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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第7章 世界恐慌のはじまり
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集結!

 キャスが戻ったのはいいが顔色が悪い。心配して駆け寄ると、キャスが俺に謝りだした。


「ごめんサハラ……居場所を教えちゃった」

「サーハラみーつけた!」


 同時にキャスの後ろから声が聞こえ、脱兎の勢いで俺に飛びついてきた。

 それはもちろんセーラムであり、セーラム女帝国の女帝その人だ。いや、ハイエルフだ。


「お前は仮にもセーラム女帝国の女帝なんだから、軽々しく国を抜け出るなよ!」

「勝手にされただけなんだからいいでしょ! それに私はサハラが全てなんだからっ!」



 ビキビキビキと女性の視線が集まり、その中のシリウスが代表となって俺に尋ねてきた。


「サハラ、つい先程セーラム女帝様は家族のような存在だと言ったと思うが?」


 うんうんと頷く一同。そんな中パーラメントだけはセーラムの美しさに釘付けになっているようだった。


「間違いないぞ」

「ええ、サハラと私は家族も同然よ? って、ボルゾイさん!? 久しぶりですね」

「あのちみっちゃかったエルフが随分変わったもんじゃのぉ」


俺から離れたセーラムがボルゾイの元に行きキャッキャと懐かしそうに接している。


 キャスは世界樹の葉をポットに渡すと、俺から逃げるように部屋から出て行こうとする。


「キャス、きちゃった以上仕方がないさ」

「あ、あははは、ゴメンねぇ」



 セーラム女帝国に行かせた時点で少なからず覚悟はしていた。それに今はセーラムの力も必要になるかもしれなかった。


「セーラム、世界樹の森の皆んなは無事なのか?」

「当然よ。私はこんな事が起こるような気がしていたから、注意は呼びかけておいたもの」

「直感って奴か?」


 ニッコリと頷いて答える。一応セーラム女帝様のお言葉だという事で世界樹の森の皆んなは無事だったそうだ。

 ポット親子に目を向けると最初こそセーラムの登場に驚いていたようだったが、今は既に研究の相談に移っていた。



「そういやオルはどうしたんだ?」

「うん、国を任せてきたよ」


 可哀想に……すっかりオルはセーラムの尻拭いをやらされているようだ。






 数日後、ヴォーグがマルボロに戻る知らせが届き、やっと王宮向かう事になる。

 出立の際にはノーマも姿を見せ、ヴァリュームは任せておくのであると言ってきた。



「それじゃあ門を開くよ。一応王宮の中庭だから大丈夫だとは思うけど、たぶん人数もここより多いから王都の方は凄い事になってるかも」


 キャスがそう呼びかけてから魔法の詠唱に入った。


 魔導門(ゲート)が開かれマルボロ王国の王宮の中庭に辿り着く。

 突然開いた門に兵士達が慌てて集まり警戒している中、俺でもキャスでもなく、セーラムの姿を見て兵士達が湧いた。



「よぉ! 騒がしいから来てみれば、さっそくご到着か!」


 そしてヴォーグも出迎えに来ていた。


「状況はどうだ?」

「最悪だ。国に戻ったら王都中砕けた水晶だらけだ。聞けばそれが全部人だって話だろ……とりあえず中に入って話をしようか?」



 兵士達の目があるからなのだろう。俺達を連れて応接間に通される。


「悪りぃサハラ、人払してるから頼めないか?」

「……少し待ってろ。部屋は空いてるんだろうな?」

「あそこはお前さん専用だ」



 侍女長室、中に入ると本当に最後に俺が使ったままになっていた。

 少しぐらい掃除をさせておけと文句を言いながらも、変幻自在(シェイプチェンジ)でサーラの姿に変え、服装も侍女長のものに変える。

 全員分のお茶などの準備をしていると、俺を見つけた侍女達が一斉におかえりなさいませサーラ様と声を揃えて挨拶をしてきた。



「今からヴォーグ様とお客様のお世話をします。他の者達は決してお邪魔をしないように」

「「「畏まりましたサーラ様」」」



 こんな躾したか? と思いながらワゴンにお茶と菓子類を乗せて応接間に戻る。


「お待たせいたしました」

「おおサーラか、さっそく全員に茶を頼む」


 ハイ、と返事をしお茶を置いて行く。


「ふむ、見事なもんじゃ!」

「あの時の侍女の方ですね、お久しぶりです」


 それを聞いたセーラムが最初はクスクスと、次第に声を出して笑い出す。同じくヴォーグも笑い始めた。

 全員にお茶を出し終わると、堂々と(サハラ)が座る席に腰をかけると知らない者達はアレ? と顔をさせた。



「……俺だ」


 と一応言うが、声も女性のものに変わっているため、聞く者にはちぐはぐに感じるだけだろう。


 知らなかったボルゾイ、パーラメント、シリウス、ローラにポット親子が驚いてマジマジと俺を見てくる。



「悪いが俺は見世物じゃない。それに時間も惜しい早く話を進めよう」


 そう言ったはいいが落ち着く様子が見られず、少しの時間を要することになってしまう。


 落ち着いた頃合いを見計らって、俺から全員を一度紹介していく。


「言う必要はないと思うが、ヴォーグ。マルボロ王国初代英雄王マルスの孫だ」


 ン! と偉そうにふんぞり返る。


「そして俺、サハラと俺と契約している精霊のフェンリル」


 フェンリルが紹介された為姿を現し、俺を見上げてくる。喋っていいのかの確認なのだろう。俺が頷くとフェンリルが口を開いた。


“俺は【大いなる狼霊の子】。祖霊の血を引く氷狼の精霊だ”



 喋るのを知らなかった者達はここで驚くが、知ってる者は平然とベネトナシュだけはニコニコ笑顔だ。


「ボルゾイ、俺が昔世話になった仲間で【鍛冶の神トニー&スミス】の神官戦士だ。一応お前の爺さんに当たるマルスとも面識があるぞ」


 ボルゾイが立ち上がってヴォーグに頭を下げた。ヴォーグはオウと声をかける。



「続いてアラスカ、7つ星の騎士の1人で史上最強と言われた英雄セッターの娘だ」

「アラスカだ。よろしく頼む!」

「そして同じく7つ星の騎士のシリウス」

「私は紹介が短いのだな。シリウスだ、よろしく頼む」


 ヴォーグがシリウスに向かって声をかける。


「シリウス卿は確か7つ星の騎士団の中でも調略に長けていると聞いている。心強い味方だ」

「ハッ!」


 ……なるほどね。



「キャス、言わずと知れた【魔法の神エラウェラリエル】の代行者で、先の大戦の英雄だ」

「特に僕は何もしてないけどねぇ」



「次にブリーズ=アルジャントリー、少し訳ありだが気にせずに接してあげてほしい」

「アルと呼んでくんなまし。吟遊詩人(バード)でありんす」



「ベネトナシュ、魔道学院で同じクラスだったウィザードだ」

「……ベネトナシュ、です」

「おう、俺の嫁になる女だ」



 どうやらお互い本気のようだ。ざわつきを見せたが、色々聞きたいこともあるのだろうが今は一度黙らせる。



「次にプラチナム=パーラメント、よく分からないがパーラメント一族だとかで、鞭の扱いは……魔導王バルロッサの折り紙付きだ」

「サハラさんが僕に接触してきたのはそれが理由だったんですね」


 ヴォーグはホォと恐らく知ったかぶっているようだ。



「続いてローラ姫。ウィンストン公爵の娘で、訳あって俺のもとに身を寄せている」


 公爵の娘らしいスカートの裾を持ち上げ、淑やかなお辞儀をし「よろしくお願いします」と言って座り直した。



「それとポットとペーソル、俺が雇った薬師で麻薬を治す方法を研究してもらっている」

「ポットと申します。このような席にお招きいただきまして……えー、大変困っております」

「お父さんしっかりしよう。私達ここで王宮薬師になるんでしょ〜」

「はっはっは、サハラから聞いている。身辺警護はするから出来る限り急いでもらえると助かるな」



「最後にセーラム、まぁ言わなくてもわかるよな」

「私だけそれってちょっと酷くない?」

「そうか? 有名人のサガだ、諦めろ」

「ブーッ!」


 誰もが想像していた英雄にしてセーラム女帝像と違ったようで、皆んな困惑気味に見えたのは言うまでもない。



 何はともあれこれで役者は揃った。





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