洗脳
夕飯を食べに食堂に行くと、レグルスの周りにアリエルとサルガスとアダーラ、それと驚く事にシャウラが一緒に食事をしていた。
「あ、サハラさん、こっちこっち」
なんの気もなくアリエルが声をかけてくる。正直あの中に入りたくない。躊躇していると背後から声がかかる。
「サハラ〜俺たちこれからだから一緒に食おうぜ! アリエルさん悪いなサハラ借りるぜ!」
「えー、しょうがないなぁ」
デノンとビクター、それとアリオトがいた。
「助かりましたよ」
「なんだかかなりまずくなってんじゃねーか、お前ら?」
「ええ、まぁ……」
「レグルス最低ですね!」
アリオトが同意してくる。
『アリエル、後で俺の所に来てくれ』
『何で? 会話なら繋がればできるでしょ?』
『会って話がしたいからだ』
『っもう、しょうがないなぁ』
食事をしながらアリエルと繋がり約束をしておく。俺が黙りこくっていたのをデノン達に心配されたが、笑顔で考え事をしていたと話しておく。
食事を済ませて俺は部屋で待っているが、なかなかアリエルが来ない。イラつきながらも洗脳の恐ろしさを感じながら待っているとドアがノックされる。ドアを開けるとアリエルがいて、なんだか久しぶりにアリエルを見たような気分になったのだがーー
「ここまで来るの大変だったんだからね」
「最初の一言がそれかよ」
「だってここ男子寮だよ?」
「レグルスのところは男子寮じゃなかったのか?」
「何サハラさん妬いてるんだぁ?」
「俺の所にはこないでレグルスとずっといればさすがに妬くさ」
アリエル……そう言って俺が手を伸ばすと拒否してくる。
「ダメだよ、タダでさえ男子寮に忍び込んでるのにそんな事出来ないよ」
「どうしたんだよアリエル、おかしくないか? アリエル、アリエルは俺はもうどうでもよくて、レグルスと一緒の方がそんなにいいのか?」
一瞬黙り込んだ後アリエルがボソッと言い返してきた。
「そんな言い方するサハラさんは嫌い……帰る」
「アリエル!」
そのまま振り返る事もなくアリエルは部屋を出て行ってしまった。焦った俺はすぐに繋がって謝るのだが……
『ゴメン、しばらく距離を置かせて』
それ以降アリエルに繋がって声をかけても返事は返ってこなかった。
それからというものの俺とアリエルは会話もほとんど挨拶程度で破局状態になっていく。
デノン達には心配され、俺は気が気ではなかった。
入学して最初の休日が来る。10日間という長い休みで、まだ幼い生徒が多いため家族と会える生徒は戻って会う時間をたっぷり与えるためだそうだ。
アリエルからはあれ以降音沙汰もなく、休日どうするかすら何も言ってこないままだ。心の中でアリエルが来てくれる事を願うが、それも虚しく休日を迎えてしまう。
学長とアラスカは調査を極秘にしていて所在不明となり、俺はフェンリルとキャビン魔道王国の町に出る。行動のしやすさから、フェンリルにはピアスに戻っていてもらおうと思ったが、知り合いにあったりして聞かれでもしたら面倒だと思い、つれて歩くことにした。
ポツンと歩く俺に恐ろしいまでの孤独感を感じる。名を伏せ各地を転々とした俺に知り合いはほとんどいない。この10日間は俺にとって初めて味わう孤独になるだろう。
そんな寂しさから気がつけば【魔法の神エラウェラリエル】の神殿に来ていた。周りに人はいなくて自分1人だけが取り残されている。そんな気分だった。
「ウェラ……俺、辛い、辛いよ。
分かっていたなら来なかった。いっそレグルスを殺せば……」
「サハラさん……」
そこに【魔法の神エラウェラリエル】が姿を見せた。
「ウェラ、俺……どうすればいいんだ?」
「アリエルさんとは従属化で結ばれてていますから、裏切ってはいないのだと思います。サハラさんを裏切れば、アリエルさんは……死んでしまいますから」
「ならどうして!?」
「おそらくアリエルさんの意思とは無関係、つまり洗脳なのだろうと【自然均衡の神スネイヴィルス】は言っています」
「ならそれが経ち切れればアリエルは戻るのか?」
「そこまでは……だけど、はっきり言えるのはレグルスは神界では危険人物に認定されています。リバーシ以外にも他に何か創り出しているようで、それが何かわかりませんがとにかく創造神様の逆鱗に触れました」
「ならサッサと始末してくれ! このままじゃ俺が先に狂いそうだ……」
「サハラさん、残念だけど神は人を殺せません」
「なら俺がやってやる!」
「それで解決するなら構わないんですが……もし洗脳が残ればアリエルさんはサハラさんを殺そうとするか、自害なども考えられます」
「クソッ! ならどうしたらいいんだ」
アリエルを救うにはレグルスの洗脳を解かないとならない。洗脳をどうやって解くかが重要になってくる。
しかしそれにしてもアリエルが変わってきたのは3日目辺りかその辺だ。洗脳とはそんなに早く掛かってしまうものなんだろうか……
「辛いかもしれませんが、今は耐えてとしか……」
「ああウェラ、だけど今回の事で俺にもよーく分かったよ。創造神が転移、転生者を嫌う理由がな!」
「サハラさん……」
俺は【魔法の神エラウェラリエル】の神殿を出て、1人、いやフェンリルと調査を開始する事にした。
俺と繋がるのを拒否しようが視界は覗ける。そのため、できるだけ監視できるように常にアリエルの視界を繋げ続ける。
“サハラ……鼻血出てるぞ……”
長時間視界を繋ぐとどうやら頭に負担がかかるのか、頭はクラつき頭痛がして鼻血も出てきているようだ。
「こんなの問題ない。
アリエルの居場所はだいたい特定できた」
場所は国一つまるまる高い城壁に囲まれたキャビン魔道王国内で、寂れた隅の方だった。
あまり綺麗と言えない家のようで、中にはレグルスの姿とサルガスにアダーラ、シャウラに加え、ウェズンの姿まであった。
皆んなごく普通にリバーシを楽しんでいるようだった。
「だいたい特定はできたんだが、場所が国一つだからな。デカすぎて見つけるのに時間がかかりそうだ。
フェンリル、お前の鼻でなんとかならないかと?」
“頑張ってみる”
「頼む、お前が頼みの綱だ」
普段のふざけた態度をする事なくフェンリルも匂いを探し始めた。
第1章メチャクチャ長くなりそうです。
今回のこの話、自分にとっては挑戦的な話ですけどどうでしょうか?
と言うかどれだけサイトを見てもサイコパスの表現があまりにぶっ飛んでいて表現が難しいです。