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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第7章 世界恐慌のはじまり
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冒険者ギルドに仕事を依頼する

 アラスカとシリウスが7つ星の騎士団領に向かってやる事のなくなった俺達は、それぞれやりたい事をやり始める。


 まず、パーラメントは俺が渡した鞭を試しに冒険者ギルドの訓練場でテストをしに行き、ポット親子は麻薬の研究を続け出し、ベネトナシュは馬小屋でフェンリルと戯れに行ったようだ。

 ボルゾイは俺のツテで領主のノーマに会いに行き、キャスはアルと未来に関わる話をしていた。そして俺は1人きり……ではなく、ローラと一緒にいた。


「あの代行者様……」

「俺の事はサハラでお願いします、ローラ姫」

「わかりました。それではサハラもローラと呼んでください。それにもう姫でもなんでもないのですから」

「ウィンストン公は残念でしたが、まだウィンストン公国が滅んだわけではないです。

ここマルボロ王国も一度は滅びかけましたが、地位を隠し生き残ったレイチェル姫によって、名こそ変わりましたが再建されています。

だから、諦めないでください」


 俺がそう言うとローラは頬をほんのり赤らめながらハイと頷いた。


 とりあえずローラを守らなければならなくなったのは確かで、だからと言って俺がずっと側にいられるわけじゃない。

 そこでローラに何か魔法なり剣などは扱えるのか尋ねるとニッコリと笑顔で答えてくる。


「私、こう見えてサハラと同じドルイドなんですよ。もっともサハラの契約している精霊とは比べものにはなりませんけど」


 そう言うとローラは声をかけて呼び出し始める。すると微風が流れ一箇所に集まりだすと美しい乙女のような姿が薄っすらと見える。


「シルフ、風の精霊ですか」

「はい」


 そこでローラにドルイドにはどうやってなれたのかを聞いてみると、不思議そうな顔で見られてしまう。それは俺自身がドルイドであるにもかかわらず知らなかったからだろう。なので俺は代行者になった時点で授けられた為、わからないと説明すると納得したように頷いた。


 ローラの場合はたまたま師がお付きの乳母だったそうで、そこで色々と幼い頃から見聞きして教わって行ったそうだ。


「ローラに頼みがあります。ベネトナシュにドルイドを教えてあげることはできないでしょうか?」


 俺が教えられない為ローラに頼んでみることにすると、少し難しそうな顔を見せてくる。


「そんなに難しいことなんですか?」

「いえ、そうではありません。ただ……」

「ただ?」

「いえ、なんでもありません。わかりました。ただし、素質がない場合はどう頑張ってもドルイドにはなれないそうなので、その時は……」

「その時は仕方がないでしょうね」



 ローラを連れて馬小屋に行くと、モフモフの毛に埋もれながらフェンリルと楽しげに話をしているベネトナシュの姿があり、俺とローラがくると何事かと見つめてきた。


「ベネトナシュ、ローラがドルイドになれるか見てくれるそうだ」

「……サハラさんが教えてくれる……じゃない、の?」

「俺は前にも言った通りわからないんだ。だからローラに教わってくれ。ただ、素質が必要らしいから、ベネトナシュに素質がない場合は諦めてもらう。いいか?」

「……うん、いい」


 ローラにベネトナシュを任せる事にして、俺はフェンリルを連れて馬小屋を後にした。


“ベネトナシュはサハラに教わりたかったみたいだったな”

「そうみたいだったけど、こればかりは仕方がないだろ。

それより……」

“ひどいな”



 宿屋を出て町を歩き回ると、あちこちに麻薬により砕け散った水晶のような破片が散らばっている。警備を固めたからなのか、その近辺には魂とでもいうべきマナ結晶も落ちたままだ。


「拾い集めていてもキリがないか……」


 そう思うほど大量に落ちていて、それだけ多くの人が亡くなったことが嫌でも分かる。だがだからと言ってこのまま放置するわけにはできないだろう。

 俺は冒険者ギルドに向かい、受付の女性に声をかけた。


「仕事を依頼したい」


 そう言って大量の金貨をテーブルに出し、依頼内容を伝える。

 あまりの金額に驚き、その内容に更に驚くと、一度奥へ行くとギルドマスターらしい人物を連れて戻ってきた。



「当ギルドのギルドマスターです。少し話を聞かせてもらいたい」


 そう言ってギルドマスターの部屋へ連れて行かれた俺とフェンリルは、ギルドマスターになぜマナ結晶を集めるのか、これだけの所持金はどうしたのかなど色々聞かれる。


「自体は非常に深刻です。このマナ結晶は砕け散った人の魂のようなもので、悪魔(デヴィル)はこれを狙っています。詳しい説明はしている暇はないので急いでもらいたい」

「あんた一体何者だ?」


 鞄から古い冒険者証を取り出す。俺がこの世界に来て初めて作った身分証明証のタグだ。

 それを手に取ってギルドマスターは不思議そうにタグを見ている。


「俺の名はサハラ。【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者だ。コイツは氷の上位精霊のフェンリル、自体は深刻だ。急いでもらいたい」



 一瞬ギルドマスターが何言ってんだコイツといった顔を見せたが、当時俺の担当をしてくれていた受付嬢コンシェルジェの名前を出すと、慌てた様子で古くなった帳面を取り出して調べ始めた。


「た、確かに……代行者様と書かれていました。しかしその、本人である証明できるものはありますか?」

「ノーマに聞けばいい」



 ギルドマスターはすぐにノーマに書状を書き、それを使いの者に持って行かせ、戻ってくるのを待った。

 その間ただ待っているわけではなく、依頼を大々的に報じる準備もしてくれていた。


「確かに確認が取れました。代行者様の依頼を受理いたします」



 その日話を聞きつけた冒険者はもちろん、住民達にも臨時に協力して貰い、大量のマナ結晶が俺の手に集まった。



“そんなもの集めてどうするんだ? ”

「一応これでも魂なんだ。【死の神ルクリム】にでも渡すつもりだよ」

“そか”



 その日の夕方までにはアラスカとシリウスが戻り、世界状況の報告を聞いて愕然とする。



「麻薬による影響で砕け散った人の数は……確認できただけで、おそらく全人口の半数以上に達するとのことでした。

しかも未だ影響が出ていないものもいるそうなので……」



 一緒に聞いていた仲間達もこの数に驚きを隠せない。そして特にひどい場所はウィンストン公国で、アロンミット武闘大会の時にばら撒かれた影響は大きいようだった。


 一応7つ星の騎士団達によって麻薬の危険性などは報じられたが、どれだけ効果が見込めるかもわからないという。


「なぜじゃ! 死ぬとわかっていながらなぜ麻薬をつかうのじゃ!」


 ボルゾイが苛立たしげにそう叫ぶ。それをなだめるようにポットが説明をしだした。


「麻薬は……特に新しく生成されたものは、想定ですが人生の中で味わう快感の数千倍と思われます。それを聞いて、生き甲斐を見出せない人達は知っていながら手を出してしまうのかもしれません」


 数千倍の快感と聞くと確かに揺らぐ者も出てくるかもしれない。しかも問題なのが、この麻薬の作製が非常に簡単で、薬師であれば少し研究すれば作れるようになることにあった。


「ですがこれだけ報じてあれば、余程な愚か者でもなければもう手を出さないんじゃないですか?」


 パーラメントが誰もが思ったことを口にすると、ポットの娘のペーソルが首を振って返してきた。


「たぶん今回はこれで効果は出てるんですけど〜、もし次に燻した麻薬を風に乗せでもして強制的に嗅がせでもしたら、対処のしようがない上に恐怖によって混乱が起こるかもしれないんですよ〜」

「……どういう事だ?」


 よく意味がわからない。風に乗せてと言うのはわかるが、そのあとの恐怖と混乱はどういう意味なのか不明だった。


「つまり娘が言いたいのは、風に乗せて麻薬を強制的に嗅がせた場合、希釈される為効果は薄まるのです。その事実を報じられた人々は……」

「暴れだしかねない、か。

ポット、解毒の方はどうなっているんだ?」

「それなのですが……」


 非常に入手が困難な世界樹の葉が必要なのだと言い出し、それを今日相談したかったのだそうだ。


「それならセーラムに頼めば幾らでも分けてくれると思うぞ」

「さ、さようでしたな。代行者様とセーラム様は恋仲と聞いておりますからね」


 一斉にアラスカ、シリウス、ローラ、ベネトナシュが俺の方を向いた。その目はなんですって! とばかりの目でちょっと怖い。


「セーラムは俺の家族、娘みたいなものだ。その噂が何処から出たか知らないがあり得ない」

「そうでしたか、しかし世界樹の葉が入手可能というのは助かります」


 なぜか女性達からホォと声が聞こえた気がしたが、気にしないでおく事にしよう。


「なら僕が今から転移して忠告を兼ねてもらいに行ってくるよ」

「頼む」

「うん、じゃあね〜」


 手を振り、素早く詠唱を唱えるとキャスの姿は消えていった。


「お父さん、なんか私達御伽の世界にいるみたいね〜」

「うむ、とんでもない事になった」



 そして時間にしてものの30分も経たないうちにキャスが大量の世界樹の葉を持ち帰ったのだが、その顔はなぜか曇っていた。



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