーっとサハラと一緒にいるよ!」



 見事にはめられた。




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