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アンチ・ハロウィン  作者: 日雀青柚
第六章 しらべもの
55/56

◆6

 が、しかし。


 ──俺なんであんなこと言っちゃったのかな。そもそも成果ってなに?なにを基準に考えるの?


 力をまともに使えるようになること、調査で手がかりを得ること。この二つが肝になるのだろうがどちらにも自信はない。


 ──でもやらないと俺斬られるしな……。あの人やるって言ったらやる人っぽいし、そしたら本当の命日を迎えるかもしれない。まだ死にたくないなあ。


 心を落ち着けさせるために緑豊かな田舎道を歩き、大きく息を吸って吐く。うまく調査できるかわからないがやるしかなかった。




 真鵬はエンの車に積んであった新品のスーツに着替え、刑事ファッションに身を包んだ真鵬は町唯一の電気屋でテレビに映るニュースを見ていた。

 ニュースはローカルニュースを取り上げ、問題の国道が昨晩の倒木の影響により一部通行止めになっていることを報じた。

 案外大事になってしまっていることに焦りを感じるが、いつだって焦りは禁物だ。


 真鵬は福連寺へ向かう道中でヨウに言われたことを反芻していた。


 確かに今のままでは使い物にならない。お荷物であることは間違いないし、役立たずなのも正論である。加えて体の中にヘルハウンドがいる状態では悪霊と一蹴されても仕方がない。

 言っていることはごもっともだったし、いかに期待されていないかが伝わってくる言い草に自分でも情けないぐらいに凹んでしまった。しかも売り言葉に買い言葉である。我ながら幼稚で呆れてしまう。


 そんな気が重い中福連寺を訪れると偶然にも培覧が境内で掃除をしていた。


「こんにちは」

「大倉さん!どうも、お疲れ様です」


 ぺこりとお辞儀をした培覧に合わせて真鵬も頭を下げる。


「阪下さんは一緒じゃないんですか?」

「先輩は別件で動けなくて……今日は僕一人です」

「そうですか」


 変わらずにこやかな培覧は何の疑いもなく真鵬の言ったことを信じているようだった。騙していることに少し罪悪感を覚えるが、なるべく考えないようにすることにした。今日は南瓜記念館を見に来たことを伝えると、記念館は無料開放しているから自由にどうぞ、と案内された。


「あ、その前にかぼちゃ畑を見せてもらってもいいですか?」


 真鵬の唐突な要望に培覧は一瞬動きを止めたが、「どうぞ」とにこやかな表情に戻った。


 かぼちゃ畑に足を踏み入れるとそこは思っていたよりも何倍も広い敷地面積を持つ畑だった。

 見渡す限りのかぼちゃ、かぼちゃ、かぼちゃ。当たり前といえば当たり前なのだが、中々に壮大な光景だった。


 何の気なしに近くに転がっているかぼちゃを触ってみる。昨日食べた煮物同様、なんとも言えない違和感のような、気持ち悪い感覚が手を包んだ。


 やはり邪気に侵されていると再確認した真鵬は「あの」とおずおずと培覧に声をかけた。


「いかがされました?」

「井戸の中を見てもいいですか」

「……それはどうしてです?」


 珍しく培覧が拒むような素振りを見せる。これは怪しいと踏んだ真鵬は「いえ」と平静を装った。


「中はどうなっているのかなー、と。もし本当に危険なら地域課に共有して本格的に封鎖しようかと」


 でまかせで口から出てきた割には意外と説得力がある理由だと真鵬は思った。

 培覧もそれ以上はなにも言えないようで、「どうぞ」とブルーシートをめくった。


 頭をひょこと出して覗き込むと確かに枯れ井戸だった。しかし真鵬が予想していたような、いわゆる底が見えない、幽霊が出てきそうな井戸ではなかった。井戸の半分ほどは土で覆われており、万が一落ちても這い上がれそうである。

 それでもやはり横幅がかなりある井戸であるに変わりはない。危険といえば危険かもしれないが、それほどでもないようだ。


「ありがとうございました。本当に立派な井戸ですね」


 そう言って頭を上げようとした瞬間、井戸の中にかぼちゃのつるが張り付いているのが目に入った。

 

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