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ワールド・ガーディアン〜新たなる転生者〜  作者: 小さな枝切れ
第7章 世界恐慌のはじまり
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始まる狂気

 にじり寄る兵士にアルとボルゾイ、パーラメントにベネトナシュも立ち上がり、必死に本当に俺が代行者だと口添えをしはじめるが聞き入れるそぶりは無い。それどころかはなっからこうなる事をわかっていた様な対応にすら見えた。



「ヴォーグ王の婚約者と言うのも私に会うための口実なのでは無いのかね?」


 躊躇する姿勢を見せた兵士にウィンストン3世が、全て虚偽であると言い放ち捕らえさせようとしてきた。


 予想外の連続にうまい考えも浮かばず、かといって交戦するわけにもいかないだろう。ここはシリウスとアラスカが来るまで大人しく捕まっておくのも手だが、レグルスが動き出し麻薬が横行しはじめた今のんびりもしていられなかった。



 “俺は自然均衡の代行者”


 “あるゆる自然現象を想像し”


 “具現化する”


 “想像するは(イカズチ)


 “天空より落ちて証明しろ!”


落雷(ライトニングストライク)!」



 次の瞬間、館を破壊しながら貫き、(いかづち)が俺と公爵の間に落下した。


「これで俺が代行者と信じないのなら……次は大地に亀裂でも入れてやろうか!!」


 今の(いかづち)を見て兵士達の足並みが止まり、公爵の手から麻薬が落ちた。


「そ、その様なもの……魔法で何とでもなろう! その程度で騙されるでも思ったか!」

「事態は深刻なんだ。本気で言っているのなら……」

「では問おう、この様な状況にもかかわらず、何故神は我らに手を差し伸べないのか」

「差し伸べているだろう。代行者の俺が」


 最初は小さく、次第に大きな声となって公爵が笑い出した。


「武闘大会で勝てもしないで何が代行者よ」



 何を言っても聞く耳を持つ気はないらしい。

 


「待たれよ! 公爵殿!」


 戦う覚悟を決めようとしたところでシリウスが現れた。その姿は7つ星の騎士団の正規の外套を纏っていた。


「7つ星の騎士団のシリウスか。何用か?」


 シリウスが公爵の前まで行き、俺が始原の魔術で開けた穴を見て一瞬驚きの表情を見せた後、公爵に向き直る。



「こちらにいるサハラは、我ら7つ星の騎士団の名誉にかけて間違いなく【自然均衡の神スネイヴィルス】様の代行者だ!」

「7つ星の騎士団が言うのであれば信じる他あるまいな。

それではどうしろと言うのだ?」



 そこでシリウスが公爵に麻薬がどういうものか説明し、すぐに国民に指示を出して手を出さない様命を下すように進言する。


「待て、私はその麻薬というものを既に嗅いでしまった。どうなる?」

「……死にます。残念です」

「そうか……

おい! 直ちに国民に命を出せ。それと急ぎ娘を呼んでくるのだ」



 俺達はそっちのけで話が進み始め始め、やがて1人の娘が姿を見せた。歳は20歳ほどで父親であるウィンストン3世の子かと思うほど美しかった。この世界では珍しい俺と同じ黒髪だった。


「お父様お呼びでしょうか」

「来たか、ローラよ」


 一瞬俺の脳裏に転移者の文字が浮かんだ。しかしそれは違うとすぐに気がつく。

 振り返ったその瞳はオッドアイであり、東洋人のものではなくだがとても美しかった。


「お父様こちらの方達はどなたでしょうか」

「うむ、【自然均衡の神スネイヴィルス】様の代行者のサハラ殿とその仲間だ」

「……! これは大変ご無礼をいたしました」


 そう言うと俺の前まで来て膝をついて頭を下げてきた。


「代行者殿、先ほどまでの非礼済まなかった……まんまと悪魔(デヴィル)の罠にはめられてしまったようだ」


 ウィンストン公爵は既に以前から麻薬に手を染めていて、今回また麻薬を貰おうとしたが条件が出された。その条件が代行者を名乗る無礼者が現れるから捕らえて殺すというものだった。

 先ほど見せた始原の魔術で本物の代行者だと気がついたそうだが、麻薬欲しさに俺を亡き者にしようとしたのだという。


「やはり、この地は呪われているのかもしれないな……

ローラよ、お前は代行者殿達とこの国を出よ。おそらくこの国はもうダメだ」

「お父様何をそのような弱気を言っているのですか! 何か、何か術があるかもしれないではないですか。

サハラ様、代行者様、どうか、どうかお父様を助けてください!」


 そう言って涙を流しながら俺の肩を掴んでくる。その姿にアリエルが重なり、気がつくと俺の目から涙が流れていた。


「代行者、様?」

「……サハラも、麻薬で大事な人……なくしている」


 口をパクパクさせてうまく言えない俺に変わってベネトナシュが答えてくれた。


「代行者殿、一つ頼みを聞いて欲しい。娘をローラを守ってやってはくれないだろうか。

国の再建などとは言わぬ、せめて幸せに暮らさせてあげて欲しい……ウグッ!」


 公爵の姿が水晶化していく……ここにいる誰もが何も出来ずただ驚くだけだった。


「頼み、申す!」


 このまま答えないわけにはいかない。俺は意を決して答えた。


「必ず」


 透き通っていく公爵が安心しきった顔を見せた瞬間、砕け散った……


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 館中に響き渡るような声でローラが叫ぶ。

 俺はただそれを見ているだけしかできなかった。


 崩れた公爵の元で泣くローラの側に行き、床に残った結晶を拾い上げ手渡す。


「これは、公爵の魂で出来た結晶です。

俺達はこれから起こる事に対処しなくてはなりません。

お気持ちはよくわかりますが、公爵に頼まれた以上一緒に来ていただきます」



 嫌がるローラをアルとベネトナシュに任せ、俺はシリウスにこれからを訪ねた。


「ひとまず当初の予定通りでいきましょう。ここはここにいる者達に任せるしかありません」

「わかった。アラスカが戻り次第行動に移ろう」



 アラスカが戻るまで町に出てみると、あちこちから悲鳴が上がっている。

 どうやらこのアロンミット武闘大会は見事なまでにレグルスに利用されたようだった。




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