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敗北と脱出、勝利と史上最強

 アロンミットの命令で一斉に俺目掛けて自治国の兵士達が攻撃を仕掛けだし、更にアロンミットまで攻撃をしてくる。

 倒してしまっていいのであれば自治国の兵達は大したことはないがそう言うわけにはいかない。またフェンリルを呼び出せば容赦なく殺してしまうかもしれない。

 そのため片っ端から自治国兵達は昏倒させていくしかなかった。

 高速移動と縮地法で次々と昏倒させながらアロンミットの巨大な剣を躱していく。

 自治国とはいえ兵達の数は1万以上はゆうにいるため昏倒させていってもキリがなかった。



 一息つくように1度縮地法で真上に距離をとって7つ星の騎士団本拠地を見ると、パーラメントが革の鞭を大きく波状に唸らせて近寄らせまいと奮闘している姿が見えた。



「余所見をしている暇は無いぞ!」


 巨体なアロンミットが高く跳躍して大剣を振り下ろしてきた。が、既にそこに俺の姿は無く、アロンミットの背後に縮地法で移動して逆に叩き込む。


 ぬうぅぅぅぅぅうん! という声と同時に俺の一撃は大剣によって防がれてしまう。


「舐めるな異端人め!」



 正直驚いた。まさかあれ程の反応速度を見せてくるとは思わなかった。そこで俺は重要な事を思い出した。騎士魔法とは神の力を借りているという事を……

 つまり神は全員等しく、人で言う所の騎士魔法を扱えるのだ。


 ……厄介だな。



 このまま地上に降りても待ち構える兵士の群れにいずれは飲まれてしまいかねない。その為、俺は7つ星の騎士団本拠地まで下がる事を余儀なくされた。




「サハラさん!?」


 突然現れた俺にパーラメントは驚きつつも手は止めずに、驚異的な鞭捌きで自治国の兵達を寄せ付けない。


「殺してもいいなら楽なんだけど、それが出来ないのをわかってアロンミットはやってきてやがる」

「それで本当に神なんですか?」

「勝利すれば何でもありだとさ」



 そんな会話をしていると噂のアロンミットが俺に向かってきた。


「兵士は任せた!」

「はい!」


 兵士をパーラメントに任せられる御蔭で、俺はアロンミットに専念できる。他の7つ星の騎士達も兵士相手に必死に奮闘してくれてはいるが、殺さないように抑えるのは難しく倒れていく者も少なくはなかった。



「笑わせるな! この俺と一対一なら勝てると思ったか!」


 アロンミットが吠え、大剣を振り下ろしてきた一撃を杖で受け止める。

 先程からアロンミットの攻撃を杖で受け止めていて気がついたが、この杖、ほとんど手に衝撃が来ることなく受け止められる。おそらくこれがこの杖の能力なのだろう。


 ……衝撃を逃してくれるのは嬉しいが、地味で微妙だな。



 そんな事を思いながら、握り変えをして振りかぶる動作無しで逆にアロンミットに一撃を見舞う。


 アロンミットの持つ大剣は、その大きさから攻撃範囲や威力があって、言うなればポールアーム、又はポールウェポンと言われるハルバードの類のようだ。そんなデカブツを片手で軽々と振り回しているが、やはり小回りの面では俺の杖の方に分があった。


 身体を捻って躱そうとしたようだが間に合わず、直撃こそ避けたものの一撃を受けて後ずさる。


「その杖でのヘンテコな攻撃は賞賛に値する。だがな……」



 アロンミットが身近にいた7つ星の騎士の1人を糞捕まえると、盾代わりにして攻撃をしてきた。

 先程のように攻撃をしようものなら、今も掴まれてもがいている7つ星の騎士を盾のようにしてくる為、否応なく攻撃の手を止めてしまう。


「お前の弱点はその甘さよ!」



 その隙をついて大剣で俺をなぎ払い、直撃を避けるべく後ろに飛んで勢いを殺したつもりだったが、腹に受けた衝撃は物凄く脇腹を抑えながら膝をつく。

 見なくてもわかる程の出血の感触が手を伝っていた。


「サハラさん!」


 パーラメントの声が聞こえ、アロンミットはチャンスとばかりに追撃しにくる為、治療魔法を使っている余裕もない。

 何よりも修道士(モンク)の呼吸法により全身に気を送って神鉄アダマンティン化している俺を切り裂くほどの攻撃に戦慄を覚えていた。


 激痛の中何とか杖を片手で持ち上げて、大剣の一撃を受け止めようとするが、防げて一撃がいいところだろう。



「はぁっ!」

「セイッ!」


 そんな声が聞こえ、俺の持つ杖と2本の白く輝く剣がアロンミットの大剣の一撃を食い止めた。



「マスターご無事ですか!」

「マスター様!」


 アラスカとキースがアロンミットの一撃を受け止めてくれて九死に一生を得れた。


 アラスカが俺を支え、キースがアロンミットと対峙する。


「助かった。治療が済んだら下がっていてくれ」

「いえ! シリウス卿の命令で生き残った7つ星の騎士団と脱出することになりました。

マスターもこのまま下がってください!」


 キースに目をやると下手に攻撃には出ずに防御に徹して時間稼ぎをしている。


「だけどアロンミットはきっと見逃してはくれないぞ」

「そこは私とキース卿で何とか時間稼ぎをします!」


 アラスカとキースは自己犠牲するつもりのようだった。



「パーラメント! 建物まで下がって来た場所まで早く戻ってくれ!」


 防御に徹しているキースがパーラメントに声をかけ、汗だくで今にも倒れそうな状況のパーラメントが最後に大きく一撃を振るい将棋倒の様に兵士達が吹き飛んで倒れ、その隙に俺の渡した鞭に持ち替えてアロンミットに振りつける。


 炎を巻き上げながらアロンミットに叩きつけようと思われたが、アロンミットの大剣で簡単に切断されてしまう。と思われたが、驚いたことに大剣をすり抜けてアロンミットに命中し、炎を巻き上げながら吹っ飛ばした。



「今のは!?」

「説明は後でします。今のうちに引きましょう!」


 アロンミットが吹っ飛んだ時に手放した7つ星の騎士をパーラメントが支えながら建物に連れて行く。


「キース! アラスカ! お前たちも今のうちに引くんだ!」


 俺が叫ぶが、2人は死守すると言わんばかりにアロンミットと体勢を立て直して向かってくる兵士達に立ちはだかる。


「ここは私達に任せてください!」

「マスター、後を頼みます!」


 キースとアラスカが覚悟を決めた顔で言ってくる。


 2人を見捨てるなんて俺には出来ない。特にアラスカはどんな時でも俺を信じ続けてくれた大切な仲間、セッターの娘だ。

 どうしたら、と迷っていると俺の中指につけた指環、創造神に賜った指環が光っている。



「マスター、ここは私に任せてください」


 懐かしい聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこには若かりし頃のセッターがいた。


「セッター!? なんでお前がここに……」

「お、おとう……さま?」



 アラスカも突然現れたセッターの姿に戦意もなくなり、死んだはずの父親をただ呆然と見つめている。



「その指環はマスターが本当に助けが必要になった時に光り、マスターを助けてくれる指環だそうで、私はその指環の力で一時的に呼び出された幻影の様な存在です。

お願いします。残った7つ星の騎士達を救ってください」



 アロンミットが火を消して起き上がり迫ってくる。俺に悩んだりしている暇はなかった。


「セッター、頼む」

「マスターに頼まれる日が来るとは思いもしませんでしたよ」


 嬉しそうな顔を見せた後、腕を上げて声高く叫んだ。


「7つ星の剣よ、今一度我が元に来れ!」


 セッターの手に光り輝く7つ星の剣が姿を見せ、それを握りしめると迫ってくるアロンミットを迎え撃つべく姿勢を低く身構える。


「守りに入った私は負けはしない。

……マスター、娘をよろしく頼みます」

「誰だか知らんが、勝利の神相手にほざくな!」



 頷き、未だ呆然としているアラスカを抱え上げてキースと共に先に向かったパーラメントの待つ建物へと走る。

 建物までたどり着き一度振り返ってセッターを見ると、あのアロンミット相手に互角かそれ以上の戦いをしていた。



「アラスカ、良く見て覚えておくんだ。

あれが史上最強と言われたお前の父親のセッターだ」

「お父様……」




 最初に魔導門(ゲート)が開かれた墓地まで戻ると、エラウェラリエルとシリウス、パーラメント、キースの他に疲弊披露しきった僅か20名ほどの7つ星の騎士しかいなかった。



「あの、マスター。その、もう大丈夫なので下ろしては頂けないかと……」


 チラッとアラスカがエラウェラリエルを見て言ってきた。エラウェラリエルを見ると笑顔で俺を見つめてくる。そして隣にいるシリウスもだが、こちらはおそらくアラスカに向けてだろう。

 慌ててアラスカを下ろして、何事もなかった様に魔導門(ゲート)を開く様に頼むと、少しむくれた顔を浮かべながらエラウェラリエルが詠唱をはじめて門が現れる。

大惨敗を喫し次々と脱出していく7つ星の騎士団を見送る。


 最後に俺とエラウェラリエルだけになった時、セッターの居るであろう方角に向かい、一度大きく頭を下げ感謝の言葉言ってからエラウェラリエルの手を取って門を潜り抜けた。




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