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引き裂かれた2人

 日も暮れだし辺りも暗くなってくる。アリエルの視界からウェズンやサルガスが家から出て行く姿が見えた。そしてそのしばらく後にアダーラも家を出て行く。


 レグルスとアリエル、シャウラの3人になり、夕飯を食べ終えても戻ってこないところから3人は自宅にでも帰ったのだろう。

 レグルスがシャウラに何か話している姿があり、暫くしてシャウラが家を出て行った。



“サハラ! この先だ!”

「どれぐらいだ?」

“あの壁の方”

「飛ばすぞ」


 高速移動はさすがにフェンリルがついてこれないから抑えて走る。だが次の瞬間あまりの驚きでバランスを崩し転んでしまう。


“サハラ、大丈夫か?”

「馬鹿な!?」


 俺のアリエルの視界に信じられない光景が映っていた。アリエルが自分の魔道学院のローブを脱ぎ始めたのだ。たまに見る動作があるからレグルスが目の前にいるのは間違いない。そして全て脱ぎ終えたアリエルの乳房が見えた。


「嘘だ!」

“どうしたサハラ?”


 裸になったアリエルがレグルスの方に近づいて跪き、そしてレグルスのズボンに手をかけて下ろし始めたーー


 これ以上は見たくなかったため、そこでアリエルの視界を繋ぐのをやめ、すぐに立ち上がり急ぐことにすると、頭が軽くなり頭痛も治まった気がする。



“あそこの家だ”


 フェンリルの言う家の前に辿り着くとシャウラが立っていて、俺を見るとギョッとした顔をする。


「よ、よぉ、サハラじゃないか? 自分の家に何か用でもあるのか?」

「普段無口のお前が随分とお喋りだな? そこを退け! 中にアリエルがいるのは分かっているんだ!」

「人の家に勝手に入ろうとでも言うのか? それは不法侵入になるぞ?」

「うるさい! そこで寝てやがれ!」


 高速移動で目にも見えない早さでシャウラに近づき昏倒の一撃を入れて意識を刈り取る。



 そして扉を開けてドアを開けて家の中に入り、部屋のドアを開けていくーーいた。


 だがそこにはアリエルに覆い被さるレグルスの姿があり、最も見たくない光景だった。



「なんだよシャウラ! 勝手に入って……サハラ!?」

「あ、ん、サハラ、さん?」

「テメー! ガキが人の女に何してやがんだ!!」


 一瞬怯んだように見えたが、ニヤッと笑うと俺がいる目の前で平然と腰を動かし出した。



「人の女? ねぇ、アリエル、アリエルは、誰の事が、好き、なの、かなぁ?」

「っん! あん! レグルス、君、好き! 大好きぃ!」

「アリエル!?」

「だ、そう、ですけど、ちょっと、待ってて、くれ、ませんか? あと、ちょっと、なんです?」

「ふ、ふざけるなよ!」


 殴りかかりたかった。だけど、信じられない状況を見た事とアリエルの言葉に体が震えて動く事ができなかった。


 その少し後、呻く様な聞きたくない達した2人の声が聞こえる。



「ふ〜、サハラには悪いけど、アリエルと俺はこういう関係になっちゃったんです。

ゴメンなさい。

信じられないならアリエル自身に聞いてみるといいですよ? 俺ちょっと出てますからごゆっくりどうぞ」


 そう言うとアリエルにキスをし、服を持つとレグルスは部屋を後にした。

 残ったのは俺とフェンリルと……裸でベッドに横たわるアリエルだけになった。



「アリエル……これは、どういう事だよ」


 俺が声を掛けると上半身を起こして答えてくる。


「レグルス君凄く素敵なの」

「だから俺と別れてレグルスといるって言うのか?」

「あたし、レグルス君とずっと一緒にいたい。だからサハラさん、ゴメン別れて」

「それがどういう事かわかって言っているのか?」

「あたし、もうレグルス君無しじゃ生きていけないの!」


 アリエルがスッパリそう言ってきた。あまりのショックで俺は何も言えないままアリエルを見つめ続けると異変に気がつく。

 それはアリエルの目から涙がポロポロ溢れ出していた。



「なら……何で泣いているんだよ」

「え? あたし泣いてなんかいないよ? あれ? 本当だ。何でだろう、たぶん嬉し泣きかな?」



 ここで一瞬だけ冷静になった俺は神殿でウェラに聞いた事を思い出した。


 心は奪われてない。これはアリエルの意思じゃない。


 そう思った時だった。



「動くな! 不法侵入及び傷害の疑いだ。大人しくしろ!」


 振り返ると勝ち誇ったレグルスの姿と、キャビン魔道王国の魔道兵が数名いた。

 俺とアリエルが話している隙に警備兵を呼んだのだろう。


 俺を捕らえている隙にレグルスは悠々とアリエルの元に行き、素っ裸でいるアリエルに服を掛けてもう大丈夫だよと抱きしめていた。



「ほら歩け! 話は後で聞いてやる」


 俺は引っ張られながら連れて行かれる。その間もずっとアリエルとレグルスを睨み続けた。


 レグルス……貴様は絶対に許さない!




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